八月、蝉が鳴く。
斜面の高いところで、
楠がこんもりと枝を張って
身をゆする。
むいたばかりの
ゆで卵みたいな青空の表面へ、
陽射しをはじきかえしている。
降りそそぐ、
眩しい小さなつ ....
バス停で君を待ってる手の平に人とゆう字を千回書いて
鉄棒に逆上がりして校庭を空へと落とすサッカー部員
難解な数の定理を飛び越えてブッダのように眠ってるきみ
教科書の隅に落 ....
アナタとの関係は
着かず離れず、
そんな感じが一番落ち着く
でも、
たまに近づきすぎて
たまに遠すぎて
私もアナタも傷つくんだ、
目指すは、月と太陽
惑星のように一定の場所、
....
九歳の子供が背広を着て介護ホームで
おじいさんしてる
そして
九十一歳の白装束を着た人が
火葬場の火の中で
おっぱいを吸っている
たった一言交わして
すれ違うだけの人にも
私を憶えていてほしい
それは贅沢なことだろうか
食卓や墓地や廃屋にさえ
いつも人の面影があった
私の生まれは人だから
....
どううぶつえんの檻の前で親友は盤を取り出し
飛車角落ちで良い、と言う
親友の温かい手から飛車と角を受け取り
どううぶつの檻に投げる
どううぶつは隅でうずくまったまま見向きもしない
飛 ....
さみしいなと思った途端に寂しくなくなった
それというのは自分でもわけがわからなくて
たとえていうなら水族館に行ったことが無いとか
煙草の火をつける方じゃない方に火をつけたとか
手帳に挟むペンが ....
先生 この前のテストは100点だったけどBでいいです先生私先生が好きです。
ラメ入りの少年 惚れさせてしまうのは男どもばかり 生理も来ない
触れてとは言わない言えないでも触れな ....
海を見ようと言って6階の病室から私を連れ出したあなたは病院の地下の駐車場で一度目のセックスをした
海老名サービスエリアで歩けない私をおぶってトイレに連れてゆき二度目のセックスをした
御殿場のラブホ ....
チェンバロの音を想像して
ヴァイオリンを持つと
ソプラノサックスの音が出る
そう思ったのはついさっき
家庭教師先で中学2年生の女の子に
数学を教えているときでした
誰から聞いたんだ ....
サンダルがかたっぽ脱げた
そしたら
セミの声がきこえた
花火の写真
ヒトダマみたいで気味悪くて
破って捨てた
嫌いなはずのビールだけど
ひとくちめだけ
いいなと思った
海 ....
「世界と自分の間の信頼関係を確認したい」(そのためには自分の肉体が損なわれても良い)といった覚悟で公演に臨んだ表現者の姿勢が、
だとぉ!
ちきしょぉ、「確認したい」だぁ?
俺が、生活のな ....
からだが どうん、まばたきしたときの
あのせかいが まっぷたつ から、ゆうぐれて
頭から 地球の中心に ぐん、と押されると
わたし、いつも きまって あやまってしまう
ごめんなさい、ごめんなさ ....
おとうとの写真
って
いつも
いまいくつだろ、とおもう
ろうそくに
火をつけて
手をあわせて
いまいくつなの、と聞くと
それよりも
ねえちゃん、はだかだよと言う
....
兄は云う
この井戸を掘り返してなるものか、
と。
野井戸はけして深くなく、
雨水が満ちているのだが。
野井戸はすでに開かれて、
....
短い話の夢でした
ひらがなばかりの
セリフであって
半袖ばかりの
人と逢って
ところどころは
知る場所なのに
どこか遠くへ
運ばれて
目覚めたところの
この家の ....
今思えば
すべてのことは
半径二キロの輪の中で
起こっていた
その中は
やさしい
繭のなかのように
柔らかくて
はじめて刺繍糸を買いに行った日のこと
鮮やかに覚えてる
刺繍で風 ....
時計が遅れたり
進んだりするのを気にする人は
何よりも時間の大切さを
知っている人です
けれど
時計には時計のペースがあることを
忘れないでほしい
など
ホームの水飲み場で
あな ....
溢れる感情
とまらない創作意欲
歩く人生
急がずマイペース
自分の力を過信せずできるところから
可能なことからこなすことが大事
だから焦るなスベテのものよ
急ぎすぎて過ちを犯すな
....
その女はいつの間にか現れて、いつも私の前を足早に歩いてゆく。私はその速度に魅せられる。彼女を追わずにはいられないのだ。
しかし追跡は十五分も続けばましなほうだ。信号機や人混みが邪魔をする。女の汗 ....
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