すべてのおすすめ
鍋の中におとこという性を入れて
煮込んでみることにした
それは それは それは
蛇口を巡る 出口を探る
蒸発して換気扇に絡めとられていけばいい
冷たい雨が降りしきって
濡れた体から崩れてく
昔聞いた夢物語は
偽りだらけの仮想現実の話だった
大人たちは皆
子供が怖がらないように
恐れないように
逃げないよ ....
降りてくる。
それは不意に、
エスカレーターで、それともエレベーターで、
あるいは手すりのない広い階段を。
鏡に映るわたしの姿が歪む。
墜落する軽気球。
わたしは呼ばれてい ....
あの人の好きな牛乳羹を持っていくことにしました
手作りを重宝するあの人のことですから
わたしの選択肢としては何よりも手作りが一番だったのですが
朝から冷蔵庫の調子が悪いようで程よく牛乳が手に入り ....
スチュワーデスさん、とスチュワーデスに声をかけると
私にはケイコという名前があるんです、とそっぽを向かれる
今度こそ間違いの無いように、ケイコさん、と呼ぶのだが
ケイコは押し黙ってしまう ....
4歳のこどもを
正面から抱っこすると
つい4年ほど前には
お腹の中にいたことなど
信じられないほど大きい
わたしたちひとつだったはずなのに
分裂したね
さびしいけどもう元には戻れない ....
ずっとここに住んでいる
ここがどこなのか
わたしにはよくわからないけれど
アル日
ここに
白い服を着た
顔のない誰かが
わたしを連れてきてくれた
わたしの手を引いて
それからずっ ....
月下のお好み焼き屋は油凪
鉄板の上で焼かれているのは
ナポリ天と悲恋だ
梅ソーダサワーの上昇する泡を
見つめながら・・・
思えば酒豪になるべく
和洋折衷受け入れること蝶のごとし
....
18禁と書いて
18金って書くと卑猥で高飛車だ
しかし青い春とは金なのだ
俺の18禁もやはり金だった
勤労ゆえに
16歳の時に友達とビニ本を買いに行った
年齢を偽り店からつまみ出された ....
──ちょうど躓いた小石の先に連なった足が
氷柱を踏んで動かされていくようだった──
映像はいつもコマ割の上で音をあてていく
それは今日の病室でも変わらないまま
カーテンの外 ....
騒ぎ立てる目覚まし時計を手探りでなだめた。
カーテンを開けようとしたが開かない。
しょうがないから灯りをつけた。
俺の部屋はジャングルと化していた。
実をつけたヘクソカズラがカーテン全体を ....
最初から
おじいさんや
おばあさんが
いたわけではないのです
ただ風ばかりが吹く
何もない夕暮れのようなところから
むかし、むかし
と物語はいつも始まるのでした
やがてお話が終わる ....
ビー玉と 古い着物 古時計
もう誰も住んでいない 壊れかけた建物
するめと 日本酒 おにぎり ごはん
夕焼け色に染まる時間
古本屋 たくさんの詩集
化石と 色とりどりの ....
ワイシャツに袖を通し
カーテンを開ける
陽射しがこれみよがしに降り注ぐ
俺は塾講師だ
自転車に乗り煙草を吹かし口笛を吹け
汗が滲む
郊外型スーパーの前 ....
職場で黙々と仕事に励む
ふと気が付くと誰もいない
みんなどこへ行ったんだろう
サイレンが鳴っている
煙に包まれている
僕は取り残されたみたいだ
....
ひからびた夢が
ひんやりと
かもいのあたりで
くびを
つっている
これは、これで
けっこういいあじ
するんだよね
魚たちが
にぎやかに
しゃべりながら
....
ここに並べた文字を指し
蟻だと言われれば成る程
そうなのだ
ともすると葬列のようではないか
完結に向かう寡黙な様が
高慢娘のおまえが
夏の光にパラソルさして
これはまたなんと恥ずかしそうな!
小指の先まで恥ずかしそうな!
深々と 静寂な
海にたゆとっていたいんだ
言葉の羅列の大通り
耳を塞ぎたいときもある
その合間にも
世界は回転している
触れるのは少し痛そうだから
ベンチに深く沈みこんで
とり ....
軒下で鳴ってる
縁側ではいつも同じ場所で躓いてしまう
窓は池
今日も小さな沈黙を保ち続ける
外の通りを
笑わない男の人が歩いていく
僕らの小学校
黒板の右、日付の下では
誰かが ....
いつもいつも瞳で泣かずに
手首で泣いている夜があった
手首がチクチク痛み出す
だからあたしは滴るそれを舐めてみた
鉄の味 錆びたスプーンのような味
それでも止まらず
あたしは手首で ....
草原の秘密基地
今はもう影だけで
虫取り網を振り下ろす
残像が目に焼きついた
夕暮れの蝉時雨を
いつまでもそこで聞いていたっけ
通りすがりの車窓から指差した
この草原は僕なん ....
降りしきる雨の中
傘もささずに俺たちは歩いた
死ぬほど歩き続けた
けれどそれで
俺たちが死ぬことはなかった
俺たち いい奴だった
俺たち 輝いていた
俺たちは生の肉だった
俺た ....
ちががね、
(血がね、といいたいのだ)
ちががね、びよきだからね
あかちゃんのときからね
そうなの、ずっと
少女は枕に片頬つけて話す
ぼくは少女の枕に腰掛けている
ち ....
水面の緩やかな起伏をもたらすものは
波の行き来
風の息
プールならば子供たち
入射光による二次元投影
輪郭だけのモザイク
水底に
水底にゆらゆら
瞬間ごとには
結晶 ....
あいまい【曖昧】(形動)
ディティールはベールに隠す、たしなみ
真実は自分でもわかっていないことが美徳
いま【今】(名)
常に最優先させる感情の所在
....
いつまでも
と誓いをたてるにはあまりに幼すぎたのだ
姉は朝食の後片付けをしながら
思い出し笑いをする
覚えてもいない妹は
今年初めて夏服に袖をとおした
吉岡君
電車の中で思わず声をかけそうになった
よく考えてみれば
こんな時間、こんな場所に
吉岡君がいるはずもないというのに
あの日と同じ顔
学生服のままで
そんな僕はまだ
....
レノン…
海燕の好む空を
そして意気を知っていたね
見事な偶然だったよ
真昼の影にモノクロの
風 枯葉 無邪気の香りを漂わせ始めた時
俺はモーリスの弦を替えていた
5弦目とラジオが ....
友人の部屋の隅っこに
ネジが一本転がっているので。
「このネジ何?」
「どうやら俺のものらしい」
拾い上げて見ると確かに友人の名前が書いてある
「そりゃそうだろう、お前の部屋に落ちて ....
1 2