すべてのおすすめ
絶対的な漆黒に支配されながら
もう消えてしまいたい、と
泣き続けた夜
だけどそんな闇でさえ
萎え始める瞬間がある
私の意志とは関係なく
朝は必ずやって来るのだから―
地球が営みを辞めな ....
父の母が亡くなり
その後しばらくして
父の兄が亡くなった時
父がぽつりと言った
「今度は俺の番だな」
その順番の通り
父は亡くなった
四十九日が過ぎた時
母がぽつりと言った
....
娘の担任の先生から突然メールが届く
件名は娘の名前
かすかな心臓の高鳴りを覚えながら
本文を開ける
文字が目に飛び込んでくる
“She had an accident!”
アクシデント!? ....
?公園に女の子が八人いました。
さらに後から男の子が何人か来ました。
全部で子供は十五人になりました。
公園に男の子は何人いますか??
レスリーは両手の指を曲げたり伸ばしたりしている
....
震災関連番組を見ている
私の背中に
六歳の娘が不意に覆い被さってくる
今朝思い切り叱られて
「ママなんか大嫌い」と
涙を溜めた目で私を睨みつけていた娘が
「ママ、大好き」と言いながら
....
亀とは
亀のようにゆっくりなペースで成長中の私の長女
この間9歳になった
その亀
学校以外の場所では
とっても朗らかでおしゃべりなのに
小学校入学以来
教室で全く口を利けない
少人 ....
二月生まれの四人の合同誕生会をした
九歳と三十二歳と三十六と九十七歳
九歳は私の娘
九十七歳は私がアメリカに来た当初とてもお世話になった人
三十二歳は九十七歳を通じて知り合った子
三 ....
自分や自分の愛する人が
明日隕石に当たって命を落とすとは
恐らく誰も思わないだろう
だから
いつも通り私達は
目の前の人にお休みを言って
今日という日を
当たり前のように見送る
あ ....
その日
私は独り鉄棒に腰掛けて
夕日を眺めていたいだけだった
鍵を掛けて体の奥に仕舞っていたはずの
シキュウという箱の中に
エイリアンの胎児が
突如侵入してきたみたいで
ただ不快で気 ....
冷たい布団に潜り込んで
悴んだ体を丸め
膝を抱えて
ゆっくり目を閉じる
呼吸を整え心臓の鼓動に重ねると
間もなく私の意識は解き放たれ
私を形作っている六十兆の細胞の波間を
ゆらゆらと ....
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセ ....
「ママ!ママぁ!」
真夜中私を激しく呼ぶ声の元に行き
いつも通り右手を差し出すと
大事なお人形を愛でるかのように
それを自分の胸の前でぎゅっと抱き締め
再びすやすやと寝息をたて始める
....
大晦日 日系スーパーまで高速を飛ばして 注文していたお節を2組取りに行く
太巻きとシアトル巻き、上の娘の好物のイクラの瓶詰と、
私しか食べない刺身も一緒に買う
「Japanese noodles ....
その金曜日の午後
いつものように黄色いスクールバスから降りてきた
娘達の笑顔を確認してから
思い切り抱き締める
「ねえ、ねえ、今日学校でこれを描いたんだよ」
私の腕を振り切る勢いで バックパ ....
「吐きたかったら 吐いちゃった方がいいよ。
その方が気分が良くなるからね。
吐くと 体の中の悪いものが一緒に出るんだよ。
だから吐いた方がいいんだよ。
そう、上手に吐けたね!
偉い、偉い ....
己が一番美しい時に
化粧を覚えた少女は
素の顔を誰にも見せぬまま
女となり
老女となり
やがて
横たわる冷たい屍となる
その顔に
再び恭しく施される
化の粧
唇に置かれた紅 ....
私は亀ちゃんを生んだ
亀ちゃんとは本人の前では決して使わないあだ名
亀ちゃんは本当にゆっくり成長していく
初めて歯が生えたのは一歳三カ月
初めて歩いたのは一歳八カ月
二歳になって ....
毎週火曜日
下の娘のクラスにボランティアとして入っている
私が話すつたない英語でも
一生懸命に聞いてくれる
小学一年生の瞳には
一点の曇りも宿っていない
恐らくその瞳はまだ
本当 ....
私を傷つけたあの人は
結局私の人生にとって
大切な人じゃなかった
3年かかって
やっとそのことに気づいた
仮に今 あなたが
誰かに傷つけられたと思っているとしたら
あなたにはもっ ....
君とは砂場で出会った
人見知りの激しかった僕が どんなきっかけで
初対面の君と口を利くようになったのかは
よく覚えていないけれど
とにかく君と 日が暮れるまでそこで遊んだ
別れる時に ....
真夜中
娘の背中をさすりながら
ただ一心に祈る
他に何も要らない
何も要らないから
ただこの子の咳を治して下さい
今この瞬間にも
地球上のどこかで
同じように子を抱きながら
....
二十五年前のある日
おとうとの幼稚園の授業参観に行った母が
苦笑いしながら帰ってきたことがあった
なんでも恥をかかされたらしい
その日のテーマは
「お友達に手紙を書く」というものだったのだけ ....
深い傷 浅い傷
大きい傷 小さい傷
ずきずき痛む傷、甘酸っぱい傷・・・・
どれもこれも、私の体に残っているものならば
全て抱いて生きていこう
ひとつひとつが 生きてきた証だから
失いた ....