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志を掲げ/ぶれ一つ無く佇む詩人の背中。
「紡ぎだされる詩になりたい。」と
朗読を聞きながら思った。
(愛おしい・好きだ。)と言う気持ちも
詩を愛する心の前ではかすれてしまう。
奥 ....
父が居ない家の中では
死ぬ間際まで着ていた半纏が
簡易ベットの上で持ち主を待っている。
不気味なほど明るい白一色の空模様は
渦を巻きながら雪をちらつかせ
波が立つように吹く風は
茶色 ....
父と過ごす最後の時まで
離れまいと決めた早朝。
冷えきった畳部屋であぐらをかき
ゆっくりと茶をすする父がいると
何気なく思う。
眠ったままの父をみつめ
正座を崩してそこに座れば
....
父を失った悲しみが癒えるとき
棚の奥にしまったままの写真は
寝室であった部屋の鏡台に置かれる。
新しい写真立て
マーブルチョコレートとゼリービンズ。
それらは決して開かれないまま
誰か ....
ドライアイスの冷たさが
置いた手の感覚を奪ってゆく。
触れていれば・暖めていれば
父は目を覚ますと考えた。
指先の感覚が無くなった手を離してタオルで包み
霜で覆われた父の ....
花柄の便箋。
「大事なときに、使うんだ。」と
丁寧に取っておいた。
人を出迎え
父を送り出す合間を縫いながら
新しいボールペンで文(ふみ)をしたためる。
ちゃぶ台を ....
「父が居なくなって、自由になった。」と言われたので
(縛るものが欲しい。)と
戒律を作った。
心に硬く
心に巻きつけて。
私は目隠しをしてから
自らの全身を巻きつけた。
....
父の好きだった物を食べると
思い出す事が多すぎて
(もう二度と食べない。)と
自ら放棄した。
熱々のラーメン。
つやつや光る大皿の刺身。
カラフルなマーブルチョコレート。
一息ついで ....
名前を呼んで。
私だけの持ち物を。
眼鏡の奥の瞳を見ながら
名前を呼んで。
父と母と家族がくれた
この世で唯一の宝物。
(お願い。お願い。)
名前を呼んで。
....
刺身を盛り付けると
「うまそうだな。」という声が聞こえそうで
安曇野のわさびをすりおろす。
刺身を盛り付けると
ほくほく顔のお父さんが横に居るようで
馬刺しも別皿に用意する。
「ま ....
父の衣服が
風も無いのに揺れだした。
一人でうずくまる東京のアパートで。
死の間際
僅かな体力と精神力を右手に込めて
「お父ちゃん。お父ちゃん。」と呼ぶ娘たちの両手を
ほんの少しず ....
父の額に手を置いて
硬く冷たい頬をなでながら
最後の言葉を贈る。
「ありがとう、お父ちゃん。ありがとう。。。
次もまた、お父ちゃんの子供に生まれたいなあ・・・・。」
風に ....
忙しい。忙しい。としか言わなくなったので
ほんの少しの荷物だけを用意して
高尾山に登ってみた・・・・。
曲がりくねる坂道を登るうちに
「これは、今までの景色に似ているな・・・・ ....