すべてのおすすめ
悲しくて、哀しくて。
ふいに零れた涙には、その悲しみと哀しみが含まれていた。
だが、それに気付いたときには、既に時は遅く。
慌てて捕まえようと手を伸ばすも、僕の涙は排水溝に流れ落ちてしま ....
高いところが好き、
ふわっと、吸い込まれそうな地面と
緊張で直立すらも、頼りなく感じて
力の入った足が飛びそうになる
本当のところは、高いところが怖い
落ちたら死ぬってわかってるから
....
{引用=
よくわからない
そんなよくわからない感情もよくわからない
満ちて満ちて
それだけでいいはずのものが不完全になっている
理由をさがす指先が紫になっている雨の日に
隣人の嬌声 ....
セットの中の港は、別の映画の城塞都市が映り込まないように
南の湾頭に作られていた。
粗末な麻の半袖を着た少年が靴磨きの練習をしている横で
ドレスを着た女の子が心配そうに台本を眺めている。
....
それは誰かにとどけ忘れた
たとえるなら即効性の
殺意みたいなものによく似て
河原で骨になった
後ろ足が一本欠けた猫の
雨に洗われた眼窩の悲しさによく似て
真夜中にだけ客を探す
....
彼から連絡がなくなってから
一週間が経った
昨日の夜
急にさみしくなって
くだらない内容のメールを
送ってしまった
朝になっても
返事はない
送るんじゃなかったなあ…
....
雑踏を行くと
路上で演技をする人を見かけることがある
今日は渋谷で
黒人がドラムを叩いていた
バスドラの前に置かれた
あれは何だったか
脱衣カゴのような目の粗い ....
帰宅して
テレビを点けると
職場の人たちがいた
今日の忙しさを
器用な言葉で
楽し気に話している
着替えながら
会話に耳を傾ける
笑っても
話しかけても
彼らに ....
耳と眼を塞いで
僕は君の雰囲気を呑もうとする
それはただこの上ない
自己満足の投影
僕は歌うけど
誰もこの身を護ろうとはしない
自分のことだけ考えて
何気なく当たり前の現象
途方も ....
静かに雪が
降り積もる夜には
深くソファーに横たわって
氷の国の子供らのことを夢想する
子供たちは
月灯りのプールサイドの意味が分からずに
石化したマンモスの国境に夜明けが近づくの ....
驟雨
壁の絵を外すと窓がある
まだ名前のない誰かの清潔な床に
点々と零れた眠りを辿る
廊下に並んだ額縁の端
署名が目に入る
布をかける
遡行する
中庭の石畳はまばらに濡れ
痩せた ....
玩具屋から
長兄が竹と網を買ってきた
二本の竹を十文字に交差させる
曲がりにくいところは
ロウソクの火であぶって
柔らかくして
十字の結び目を針金で固く縛る
網を竹の先端の四隅で止めて
....
おれがおれの
健康診断にいったら
後ろのやつが
うるせのだから
タバコをすいやがって
てめえええ
そのうしろのやつが
首をかしげて
その首に押し付けるのだああ
じゃ ....
カップラーメンをご存知ですか
そう あのカップラーメンです
私ならね コンビニに入れば
「いらっしゃい」と微笑む店員に会釈で応え
まず 再沸騰ボタンをピッとやる
そして 店内を順繰り ....
今年に入ってからずっと
昼飯が喰えなくて
焼酎をやたら呑む 呑んで訳分かんなくなって寝る
訳分かんなくなって寝ないと寝られない俺が居て
『ヤベぇなおい、、。マジ ....
アメリカでは
志願すれば
誰でも兵士になれた
九時から五時まで
一時間の
昼休み付きで
日本では
精兵だけが
兵士になれた
一撃で
敵を倒すはずだから
勤務時間も ....
ごくごく、水を飲むように先生の詩を読む
それは、体の中に滑らかに入りこむ
内側の、でこぼこした窪みにたまる
冷たさが指先まで広がって
心地よく私は予言された雨を待つ
手のひらを太陽に ....
憂鬱
は
ひよこ豆
の
スウプ
で
ある
と
ママ
が
教えた
ここでは
何もかも
フェイクファア
で
....
内側の真っ赤な熱が透けて
桃色のようにみえる
生き物のようにやわらかくて、よくみると
痙攣している
それを薄紙で包んで
そしてリボンをかけて
ポケットに入れては持ち ....
もうほんとうはわたしに
必要な言葉なんてないのだと思う
ただ
意味もなく泣き出してしまいそうな
きもち、
きもちを
持て余している
ただしい丸を形作る粘土
を乗せて回転する ....
ある日突然窓を開けて
一羽の鳥が飛び立ってゆく
ある日それは静かに晴れた朝で
まるで船出のリボンをなびかせて
とても陽気に飛んでゆく空を
私の小指にはリボンが結ばれていて
ただ黙っ ....
生意気な
口が
ひとりでに
言葉を
吐いたので
取り返しのつかない言葉だったりするので
煙突の上で
とにかく待った
雨が降る
六月には街では
雨を受け入れる用意 ....
100406
九官鳥を追い出して
家を開放しろ
神の声かと思ったら
どこかの芝居のセリフのようで
点けっぱなしのテレビが喋る
デジタルの波に ....
『金子みすずは素晴らしい』
これ、お母さんの口ぐせ
なんで?と聞くと
『だれも気がつけなかったことに気がつけたから』
なんだって
詩人とは、そういうものなのだろう と ....
待合い室で座っていると隣に「過去」が座っていた
反対側を見るとそこでは「未来」が新聞を読んでいた
「過去」はそわそわと落ち着かず何度も鏡を見ている
「未来」は老眼鏡をずらして ....
ふと 涼しくなった
黒い雲の懐から
葉をゆすり 瓦を撫で 雨は静かに下りてくる
傘を傾け 空を見上げたその時
指揮者の棒に合わせたように
フォルテッシモの雨が降る
川は色を変え
ベー ....
あたまに風船がついていますよ
あなた見えないのですね
忙しすぎて 首が回らないみたい
熱心に遠眼鏡を 見てらっしゃるのね
風船が見える?
それは地球を一周して あなた ....
白い部屋 白いベッド
時計の針だけが 静かに動いてゆく
私は此処に
囚われている それとも
護られている
開くことのない窓から
中庭を見やる あかるい芝生に 木洩れ日が
揺れている ....
1 2