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倦んでいた
人ごみを避けると風が冷たかった
空の色が変わろうとしていた
古本屋でたまたま買った
サガンの「悲しみよ こんにちは」を
喫茶店で一気に読み終えたあと
いたたまれなくなって
ひ ....
私は拒否された
冷たく重い扉の外で私はゴキブリのようだった
歯の奥でコンクリートがじゃりじゃりする
深夜四時
新聞受けに挟んだ手を抜くこともできぬまま
このまま朝まで過ごすのだろうか
....
あなたに齧られた痕
二の腕の内側にくっきりと刻まれた
あなたの歯型
一晩たって紫色を帯びている
そっと唇を触れてみて
こんなやわらかい肌に
あなたが突き立てた歯の力強さを思う
そんな ....
夕方と夜の境目
湖畔の輪郭が紫色に曖昧になったころ
湖に身を乗り出し水平に手を伸ばすと
足元に流れ寄る無数の細かな波が
浮力となって
まるで
湖の上を滑らかに飛んでいるかのような気分になる ....