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おまえが将来
大人になれば
ときには重い困難を抱えて
たぐる糸もなく
色を失った世界に
途方にくれることもあるだろう
そんなとき
思いがけず差し伸べられる
手のひら
それが、ありがと ....
奥の虫歯が痛かったので
バスに乗った
バスなんてないのに
歯なんてとっくの昔に
なくしてしまったのに
強風波浪注意報の町で
希望、という名の音楽を買った
嬉しいことが
少しだ ....
{引用=
洗濯を終えたあとの洗濯槽に、頭をつっこんで
耳をすます
見えなくなったものを見に行くために
目を閉じる
という所作を、毎朝の日課にしている
庭で、貝殻が咲いている
耳に ....
ブラインドタッチのせせらぎに
あなたが流れている
まぶたをおろして
まるで ひとりでいきているかのように
真夜中の岸辺は
いくつもの{ルビ蹠=あなうら}を傷つけるという母のおしえが
....
陰気な病院が
頭の方から
青空をゆっくりと降りてくる
逆さまになったまま
患者のひとりは今、
あざやかなレタスを食んでいる
桃色の看護婦がそ ....
クリームソーダみたいにしゅわしゅわしたいし
クリームソーダみたいにまったりしたい
クリームソーダみたいにぷかぷかういてたいし
クリームソーダみたいにへんないろになりたい
∴
....
エベレスト枕に眠る
夢みる機械が煙を吐いた
明日はどうしよう
時計よりも早い回転でしっぽを生やす電信柱
ダムの真ん中に大きな城を建てて
訳あり顔で頷くロバを
線路の海に連れて行く小柄なロックンロールジプシー ....
都会について語ると
都会は沈黙する、
唇はいつも僕にあるから
生き物たちが寝静まった深夜
列車に乗って
都会という名の駅で降りる
駅前では高層ビルが
ひんやりと脱皮をしている ....
私のDNAの塩基配列に
「ケ・セラ・セラ」という
遺伝子情報が組み込まれている
膨大な螺旋構造の宇宙には
母から降ってきた星屑が潜んでいる
突然の父の入院で
しばらくぶりに会った母 ....
ぽとり、と蝋梅
黄色い窓を覗く
すると向こう世界の隅で春が騒いでいた
「梅、桃、桜の順で咲いていくのよ」
「そうして、春になるの」
白い酒器の表面に落とされた桜
注がれた梅ソーダが ....
ことしも
かきのはながさいていた
それいじょうの
けっこんしきはない
ひやかして
かぜがくちぶえ
ふいている
それいじょうの
けっこんしきはない
やがてく ....
青く光った矢印が
一斉に前を示し
両腕にしがみ付く怠惰な風は
酸っぱい痛みを産み落としていった。
萎んだ夜と悴んだ指先には
遠くの方から響いてくる
赤い点滅の伝言を
読み解くことはできな ....
雨に濡れた明朝体のような
あなたのてのひらで
さやさやと海をやどす桃の実と
どこからか
うちよせる
まひるまの
葬列
泳げないわたしのために
あなたが桃にナイフを入れるたび
....
「骨音」
その森の中のまぶたは
たいへんうつくしい
背骨を失った世界よりずっと
まぶたに広がる昼下がり
湖のほとりで
老人は 骨を拾う
露の輝く草を分け
....
扉などあってもなくてもよくて、
それはわたしの肺が
さくばん死んだ蛾の燐粉で
みたされるのとおなじこと。(こうこつ、
通り抜ける、みどりの、さけび
それは あした
砂丘につづく列車に
骨 ....
}羊水(春)
コイン・ロッカーのコインが着地する
その音を聞いて
呼気をつきはなす
わきまえてなまえを呼んでも
まだないのだから
うぶごえをあげる
こっちへ来なさい、
と あな ....
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という
撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
....
きみがぼくを迎え入れて、ただ
きみがぼくを
迎え入れて、ただきみが
ぼくを迎え入れて、
ただきみがぼくを迎え入れて、その
夜の
むこうでは、歳月
に
きみが迎えられてい ....
ピンク通りにゴムホースの束
豚かと思った
人間の半身が転がってればいいのに
抱いてやる
「新宿は庭みたいなもんだ」と言った男が死んだので
あたしはなんとしても新宿を庭にする
....