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  午後六時十五分頃の
  日に焼けた街のことをきみは歌いたかった
  八月……
  その燻すんだ終わりにむけて
  けれどもきみの細い首で
  ネックレスが曲がっている
  飴色 .... 
  暑い夜は
  沢山の手が
  跡形無く持ち去っていった
  黒檀のヴァイオリン 
  きみの
  美しく長い舌の上
  一面に広がるれんげ畑
  雪どけの淡い水が
  陽を吸ってさざめいている
  僕は、そこで
  幾つかのたいせつな思い .... 
  ねえ
  これが、
  産まれたての時間。
  そう言いながら少女が
  綿飴をひとつ、ぼくにくれた
  まぶしい屋台の{ルビ犇=ひし}めき合う
  貧しげな七月の .... 
  元気がないから
  ぼくたちはただ
  夢のどこかに広がる
  だだっぴろい草むらに
  黙りこくって穴を掘ってる
  そんなような
  お別れの時がきて、
   ....