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また首になりそうだよ
顔のない父が言う
もうとっくに切り落とされた首を
また切り落とされるまで
明日もできるだけ頑張って
働きにいく
もの心つくまで
父の首が玩具だった
....
父さんが
なれなかった父さんに
なろうと思う
父さんは
自動車が好きで
僕は
自転車が好き
自転車に乗る
父さんを
僕は見たことがないし
自動車を運転する
僕を父さ ....
ひさしぶりに
裏庭を見ていた
貝殻や
魚の死骸が
たくさん漂着していた
いつのまに
海が来ていたのだろう
命はまだ
こんなにも
満ちているのに
干潮の砂浜を ....
こうちゃんがいる
淹れたての
紅茶の湯気の向こうにいると
寝言を言って
祖母は祖父を追うように
逝ってしまった
けれども祖父は
こうちゃんという
名前ではなかった
....
生まれたばかりの
息子の写真を
四歳になったばかりの
息子に見せて
これは誰
とたずねていた
すると
赤ちゃんとこたえる
でもこれがおまえだよ
とおしえると
にわか ....
戦争が終わらない
真夜中は
戦争を始めるため
回避するため
会議室で行われている
夜更け
戦争のための戦争は
繁華街に移行され
朝まで続く
眠らない街に
灰になって積もっ ....
まだ顔を知らない
姉からの手紙が届く
意識だけの
わたしはまだ
返事が書けない
体を持たないから
真夜中
母に触れたがる
父を感じる
わたしの命のはじまり
いくつ ....
死んだ後のことばかり
考えている
それでひ孫が救われるのなら
構わないけれど
変わらなければ
と心に決めて
決めているふりをしてる
自分が嫌い
昨日と違う空を見上げたら
昨 ....
観覧車の回る速度と
自転する地球の速度が等しい
わたしは丸い窓から
母を見ている
南中する
太陽と同じくらいの
かつての父の高さから
父はひとつ先の
観覧車に乗ってる
....
春になると
わたしは
似顔絵描きになります
小さな腰掛けに
ベレー帽
お金はいりません
四十枚目の春
似顔絵はやはり
ちっとも似てませんでした
妻のやさしさ以外は
....
鰈を煮る
味を染みこませるため
クッキングペーパーを被せると
白い肌や
薄黒い鰭や
卵の赤い色が透けて見える
顔に布を被せられた
祖父の顔にも
同じ色が透けて見えていた
....
かなしみに
慣れてしまったなら
ほんとうの
かなしみなんて知らない
かなしみが
暮らしになったなら
かなしみは
いつもともだち
ほんとうの
かなしみを
ひた隠しにした ....