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あかさびた喧騒昏く広小路
上野山くろぐろ聳え駅を指す
午前二時松坂屋横かすめ行く
おかっぱの少女防空頭巾{ルビ厭=や}で
千代ちゃんは数え四歳母捜す
川向う慰霊の堂は家ならず
....
音域が広がりすぎて小人出る
テルミンのように触れずに奏でられ
真昼の留守宅コップは端へ端へ
また祖母に会えそう異国の逢魔時
109スカートだけが濡れてない
....
きえぬ線きえよきえよと斜線ひき
ふる里の地蔵が飲んだ水を飲む
鰤炊いてシャガール展は明日まで
山茶花をのぼっていく末期の水
人間をひとりにしない基底材
家族総出でロバのパ ....
今はまだ誰のものでもない言葉
はつなつは命をすこし延滞する
母のおなかは折り鶴で満員です
陽だまりにゆりかご骨の色をして
仏飯に日の丸さして笑ってよ
遺影にと醜い写真差し ....
花をふむ人はきよらか春はゆく
おとうさんと正しく発音する練習
夫婦雛三人暮らしテレビ見る
母の家すすきは痩せて羽根に似る
花の散る頃とはいつか母を待つ
(没句)
ど ....
着物が冷たい随分遠くに靡く笹舟
壁焼いて嘘はお嫌いでしょうから
吹雪き明けて紙の破れ目に靴底合う
打ち伏して銀の祭りの幅を書く
シャツ山吹内部に柳として背骨
歩く牛の波紋 ....
呼吸していない瞬間死んでいる
あのね、のしたにわたしをうめている
野分して光る死人が立っている
嘘ばかり道理で昼もあかあかと
二階屋で蝶を飼うよなおとこなり