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穏やかな
朝の何処かで
キジバトが鳴いているけれど
耳で
探しかけてすぐやめる
どうでもいいじゃないか
そんなこと
美味しい
朝の何かが
芳ばしい匂いをたてているけれど
....
プチトマトの実がついたと
子供のようにはしゃぐ君の瞳は
まだ昨夜の喧嘩のことを
忘れていないよと言っている
後ろからのぞき込む
バツの悪い僕の視線は
幼いトマトと君の横顔の間を
....
眉間の裏側に
落ちてきた
朝焼けの一滴
生温かい暗闇に
暖色の地平線が
引かれていく
意識の東から
明かされる
言葉の街路
慌ててスケッチ
しようとするが
間に合 ....
分かり切って
いることだけど
悲しくて
泣くのではない
涙が出るから
悲しいのだ
だけど
本当に
悲しい時
涙が出ないのは
心が空っぽに
なっちゃった
....
切れ切れの
ビブラートが
君の内側に吹く
風の形を囁いた
痛みのような
ブレスが
君の内側を巡る
水の温度を呟いた
耳ではなく
皮膚の下の
毛細血管の先端で
僕はそれ ....
空のどこかが
解けて
みずが零れる
雨
モノとコトの上に
容赦なく
みずが注がれる
雨
雨
ぬるんだ雨は
葉っぱを揺り起こし
やわらかな雨は
根っこにじ ....
相変わらず僕は
たいていの場所へ
行けてしまう
羽ばたかない翼にしがみついて
南の島に不時着することだって
くねらない蛇に飲み込まれたまま
海峡の下に潜り込むことだって
軽過 ....
僕達の薄ら甘い関係は
砂糖というよりぶどう糖だった
君の囀りにも似た言葉は
体液のように僕の身体を巡り
君の微笑みの陽だまりは
L-アルギニンのように
僕の生活に治癒力と免疫力 ....
はしる かぜ
まどう くも
かわく かなしみ
うたう さんだる
なでる ひかり
わらう このは
すける わだか ....
風の変り身に
逆立つ産毛はあるが
人の変り身を
捉える触角はない
好奇心の玩具は
すぐに揮発させてしまうくせに
邪推の深海魚は
いつまでも対流させている
賞賛の燃料があれば ....
意識の地中に
閉じ込められた想いは
言葉になることも許されず
凍てついた時間の底で
膝を抱え込んでいた
想い出したように吹く
溜息によく似た風を頼りに
出口を探したこともあったが ....
1.湖畔に佇む1本の孤独
2.湖面を滑る1羽の憂鬱
3.季節は旋回しながら降
りてきて
4.あらゆるものの輪郭が
緩やかに尖っていく頃
5.1本の ....
事勿れに
もたれていれば
時は水よりも速く
流れていってしまう
大人の一年は
ジェットコースターの3回転
得意なのは
相槌のルーチン
言葉は水より滑らかに
受け流すに限る ....
風に研がれた街の
痛い輪郭の端を
ポケットに手をつっこみながら
そそくさと歩く
研ぎ澄まされない
目と指先と頭は
言葉を紡ぐこともできずに
ただアイツを
待ち焦がれている
....
あなたは
とても綺麗に微笑みながら
水のような滑らかさで話をつなぐ
わたしは
そんなあなたに見惚れながら
あなたの綻びを探してしまう
あなたは
笑っていないほうの目でわたしの ....
湯に首までつかると
毛穴という毛穴から吐息が漏れる
立ち昇る湯気が
表情筋をひとつずつ解体していく
たぷたぷ
あごの先端から始まった
温かいさざなみが
湯船のふちを円やかに乗 ....
僕の家の水道水には
カルキとカルマが含まれている
カルキは浄水器で
取り除けるかもしれないけれど
カルマはおいそれと
消えて無くなってはくれない
僕は毎朝
カルマで顔を洗 ....
どうしても言い出せずに
降り積もってしまった言葉の灰を
掻き出す術もないまま
人気も疎らな遊歩道をそぞろ歩く
いつまでも辿り着けずに
色を失くした街を漂う吐息の白を
飲み込む術もな ....
脳に転移していますね
ある日
余韻の残らない口調で担当医は言った
丁寧に覚悟を積み上げてきたはずなのに
質問をする私の声は上ずっていた
ひとつひとつ言葉を置くように説明する
....
晴れすぎた空を仰いで
晴れなければいけない
と思った
わずかな湿り気も
吸い寄せてしまう
とてもシリカゲルな僕は
そう思った
咲きすぎた花を眺めて
咲かなければいけない
....