みどりいろの生活
なかがわひろか

みどりいろの家に住んだ
みどりいろのぼくたちは
みどりいろの生活をした

みどりいろのご飯を食べ
みどりいろのベッドで
みどりいろの夢を見た

ある朝起きてみると
ぼくらのみどりいろの家は
みどりいろの煙を上げて
ボウボウと燃えていた

ぼくたちは森の中に逃げ込んだけど
そこは思ったよりも
ぼくらの生活には合わなかった

みどりいろの生活を続けていくことに
ぼくらは何の疑問も持っていなかったから
おあつらえのみどりいろのお家がないことに
多少驚きもしたけれど

とても大きな妥協を繰り返し
ぼくらはその森で
ほとんどの人生を過ごした

みどりいろのご飯は
少し錆付いていたけれど
それでも無いよりは
マシだった

みどりいろのベッドで見る
みどりいろの夢は
野放しのバクの格好の餌となって
半分以上が食べられたけど

それでもそれなりに
暮らしていくことができた

ある日
みどりいろの母さんは
少し色の濃いみどりいろの病気にかかって
死んだ
ぼくらは少し悲しかったけれど
みどりいろのお墓を買って
みどりいろの母さんの骨を
そこに納めた

ちょうどいいみどりいろがあったから
それだけでもよかったと
ぼくらは胸をなでおろした

ぼくらはあと何年か残された
みどりいろの余生を過ごす
大分ぼくらのみどりいろも
素直なみどりいろではなくなったけど

それなりに暮らしていけるんだ
それくらいは我慢しよう

みどりいろの世界は
多少難しい色になったけれど

ぼくらはあいかわらず
みどりいろの生活を繰り返していると

気づかぬ振りを
続ければいい

(「みどりいろの生活」)


自由詩 みどりいろの生活 Copyright なかがわひろか 2007-01-07 00:20:06
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