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あちこちの葉陰に
星たちがひそんでいたかもしれなかった
小さな噴水は
古い歌のリフレインを奏でていたかもしれなかった
白い日時計は
誰も知らない刻限を指していたかもしれなかった
アーチ ....
もしふと世界が終わるならば
それはきっと
こんな澄んだ青い空の九月の日だろう
そんなことを思うと
なつかしさという古い抒情が
僕らを草のようになびかせてゆくね
小さな桟橋 きらめく ....
錆びた炎 軋む月
夜の裂け目で澱んだ花が踊る
誰も居ない丘に枯れた時計が降りつもる
砕けた虹が撒き散らす痛みの音符は
捩れた星座と狂おしく共振する
仮面の支配者は巨大に聳え
その影 ....
色硝子のようにあざやかに
此の世へと迸りつづける君の生
でありながら同時に
{ルビ果敢=はか}なく無へと消え入りつづける君の生
誰よりも
あやうくきわどく揺らめきつづける ....
光は淡い
私は愁いを分泌する
花が咲いている
白の黄の 紫の花が咲いている
私は愁いを分泌する
ちいさい蝶たちも舞っている
私の目には見えないけれど
きっとちいさい精たちも
こ ....
まどろみのカレイドスコープの中で
アリスとウェンディが交錯する
白ウサギを追いかけてワンダーランドを駆けるウェンディ
ピーター・パンを追ってネヴァーランドを飛ぶアリス
少女たちは追いかける ....
君のきれいな手が
思いがけない角度から
あざやかな深みをさぐり当てるのを
僕は見ていた
遠い昔から
数多の吟遊詩人たちが
僕の胸へと歌いついできたのは
きっと君のことだったんだ
....
夜の中心に置かれた
玻璃の器の中で
微光を放っているのは
誰にも問われることのなかった
ひとつの答えである
僕らは終わりゆく夏の片隅に凭れている
空中に半透明の骨がいくつか漂っている
(時々うっすらと虹色を帯びて見えたりする)
何が朽ちたあとに残った骨なのか などと
僕らはもう考えることもな ....
夜空いちめんに
きれいなさびしさを散りばめて消えてしまったのは
君だったんだね
始まらない世界と
終わってしまった世界ばかりが
僕らのまわりに転がっていたけれど
君はそれらのあいだを軽 ....
透明な祭壇の上で
君は羽化する
私はただ見あげ見つめるだけ
君は羽化をくりかえす
私はただ見つめつづけるだけ
君はそのたびごとにちがう羽をひろげて
雨の羽
砂の羽
....
梔子のかおりを運ぶ
early summerの風の中で
僕たちはまた君と出会った
思えばいくたび
僕たちは君と出会っただろう
雛菊咲く丘や
光る雲の上や
美しい夜明けのバルコニーで
....
君は踊る
薔薇を 菫を 雛菊を踊る
揚羽蝶を踊る
木洩れ日を 気ままな風を踊る
君は踊る
虹を 青ざめた夜明けを 葡萄色の黄昏を踊る
波を 湧きあがる雲を 嵐を踊る
君は踊る
....
心臓の中で
春が笑っている
笑っている春の中で
一面のチューリップが笑っている
笑っているチューリップの中で
少年が笑っている
少年の無邪気さが
チューリップを{ルビ ....
左の翼は
羽の一枚一枚がすべて
小さな銀のナイフ
右の翼は
羽の一枚一枚がすべて
紅い薔薇の花びら
その飛行の軌跡は
歪みつづける
あるいはその飛行が
天を歪ませてい ....
夜の底
白いテラスで
まるで一粒の水滴になったような気持ちで
佇む
この心は何かから
別れてゆこうとしているのだ
何からなのかはわからないが
さびしく はるかに
遠ざかってゆこうとして ....
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