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風を受けて
ふいに
ことばが途切れる
頷いた
眼差しの
彼方には
夏の空の
積乱雲が
まばゆい
音楽のような
やり取りが
耳に心地よくて
話し声が
音にしか
聞こえない ....
始まりの前の闇
映画はすでに
始まっている
フィルムが
回る前の
見えない
時間が
闇を
生き生きとさせる
次々と
現れては消え
記憶にすら
残せない
微かな痕跡が
薄く折 ....
毎日同じように
思い出を
過去に追いやる
昼間の温室
外側から見えるのは
ずっと小さかった頃の
私の影
錆びた鉄骨の湾曲と
陽に焼けて
曇りのある硝子
の 青空と積乱雲を
見 ....
目をつむれば
何でも見えた
初夏の青空
風の緑陰
遠くばかり
見ていた
君のまなざしが
風にゆれて
それから
ある日
知らない土地へ
気まぐれな
散歩でもするように
出て ....
梅雨にうたれながら
名のない暗い橋を渡る
向こう側に行きたい訳でもなく
ただ
濁り始めた広い流れを
見たいため
曖昧に濡れてけむる
遠景を見ようとして
俯瞰ではなく
流れる川の音と
....
窓には
色々な表情がある
内側から見えるもの
外から垣間見えるもの
人のココロの襞のように
内と外では違う
違うから人なのだ
だから
深いところで
おしはかろうとし
それでも
思 ....
今まで会った
いく人もの
あなた
(たちではなく)
の輪郭は
時間に洗われて
薄くなり
次第に
わたしの中の
小さな歴史になる
不揃いで
気まぐれな
「その時」「あの時」
....
夕暮れの
青いショー・ウィンドーの前を
行き交う
それぞれの時間が
いくつもの
雨粒の中に
溶け出し
雨上がりの朝
それらは
昨日の思い出の中に
消えてなくなる
川面に漂う
名残の桜の
花びらめがけて
一粒の雨の旅は
小さな
波紋を残して
終わる
旅が終わるとき
一粒の雨は
何を見たのか
何も言わなかった
ただ 最後の光景は
波紋の ....