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人には全裸になっても
見えない部分があります
隠しているわけではありません

母は江戸と背中を見て死にたい
と言っていました
  その頃 
  江戸はもうありませんでしたけれど
  背 ....
小野道風は 
柳に何度も飛びつく蛙を見て
一念発起したという
  そのとき 蛙が 
  あの虫はまだ不味い
  と負け惜しみ言って諦めたら
道風はただの人になって
歴史に埋もれていっただ ....
ここから先は立ち入り禁止
ガードもなくエリアラインがなくても
分かっているさ そんなことは

向こうのエリアの熟れたリンゴが
極彩色の芳香を漂わせてくる
閉ざされた花園には
咲き乱れる虹 ....
カモの群がる池の畔
桜花映える日差しに包まれ
川鵜と小白鷺が向き合っている

川鵜
  すっかり春だねえ
  これから北へ帰るのか

小白鷺
  いや まだ田に水が入っていないので
 ....
冬のベランダに
月の光が降り積む夜は
白く凍えて眺める空に
故郷の庭を思い出す

月の白い光にぬれて
赤いつばきも 寒菊も
色吸い取られ白く震えていた

就寝前に外の便所
白い庭に ....
七月のある日 兄は ぼくを呼んだ
風通しの良い部屋に一人伏せていた兄は
「今度は帰れないかも知れない」という
「弱気なことを…」
ぼくはそう言ったきり次の言葉が出ない

幼少時父も母も病で ....
若者が過去を振り返るのは
夢を実現するため
老人が過去を振り返るのは
夢を楽しむため
でも 
若かった過去へは行けません

***

別れるまで一度も名を呼ばれなかったからっ ....
平和3

手も足も頭も
引きちぎられた人々を
クロゼットや押し入れの壁に
塗り込めてつくられた平和
もはや 人間のうめきは
くぐもって外に漏れ出ない

人は闘争に美を見つける
   ....
見たか?

見た見た!

聞いたか?

聞いた聞いた!

それで どう思う?

ま ここは
見なっかったこと 
聞かなかったことにして…
灯火管制の都会の底では
光を漁って深海魚が徘徊している

魚卵たちの夢は皆カーキ色をおびて
時折光る虹色の粒は
懐疑が延ばす触手に喰われ
光彩を失う
幼魚は皆同じ方向を見てかたまり
群 ....
川を越え海を越えた向こう岸へなど
渡ることは考えもしないけれど
対岸に上がった火の手を見付けて
騒いでいる  
  ディスプレイの中で
  銃を構えてうろつく男を眺め
  騒いでいる
 ....
きみが奥さんを残して
年の瀬も押し迫った雪の日に
ひとり先に逝ってしまったと
知ったのは娘さんからのメール

一昨年の夏 
共通の友の斎場で会ったときには
「お互いいい年だから葬儀には来 ....
子どもの頃
お天道様は何時もぼくの行為を
見張っていた

そして
お天道様は意地悪だった
自転車の二人乗りをしていると
石ころを置いて ハンドルを揺らし
転倒させるのだ
倒れながらち ....
前を歩いていたあなたは
病棟をつなぐ廊下の途中で 
ちょっと振り返って
「じゃあね」と
奥の扉に入っていったきり…

少し左肩を上げ 
口の左端を上げてほほえむパジャマ姿の
あなた ....
    ゴマフアザラシなど
    北の海ではひょこひょこと
    モグラ叩きのように頭を出し
    珍しくもないけれど…

その目は カメラを見つめていた
水面から顔を出し 身動きせ ....
友といさかい冷えた心で乗った電車
開いたドアからはいりこんだ冬の風が
通り抜けていく

二・三歳の男の子を連れた若い女が
隣にすわり 子を膝に乗せる

子の足がずれて
座席のあかいビロ ....
陽の当たらない玄関の
下駄箱の上に置かれたガラスの水槽
その中に金魚が一匹 

夏の宵
太鼓の音や提灯に囲まれた広場の
入り口で掬い取られて 
運ばれてきた

  たくさんの兄弟と泳 ....
日本には
人を斬るに便利な言葉がある

新しいゲームが欲しい子は
「みんながやっている」と刃をちらつかせる
優しい親は ゲームのできない我が子が
「みんなに」虐められそうな気がして
つい ....
箱の中に入っている人のこと
何も知らないのだがな 
どんな仕事していた人か 
どんな声で話す人か
葬式だから来いと言われてやってきたけれど
母の従兄弟と言われても 
母はとっくに死んで ....
人生に設定した目的に向け 
一直線に生きていける人はあるまい
散歩先に目的地を設定しても
一直線に歩いて行くことはない

前方の橋
大型犬を連れた女性がこちらに来る
わたしは 当然の ....
ぼくの中に少年のぼくがいて
ぼくの中をぼくが歩いている
ぼくの中を少女が歩いていて
ぼくの中を
何人ものぼくが歩いている

ぼくの中をあなたが歩いている
あなたは背を向け
ぼくの中でち ....
山を背にした集落の
家家の屋根から突き出た鐘楼ひとつ
奥の旅を終えた芭蕉も伊勢に下る船上で
この鐘の音を聞いただろうか

港のあったこの集落に都会の風が吹き込んで
集落を縫う曲がり ....
じっと見つめる白いディスプレイ
画面の深淵に広がる混沌
ぼんやりとした影がふるえているのだが
コーヒーを一口 指先で机を叩き
たばこを一本 目を閉じ頭に爪を立て  
五分 十分・・・
一瞬 ....
都会に降る雨は
ビルをぬらし 
車の音をくぐもらせる

ビルに囲まれた後楽園を洗う
こぬか雨の中
大島紬に蛇の目の女がひとり
水田のほとりにたたずんで

周りのビルは雨に流れ
 ....
大人になれば女だって立ちションが普通
どの家にも出入り口脇には
風呂の水を落とす瓶があって
三方板囲にした小便用便所と兼用
此処で男も女も用を足した

  厠小屋もあるにはあったが
   ....
角膜を塗らす涙が涸れて
風景が乾燥する

人々は宙を歩いて
ぼくの中を通り過ぎ

アパート群を包む
光の霧はさらさらうごめき

新緑の山に光の粒子が
飛び跳ね渦巻き

光の雨が ....
船は水平線を追いかける

疲れた今日が沈み
絶望が沈み
青春が沈んでいく水平線

追いかける船も
やがては
水平線に沈んでいく
 
目には見えるけれども
決して捉えることは出来な ....
ぼーとテレビを見ていて
半開きの唇から
涎が一筋
急いで手で拭き…
認めない
涎を垂らしたことが老いのせいだなど
ただ 口を閉じていなかっただけ
幼児は涎を流し
若者だって 口角泡を飛 ....
はて?

住宅地の細い道
前から来た黒いセダンの
ドライバーが微笑みながら軽い会釈
反射的に会釈を返したが 
ちらっと見えた横顔には見覚えがない
目で追った車は角を曲がって 
その先は ....
今日は町内会の清掃活動日
今日は春のウオーキング大会最終日

近所のかみさんたちが
雑草刈りしている

 あいさつはしないほがいいな
  気付かれないように行った方がいいな

か ....
芦沢 恵さんのイナエさんおすすめリスト(75)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
裸になっても- イナエ自由詩8*15-2-14
なんだか…- イナエ自由詩6*15-2-12
ささやかな冒険心- イナエ自由詩8*15-2-10
春日一刻- イナエ自由詩7*15-2-8
月の光が降り積む夜は- イナエ自由詩11*15-2-6
寒い夏- イナエ自由詩22*15-2-2
歳を取ったと気付かないあなたへ- イナエ自由詩9*15-1-31
平和_その三- イナエ自由詩12*15-1-28
日光三猿- イナエ自由詩10*15-1-21
暗い虹- イナエ自由詩13*15-1-17
対岸にいて- イナエ自由詩10*15-1-9
慌て者- イナエ自由詩10*15-1-1
神の誕生1お天道様- イナエ自由詩5*15-1-1
あなたは…- イナエ自由詩12*14-12-25
アザラシ君のオモテナシ_ー旭山動物園ー- イナエ自由詩6*14-12-22
母の胸- イナエ自由詩13*14-12-20
冬の金魚- イナエ自由詩16*14-12-15
言葉の切れ味1「みんなが」- イナエ自由詩8*14-12-13
棚から…_- イナエ自由詩8*14-12-3
橋・渡らない- イナエ自由詩10*14-12-2
心象__- イナエ自由詩18*14-11-26
時の鐘スケッチ- イナエ自由詩14*14-11-13
神様とぼく- イナエ自由詩16*14-10-23
雨の小石川後楽園- イナエ自由詩11*14-10-10
思春期- イナエ自由詩11*14-9-18
ドライアイ- イナエ自由詩12*14-9-15
水平線- イナエ自由詩20*14-9-15
認めない- イナエ自由詩20*14-9-9
はて?- イナエ自由詩9*14-9-6
何となく後ろめたい時- イナエ自由詩15*14-9-3

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