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君のために雨のなか
スーパーへ水菜を買いに行った
料理用の鋏を入れて
細い翡翠色のくきも緑の葉も
みんなガラス容器にあけて
たったそれだけのサラダ
台所には オリーブオイルしか
ないよ
....
しゃがみこむ
水滴をびっしり帯びた
つめたい床
うす緑いろに
無感動に すきとおる
指先に 細い鎖をからめて
栓を ぬく。
あなたは
どこから来たのか
つまり
近く ....
力を籠め
直角を形作る釘を抜く
秋の初めの陽射し
うっすらと汗をかき
N釘 和釘 五寸釘
丸釘 ステープル
亜鉛鍍金(めっき)の太め釘
あらゆる釘を抜いてしまう
すると匣(は ....
微笑みの外骨格を
こじ開けて
嘘のガラス転移点を探り
じっと観察しながら
ビュレットから始める
とある愛の滴定
被験体は少し
怯えているようだ
手袋をはずして
華奢な頸椎をか ....
夜の境界の細いガラス線
危うく立ち 薄目をひらき
沈黙の表面張力 声は貝にねむり
とつぜんの風が雲を掃う、
月の咆哮が闇をきりさく
天秤座の右肩からこぼれ落ちる。
ことなる時間のせりあがる ....
浸水した夢を走る銀の列車
空洞の線路には星屑が降りつもり
ちいさな灯りの駅を次々に後方へ跳ね飛ばすたび
蔦草のからまる最深部へと
どこまでも潜り込んでゆく
顔の見えぬ乗客とふたり
....
汲み置いた澄明になお念を入れ
氷砂糖のようなカルキ抜きの粒を一つ二つ
一パーセント濃度に計算された塩を狂いなく量り投じ
溶かし
晩夏のあかるい日差しの中で
すきとおった病室に赤い尾をひるがえ ....