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あの人は風だった
緑の髪をなびかせ瞳の奥に、あれは
夜明けの光をたたえて 水のようにやわらかい
あの人は風だった
わたしを見つめて笑う 流れる雲を空を映して
あの人は草だった
やさ ....
風が走っている、この胸の中で
指先で奏でてゆく夜の心音
私を呼んでいる遠い声が
耳もとでこだまするたまゆら
そっと指をのばす、頬に触れたなら
夜明けのはじめの光が胸へと届く
あなた ....
その痩せた枝に忍び寄る風は音もなく
尖端に震えている明日 けれど確かな鼓動のように
その鼻筋に流れる涙はかなしみではなく
指をのばし拭い去ればただ あたたかな頬のぬくみ
僕は地に立って ....
雪が降ってくるのです
音もなく 羽毛のように
やわらかく 花片のように
雪が降ってくるのです
見えない雪がすべてを包んで
私を埋めてゆく 冬の森
ごらんなさい
遠くから蹄が駆けて ....
雲を問う風のゆびさき振り向いて頬をかすめる秋はひそかに
かなしみもよろこびもただ共にあれいとしいといってまだ青い林檎
まなざしに目を手のひらに指かさね日々を夢みる風さえつれて
....
春はあなたの名前を呼ぶ
小鳥のように 何度も何度も
春はひとつの真昼の花になって
光に咲きみだれ 狂おしく唇に口づける
*
夏は星を探して指をのばす
遠くからあなた ....
渇く忘れ去られた庭に光があった
錆びついた鉄柵はきしみを告げる
ほしいままにはびこる夏草が
風を連れて通り過ぎてゆく
忘れ去られた庭の
土は乾いて陽盛りだけが
影を作り 思い出を形 ....
なきながら翼広げる影のあり雲間にもえる鳥のまぼろし
胸破り飛ぼうとするか呼子鳥光を背負いこだま待つ空
その薔薇を朱に染め抜いてわが小鳥囀る歌よ棘も忘れて
夏至の夜火を飼い ....
あなたのくちびるから海がこぼれる
塩からい水が胸を濡らすから
わたしは溺れないように息をする
そっと息をする
空の高みが恋しいと指先をのばし
両手を広げてみるけれど
あなたの海が追 ....
うす青く空にひらいたドアの隙間から
輝く雲が覗いている
今も遠くはなれて君をおもう
見えない手のひらで
君をそっと抱き寄せる
(いつの日もよすがを探している)
(途方に暮れて)
あるいは ....