氷割り/小川 葉
 
以下の方がこの文書を「良い」と認めました。
- 元親 ミッド 
- 夏美かをる 
- イナエ 
- 殿上 童 
- kauzak 
終わりの事実を突き付けられた瞬間、私はただ圧倒され、
今、思い返しても現実感がありません。
- Lucy 
確かに・・氷割ってそういう感じがありますね。素敵な詩をありがとうございます。
 
作者より:
春先になると、地面にへばりついた根雪が、日中溶けて、夜間冷やされて、分厚い一枚の氷になる。この頃は、その氷をつるはしで割る光景が、雪国の春によく見受けられる。
朝から晩まで、夜になっても、その作業は続く。春への恋しさに、いても立ってもいられないのだ。老夫婦の家では、旦那が朝からつるはしを振りまくり、玄関のところで奥さんが、その様子を見守っている。
たぶん、放っておいても、氷は消えるだろう。しかしいても立ってもいられないのだ。
カツン、カツン、と、硬い氷を砕く音を、朝から聞いているうちに、それは骨を砕く音のようにも聞こえてきて、夜にその音がやんだ頃、外に出てみた。
細かく、砕かれた氷が、そこらじゅうに散らばっている。
まるで何かの生き物の骨のような、その残骸を見ていると、まるで冬の納骨のように感じられた。
この骨が消える頃、いよいよ春である。冬の死とは、春の訪れを意味する。それが毎年、これまで何度も幾度となく、繰り返されてきたのである。

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