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オレの胸の奥底に深海魚が眠っている
時折目を覚まし尾ひれを影のように揺らす
鬼灯を口に含んだように頬をふくらませて
きゅっきゅっ
と小さく鳴く
月を見る猫の目のような
....
月夜に犬を連れて散歩に出た。
境川という神奈川と東京都の県境に
流れる川の畔を歩く。
橋のたもとまで来ると何やら小さな生き物が
何匹も橋の隅をぞろぞろ動いている。
アメリカザリガニだ。
....
足の向くまま川辺を歩く
チィリリリーと鳴きながら
いそしぎがひっそりと降り立った
すこしだけ日が射すような
くもりぞらが
おまえには似合うね
生え換わる赤子のような羽毛 ....
『貴方の背に咲く空を見る
目が痛いほどそれは青くて
目を瞑ったら雨が降る
塩辛くなどあるわけないでしょ
雨粒はとても甘いの
貴方に分けてあげたいの』
おまえは甘い ....
白い時間のうつわ
網膜のひだまり
ベンチでうつらうつらしている間に
思い出が回遊してくる
おはよう
さよなら
おはよう
さよなら
巻き戻される行き先 ....
「ここになにかがありまする」
そう言って彼女は化石発掘用のトンカチで
私の胸をとんとんと叩く
いつもの陽だまりの午後
「なにもありませぬ」
「いやいや、なにかあるであろう」
....
君のまつげが
ふいに
揺れて
まるで手のひらに
雨粒をうけるように
かなしみを
見上げている
そうして
たった今降りだしたかのような顔をして
胸の中に一気になだれ込んで
....
波打ち際にふたり立っていた
足元の砂を波が洗う
掬われるような流れに
チリチリと歯がゆい思いで
―カモメのように
飛べたらええな
とおまえは言う けれど
鳥はいつで ....