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 とある街で

金木犀が香る
だけど金木犀はみあたらない
探しているうち
何年経ったろう
すっかり風向きは変わってしまった
行きついた先で
仕舞い忘れられた
軒先の風鈴が鳴った

 ....
赤い線が
皮膚の上に浮かび上がる
今朝
バラのとげが作った傷が


わたしのからだの中の
赤いこびとたちが
あたふたと
いっせいに傷をめざして
走っていることだろう

猫を飼 ....
羽が落ちている
本体は見当たらないから
誰かが食べてしまったんだろう
羽は食べてもおいしくないだろうし
さしたる栄養もなさそうな
だけど
錆ひとつない
無垢な部品

ない、みたいに軽 ....
小さなサイコロが
ころがっていく

平坦に見えた道に
傾斜がかかりはじめたから
なにもかもが
かろやかに
だけど
のがれることはできない

さよなら

さよならも
すなつぶも ....
 パリ、モンマルトルの享楽街の中でも、ひときわ輝く大きな劇場があった。
 名を『ムーランルージュ』という。

 彼らはそこで活躍する芸人だった。
「ねえジャン、あたしたちがコンビを組んでもう ....
雨の音のくぐもり
かえるの声は少し哀しい
遺伝子を残すために
自分とは違う誰か
或いは
自分と同じ誰かが必要なんて
生きていくことは
素敵で
残酷だね
結ばれない糸は
螺旋を繋げず ....
朝から珈琲をぶちまける。おそらく私が無意識にテーブルに置いたカップは、テーブルのふちから少ししはみだしていて、手を放した数秒後引力の法則によって、まっとうに落ちた。……なんてこった。一瞬の気のゆるみが .... 薔薇の散るかすかなざわめき
酸性雨はやみ
コンクリートは少し発熱している
大きな海で貝は風を宿し
小さな海では蟻が溺れる
波紋はいつだって
丸く
遠く
対岸で鳥はさえずり
ポストはチ ....
通夜のさざなみ

鯛の骨がのどに刺さって
死んでしまうなんてね
或る死の理由が
人の口から口へとささやかれ



悲劇

重力がない世界では
シャボン玉も落ちてはこない
だか ....
キミが折った舟が
わたしを載せて
すべるように小川を下る
冬にさしかかれば
時間が凍らないようにと
祈る
どこへ向かっているのか
きけばよかった
それはたぶん大切なことだったのだと
 ....
夜のまぶたは
だんだんに重くなる
(誰かの優しい手で撫でられているから)
歯磨きのミントの香りもなくして
完全にこの世界が閉じられて
安らかな眠りを得るまで
安らかな死というものを
ふと ....
 盂蘭盆会

暮れてゆきそうでゆかない
夏の空に
うすももいろに
染まった雲がうかぶ
世界はこんなにも美しかったのですね
なんども見ているはずの景色なのに
まるで初めて見たように思うの ....
ひらひらと横切ってゆく蝶々
つかまえようとして
伸ばされた小さな手
初めての夏という季節の光
街路樹の葉が落とす濃い影
見えない風の気配
蝉のなきごえ

お母さんの胸に抱かれた
その ....
うまれたての水のつめたさで
細胞のいくつかはよみがえる
けれど
それは錯覚で
時は決してさかのぼらない
この朝は昨日に似ていても
まっさらな朝である

それでも
あなたの水は
六月 ....
さざなみが産まれるところ
透きとおりながら
かすかに揺れる城が
月明りを映している

{引用=とうめいであることは
ない、ことではないよ
ないことにするには
醒める必要がある

} ....
透明な羽が浮かんでいた

透きとおっているけれど
それは無いということではなくて

小さなシャボン玉は
虹を載せてゆくのりもの
パチンとはじければ
虹はふるさとへ還る

ふいに風
 ....
うすい影がゆれている

くちばしで
虫をついばむのだけど
やわらかな影であるから
獲物はするりと逃げてしまう
 {引用=命でなくなったものは
もう命には触れることができない}
それでも ....
熟れた苺は
三温糖の甘さで身をもちくずし
林檎は
シナモンの香リを身にまとわせながら
北国の樹を忘れてゆくだろう

{引用=ずっと果実でいたいという純心は
換気扇のはねに吸われて}

 ....
竹の子の皮には
小さな産毛が生えていて
まるで針のよう
はがすごとにちくちくする
皮の巻き方は
妊婦の腹帯のように
みっしりと折り重なっていて
はがされたとたんに
くるりと丸くなる
 ....
針穴に糸が通った遠い日から
ずいぶんいろんなものを縫ってきた
時には
縫われることを嫌って
ぴちぴち跳ねて
てんでに海へかえってしまう布もいたけれど

人の営みのかたわらに
一枚のぞう ....
よるになると
ぴい、と音が鳴る
この部屋のどこからか
耳を澄ませる
出どころを
さがしあてようと
眼をつむり
耳だけになってみる
飼ったはずはない
けれどそれは
とりのこえに似てい ....
わたしから切り落とされた白い手が
向こうで手をふっていたのです

交差点にはひっきりなしに
びゅんびゅんと雲が行きかうものですから
どうしても渡るきっかけが
一歩を踏み出す勇気が
つかめ ....
春のほどけぐあいが
足早にすすむころ
キミに会えるだろうか

冬はなにかしら
とんがっているから
(雪が積もった日は別として)
たとえば吸い込んだ空気の凍った針が
肺に刺さるんだという ....
過ぎ去った時間の遥かさを
たやすくとびこえる色がある

枝葉のさまざまなありようは
忘れてしまったのに
あの日
落ちかかった滴のことだけを
覚えているのはなぜだろう
人生の岐路で
も ....
立ったまま
枯れている
あれは
孤高の命

もうおひさまをおいかける元気もないし
だれかをふりむかせるような輝きもない

けれど
おまえがひまわりで
凍えながら
戦い続けているこ ....
糖蜜工場が爆発したことによって
甘い蜜たちが
静かに街を流れ出しました
その粘度たるや
もう人の手にはおえない類のものです
アスファルトの上の蜜はそのまま冷えて固いかさぶたとなり
土の上の ....
かつて風船には二種類あった

空気より軽いガス製と
人間の息製と

人間由来の僕らは
空を飛べないはずだった

小さな手ではじかれて
ほんの少し空を飛んだ気分になって
じべたに落ち ....
透明な水槽の底
沈んで横たわる
短くなった鉛筆たち

もう手に持てないほど
小さくなってしまったから
持ち主たちが
ここに放したのだ

その体を貫く芯が
ほんのわずかになったのは
 ....
赤いチュチュをはいた
白い花たちが
寄り添って踊る

小さなバレリーナ

踊ることは
生きていることだと
無邪気に笑う

顔を寄せたわたしの目の前で
おさなごのやわらかな手に触れ ....
息をしている
すべてのものたちが
息という名の
うたをうたう
うたという名の
命を

深く
息を吸いこみ
ふくらんだ分だけの
息を吐く
そのあと
わたしのうたは
誰かの肺の中 ....
梅昆布茶さんのそらの珊瑚さんおすすめリスト(564)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ダイアリー- そらの珊 ...自由詩16*18-10-5
猫とバラ- そらの珊 ...自由詩25*18-9-19
ひとひらの落とし物- そらの珊 ...自由詩16*18-9-18
夏の入り口へ- そらの珊 ...自由詩2018-7-15
ムーランルージュのふたり- そらの珊 ...散文(批評 ...718-6-27
まっさらな海へつながる- そらの珊 ...自由詩1218-6-19
不運も幸運もすべてシャッフルしたような雨上がり、ひとり洗濯機 ...- そらの珊 ...自由詩1218-6-7
六月の朝はまどろむ- そらの珊 ...自由詩1618-6-2
ふたつつむじのゆくえ- そらの珊 ...自由詩19*18-5-26
紙の舟- そらの珊 ...自由詩13*17-12-29
出航- そらの珊 ...自由詩17*17-10-10
夏のあとさき- そらの珊 ...自由詩18*17-8-6
青信号に変わるまでの時間に- そらの珊 ...自由詩17*17-7-28
今日の水に寄せて- そらの珊 ...自由詩18*17-7-6
水の城_- そらの珊 ...自由詩12*17-6-23
夏へ向かう羽- そらの珊 ...自由詩16*17-5-29
水辺の魂- そらの珊 ...自由詩19*17-5-20
五月はジャムを煮る- そらの珊 ...自由詩15*17-5-6
竹の子の皮をむく- そらの珊 ...自由詩15*17-4-14
虹色のさかな- そらの珊 ...自由詩13*17-3-29
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マシュマロ- そらの珊 ...自由詩11+*17-2-24
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冬のひまわり- そらの珊 ...自由詩24*17-2-10
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幸せな光景- そらの珊 ...自由詩18*16-12-14
秒針のない時間- そらの珊 ...自由詩14*16-11-21
星とうたう- そらの珊 ...自由詩25*16-11-16

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