すべてのおすすめ
癒えるにつれて ひどく
かゆくなる 若いころの
途方もない ゆめをみて
あけがた 目をさますと
指先が 血まみれだった
空の 鏡 に ひび
はしり く だける かけら
燦燦 と ふる その
う たかたの き らめきに
死 すとも くや まず
鏡のなかの じぶんを
こわすこと ぼくにも
儀礼の ときがあって
いまでも その破片が
胸郭に ささっている
あかりを 消して
ひらいたら きずあとを
指で なぞって
たがいの からだを
すみずみまで 読む
ほしかったのは 荒野
みたかったのは
石をたたいて だまって
死んでゆく 血の系譜と
じぶんの ぬけがら
境界に ぬぎすてた 皮膚と肉を
まいあさ まとう直前 わたしの
あばら骨のすきまに 火を
ともして くれているのは
誰だろう
まがいものは 百年もたぬ
詩語は 意味をはこばない
わたしらは 修羅であるから
もとめあいながらも ついに
手を むすばない
どんな たくらみが
わたしを 必要とするのか
無私であるならば
心から よろこんで
裏切られもしよう