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その夜の悲しみは
液状をしていたので
私の輪郭が
どんなに複雑な形をしていようが
細部にまで浸透してしまうから
やりきれない
こんなことなら
笑える似顔絵でも
描いて行ってもら ....
いいですか
すべてのニワトリは
自分で殻を割って
生まれてきたんですよ
と叱られた思い出
いまなら言える
僕はニワトリじゃない
*
あまりの暇にたえかねて ....
花を差し出されたら
黙って口に含む
蜜を吸う
疑うという言葉は
知らないふりをしなくてはいけないルール
ねえ
毒って、甘いんだってね
*
追いかけられるの ....
あのひとが好きで
好きで
もう死んでしまいたい
こんな感情は
刹那的で
明日の朝、目が覚めたらきっと
忘れている
桜に似ている
降る花びらの中を今日、歩いた
小さく舞う白 ....
目覚めの呼吸が
ぽこっとまあるい泡になって
光差す天井へ
ふわりふわりと上っていった
仰向けのベッドで
それが弾けて消えるまで
ぼんやりと目で追っていた
ここに置いたはずの眼鏡は ....
平らな地面で
あなたのほうに転がって行ったら
笑われてしまう
一度しか刺せないとしたら、誰を刺す?
助手席で
彼女は妖しく微笑む
一度だけなら、いつまで取っておく?
ちょっと待って
いま両手がふさがっているんだ
前輪がひとつ足りな ....
金色の
呼吸が
金属から
美しく
小さくても
低音が
空を秋に
高く押し上げた
公園で
ぼろを着た
青年の
胸で光る
金色の ....
動かないで
うっかり逆鱗に触れないよう
紅を差してあげる
私の部屋に浮かび揺れる
赤い花びらに
首を傾げる友達
透明な竜を飼っている
躾はいいほうだ
私の帰りが遅いと寂 ....
ちががね、
(血がね、といいたいのだ)
ちががね、びよきだからね
あかちゃんのときからね
そうなの、ずっと
少女は枕に片頬つけて話す
ぼくは少女の枕に腰掛けている
ち ....
ぼくの恋人はスベスベマンジュウガニだ
すべすべした感触にぞっこんさ
だがぼくには妻もいるし
彼女に会うためにそうちょくちょく海に通うわけにもいかない
シャツの裾をつまむハサミを振り ....