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どうでもいいぢやないか
それは君のくちぐせであり
ぐうぜんにも 君からきいた
さいごのことばでもあつた
ひと月まへ 一緒に飲んで
別れ際にきいた いつものせりふだ
その前に何を ....
{引用=(*筆者より―― 昨年暮れ辺りに自分のかくものがひどく拙くなつてゐることに気付き暫く充電することに決めた。その拙さ加減は今回の投稿作をご覧になる諸兄の明察に委ねたいが、ともあれかいてしまつたも ....
一月一日、お正月。軒さきを小さな人がとほつた。
岬の根元にある町の上に、夏の海のやうな空がひろがつてゐる。
中学校の音楽室で、若い先生がバッハのオルガン曲をひいてゐる。
春には結婚す ....
聖書をよく焚いてから飴玉を投げ上げてください。
反転します。
落下しない
林檎
蜜柑
それから
檸檬。
安物です、この宇宙は。
{引用=( ....
おとぎ話の中の国は もう
わたしのことをおぼえてゐません
キセルをくはへたお爺さんは もう
わたしのことをおぼえてゐません
アコーディオンをかかへた青年と
まきばで働 ....
静かさ
静かさ、といふ音があると思ひます。
秋の夜長、しをれかけた百合を見ながら
静かさに耳を傾けます。
{引用=(二〇一八年十一月八日)}
....
手紙がある
うす桃いろの
手ざはりのよい 小ぶりな封筒の
崩した文字の宛て名も品が良い
封を切つて なかを開けるに忍びなく
窓際の丸テーブルに置かれてゐる
さて 何がか ....
けだもの
ひとの声がする
空がなく
土もない
紙の色の月がうすく照らす
このわづかな世界に
やさしく
神々しく
いつくしみ深く
ひとの声がする
《祈りなさい ....
羽
とんぼが旗竿の先にとまつてゐる。
セルロイドのやうな羽の一枚が、半分切れてゐる。
緑の縞の入つた黒い胴を一定のリズムで上下させ、三枚半の羽を震はせながら、とんぼは ....
或る秋
切り取られた空が
造り酒屋の軒先にひつかかつて
はたはた ゆれてゐる
おかつぱの姉さんと
坊主頭の弟が
口をまんまるにして
それを見つ ....