記憶/たもつ乾 加津也さんのコメント
蝉の音がしました
産まれた日もあやふやなままに
記憶の誕生する瞬間へ行きたい
蝉をも、音とし
声も音も同義の場所を想定させます
影になるとすべてのものは
優しい形をしていました
視覚もおぼろげな状態のなかでは
優しい(形)という関係性は
作者自身に内在する芯のようなものとも思えます
「二色の列車」という表記は原体験でしょうか
特に根拠は示されておらす謎のまま置かれています
二は相対、自分と他者、あちらとこちら、色もそれでしかないと
どこまでいっても
私の記憶の中でしかないのに
収斂は分かりやすく、余韻を強調しています
このタイプは余韻にしか活路はないのか、と考えさせられます
いろいろ読めるのが良い作品ですね