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空気のにおいが変わり
熱と衣は円に舞う
夢を盗む夢を見たあと
共犯者を思い出せない
葉と花の足跡
街を分け つづく
はじまりを知らず ただ
はじまりから来たことだけを ....
咲きつづく花となった左手を
冬へ冬へかざしながら
森の上から去らぬ影を見る
同じ翳り 同じ霧
こだまのように立ち並ぶ
漂いは追い
追いは漂う
空が空をくぐるのを
....
木陰に置かれたこがねの車輪が
午後を静かに染めている
蒼の扉の前で躊躇し
坂の下の影を振り返る
稲妻が生まれる直前に
すべての曇は止まっている
階段を見上げる蒼い傘 ....
雨を押すと出る
水彩の
青空
夕方の
爬虫類の
羽
波に奪られた
光に奪られた
警告
白墨
白の絵の具
何も描けずに打ち寄せる
....
けものの時間が人から生えて
見知らぬかたちをなぞりかがやく
断崖まで 河口まで
海へ至る昼
白く傾いで
高さは低さ
流れなだらか
板たち 鳥たち 兄妹 ....
冬のあぶく冬の蒼
橋を洗い水を洗い
よどむ流れの背をつまみ
波を姿に押しもどす
膝の上
水の爪
氷そそぐ水
灯の下の無音
そこに封じようとするこころみ
そ ....
標を砕いた
白い轍を
船が昇る
すぐに
消えてゆく
光の棘や 岩の双六
花でも羽でも在る息の
葉ひとつ分にそよぐ場所
乗るものもない交響
川を下り 雨 ....
人のいないところばかりが豊かなので
人ではない人は首をかしげた
どうして自分は
豊かではないのだろう
顔も名も
家族も憶えられず
波だけを数えていた
溺れては ....
星の葉に 水が降る
誰も招ばぬ
誰も呼ばぬ
夜を醒ます雨
背に生やし
遠去かる冬
無と無のはざま
小さく問うもの
窓の外は絵
いつか 消える
....
陽のかたまりが
荒れ地の斜面を流れ落ちる
何もない場所が
何もない拍手に華やいでゆく
指に沈む 爪の長さ
雪でできた肉厚の葉に
花は無い 花は無い
多 ....
午後を夜に変える光を
首にまぶして遊んでいる
声の無い鳥たち
枝のなかのはばたき
土に臥せるほどかがやく花
枯れ野を歩む枯れ野の足音
砂と光が
空をなぞり 花 ....