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ゆらりゆれゆく水面に
魚のかげはうつらない
深く沈んだ自転車の
かすかなひびきが ぽつり
雨をよび
あらしを誘う
梅雨の日々は湿っていて
すべてをひらたくさせる
私も 床も 土も
....
ねむるように
愛しはじめたら
指先から
すなが こぼれおちた
これは
何の記憶?
貝の
うねうねとうごく足から
岩に
しがみついたフジツボの悩み
夢はくらくとおく
わたし ....
日が落ちて 暗い川に
すう とよぎる物がある
魚のひれに
背の高い草
それから
釣りのおじいさん
長い棒で
水をかき
橋をくぐる
なにがみえるのか
なにがきこえるのか
波紋と ....
しらない をおいかけたら
からかうように空をすべった
梅雨のあいまの明るい風に
しらない しらないと
はしって逃げた
いつだって
しらない は遠く
つかめそうな距離でも
生卵のよう ....
霧雨に包まれて
ゆっくりと指を伸ばせば
あたたかく やわらかいものに触れた
眠らない夜に
きみを思う
海まで見渡せない橋の上
雲は川に近づき
思いを告げた
波紋に答えを聞きながら
....
水平線をながめて
二リットルの水を浴びる
空と海の間の
相容れない一本の線は
わたしたちに にている
つまさきを砂に沈め
光を背にあびる
水はしみこみ
かわき
そして きえる
....
チョコレート色の夜が
しずくに溶けて 流れ出す
とろりとろりと
自分ばかり見て
しずかに ひそかに
排水溝へ落ちてゆく
私の足元を
暗い色のしずくが
うずを巻いて とりかこむ
逃 ....
あいしてる なんて
恥ずかしいことをつぶやいたのは
目をとじる一秒前
とけこむように夜になれば
のどの奥から舌をつたって
やわらかなわたしが外へ流れる
うごかない小指だけを
体に残し ....