すべてのおすすめ
光る小さな玉が
ふわふわと三つ
それぞれに適度な引力を持ち
時にはふわふわと引き合い
ふわふわと離れ
角もないのに接触した拍子に
傷をつけ、傷をつけ合い
そうかと思えば
....
荒野に冷蔵庫はあった
冷蔵庫は洗濯機を冷やしていた
洗濯機は食器洗浄機を洗っていた
食器洗浄機は炊飯器を洗浄していた
炊飯器はマトリョーシカを保温していた
マ ....
世界地図を描くと
いつもはみ出してしまう
そんな遠くの大陸に広がる
乾燥した椅子地帯では
今年もイスコロガシの
産卵時期をむかえている
普段、イスコロガシは椅子を餌としてい ....
逆立ちをしているゾウの足に
流れ星が刺さった
昼間の明るさで
誰にも見えなかった
ゾウは少し足が痛い気がしたけれど
逆立ちをやめてしまうと
子どもたちががっかりするので
我慢してその姿勢 ....
ハエが世界を一周した
けれどとても小さかったので
誰も気づかなかった
ハエは自分の冒険を書き綴った
ジャングルの中で極彩色の鳥の
くちばしから逃げ回った日々を
港のコンテナ ....
クジラの背中に
独裁者の豪邸が建った
どこよりも高く
民衆を見下ろせた
一匹のカマキリが飛んできて
両手の鎌でそれを壊した
拍手喝采のなか
クジラは大きな口を開けて
悠々と ....
忘れかけていた三行の約束を
同時通訳していく
身体が沈んでいくのがわかる
劣化して重たくなった雨傘みたいに
トイレットペーパーが
自動で巻き取られる音がする深夜
ブルペン ....
色鉛筆のケースの中で
弟が眠っている
一番落ち着ける場所らしい
父と母はテレビを見て
時々、笑ったり泣いたりを
繰り返している
ケースから出された色鉛筆で
僕は絵に色を塗る
....
見たことのない言葉で
あなたと話す
関係のある足音と
関係のない足音の狭間で
時々、古い橋の匂いがする
目を凝らすと橋の形はあるのに
渡る人々のため息が聞こえてこない
....
本の索引をめくる
たくさんの指紋がついている
たどって行くと
エスカレーターがある
エスカレーターに乗って
植物の茎を昇っていく
やがて一枚の葉が終点となる
葉の先端には小さ ....
ほの暗い飲食店で
たった一人食パンを食べている
六枚切り位の厚さだろうか
食べ終わると給仕が来て
新しい食パンを置いていく
本当はご飯の方が好きなのに
運ばれてくるパンばかりを ....
帰りのバスの中で
母と娘と思しき二人が
楽しそうに童謡を歌っている
曲名も忘れてしまったし
所々歌詞も覚えていないけれど
一緒に声を出さずに歌ってみる
他に何もない停留所 ....
シーソーの上に水羊羹
その意味の無い重さ
恋が終わる
+
ベランダから洗濯物が落ちていく
どうしようもないのに
シクラメンが咲いている
+
乾いた側 ....
理髪店に備え付けられた
平方根の中で眠る犬
その耳に形のようなものがある
店主はただ黙々と
軟水で精製されたハサミを用いて
僕の髪を切り分けていく
その間、僕は不慣れな手つき ....
水道水にかぶれた皮膚のあたりを掻く
描いていたのかもしれない
赤く、ぽつぽつと、
夕日の質感に似せて
滑車に吊るされている重量のないもの
贅沢は言わない
ほんの少しでも重みがあれば
....
鉱石の中で音符が溺れる
横のようにただ長いだけの真昼
旋律とは名ばかりの
みすぼらしい数々の記載
私たちの身体は何も語れない
具体的な生活を持たない
単なる肉の塊にすぎない ....
鳩時計が次々と子どもを産む
子どもたちは皿になる
皿がとぐろを巻いているので
妻も娘もそれはヘビだと言う
ヘビなら料理など
のせられるはずもないのに
やはりとぐろを巻いてい ....
イヤホンの中に空が広がっている
入道雲にふと船が座礁した
そのような音が聞こえる
深夜、そして、私
途方にくれる船長のポケットの中から出てくる
いつの間にかなくしてしまった ....
椅子だけが敷き詰められた
簡素な地下鉄の空間を
カラスアゲハが飛ぶ
必然にも良く似たその羽で
運転席のピッチャーは
キャッチャーのサインに首を振り続ける
投げられないのだ
....
髪に触れる、鮫
独白の跡
カレンダー通りに呼吸する
日々に疎いものだから
冷たい泡と泡の間に
ぼんやりとアスファルトの道路
小便の臭い
蚊のような肩幅
バス停 ....
バッタの匂い、そして夕暮れ
船籍を持たない貨物船が
狭小な港に停泊している
たくさんの名前を積んで
名前に奪われた名前がある
名前を奪った名前がある
誰も知らないところでひ ....
昨晩、言葉をひとつ忘れ
人との会話がおぼつかない
壊れてしまった
ジュークボックスのように
直射日光に溶けていく日傘や
くもの巣にかかった小さなプロペラ機
そんな類の話を ....
パンを一口かじる
柔らかくて美味しいので
生きた心地がしない
少年が救急車の真似をして
変電所の方へと走っていく
その距離と速度の先に
助けなければならない人がいるのだ
....
母は毎日サンドイッチに
海をはさんで食べていました
そうすればいつか船に乗って
父が帰ってくると信じているのです
花言葉は覚えていても
花の名前は忘れてしまう
そんな母でし ....
冷たくなった朝が
空から落ちてくる
何か理解できないものが
パジャマを着て街路を走り続ける
軒下で洗濯物が干からびている
風景になることも出来ずに
右手で覚えている ....
今日、先生は優しかった
黒板に大きな
黒板の絵を描いてくれた
それから、ぼくらの名前を
ひとりひとり読み上げて
絵の黒板に
名前の絵を描いていった
校庭の先にある建物の方から ....
くつくつと転がる
三層に重なった
植物地帯の上
久しぶりに再会すると
眠たくなる
だから入ることはできない
週末によく見る節足動物の背中
残暑の日光に照らされて
あれはもう ....
つきがこうばん たべました
けいかん ギャングをついせきちゅう
あとの あきちはタンポポの
しゅうかいじょうに なりました
+
かたちのない としょかんで
かたちのない ほんを ....
眠れない道路のために
枕を置いていく
だから手紙を書きたいのに
便箋が見つからない
右手の方に流れている川は
蛇行を繰り返し
やがて左手の方に流れる
そのためには橋を渡る必要 ....
水底にオルガンが沈む
鍵盤で遊ぶコオロギは
青い魚に捕食されてしまった
戻ってきました
ポソポソと語り始める
あなたの口元から
いくつもの砂がこぼれ落ちる
あなたの内に広がる ....
1 2 3 4 5 6 7