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揺れている。揺れている船の上、喉が渇くので、ペットボトルの口を開ける。ミネラルウォーターを飲む。
(ひたすら漂いたい気分だ)
 わたしは退院後、船で島に向かっていた。誰もいないところに行ってみ ....
 点滴を打たれながら、病室の窓から海を眺めていた。看護師が言うには、わたしは雪の降り積もる中、マーメイド海岸でひとり倒れていたらしい。音もなく波が白くよせている。意識が戻って二日たった。熱が下がらない ....  冬は好きではない。失業してから外出が減った。TVを見るか寝ているかだけで、二ヶ月が過ぎた。TVでマーメイド海岸のCMを何度も見る。海面から顔を出し泳ぐマーメイドの姿。面接や職安にも出かけるが、就職先 ....  春も夏も秋も、わたしにとっては短かった。あれから一年が過ぎ、長い冬がまたやって来た。失業し、仕事を探している。
(しばらくは会社に行かなくてすむ)
 わたしの元へは戻ってこなかったものもあった。 ....
 冬はまだ続いている。海からの光で、部屋は青に包まれている。神話の本を繰り返し読んだ。岬には女の顔をした鳥、ハーピーがいるという。元は風の精ともいわれている。そのハーピーが舞う岬から、水平線の彼方を見 ....  冬になり、女の顔をしたバードは飛び去った。わたしは、あの時の車をスクラップにして、海の見渡せる丘に部屋を借りた。情報誌でバイト先を見つけた。倉庫の仕事に就く。朝七時半、精神安定剤を飲んでから、家を出 ....  一人でいることに、何年も飽きなかった。シートの、海に伝わる神話を読みながら、永く暇をつぶしていた。精霊の女、の横顔の表紙。空腹の中、海に向かう道、カセットで、オペラを聴きながら、わたしは車を走らせた ....
リンネさんの光冨郁也さんおすすめリスト(7)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
漂着_(連作8)- 光冨郁也自由詩8*05-2-6
海の上のベッド(連作集6)- 光冨郁也自由詩8*04-11-22
マーメイド海岸(連作集5)- 光冨郁也自由詩11*04-10-22
冬(「バード連作集4」)- 光冨郁也自由詩8*04-10-19
翼(「バード連作集3」)- 光冨郁也自由詩12*04-10-17
ブルースカイ(「バード連作集2」)- 光冨郁也自由詩15*04-10-15
バード_(「バード連作集1」)- 光冨郁也自由詩20*04-10-13

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