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一度切りの湾曲をとうに終え
錆び果てたガードレールは死んだように安堵している
その影に紛れた舗道の一部は黒々と陥没し消滅している
その上空を傷付ける有刺鉄線、私ではな ....
ビルディングの肩はとうに壊れていて
投げ損ねられた昼がアスファルトで砕け続ける
どれが致命傷なのかわからないくらいの夜が始まる
黒々と割れたビルディングの窓は
誰かの死に愕然としたまま死ん ....
するり、逃げ
架空の生き物のように、人の手には触れられず
するり、猫は逃げ
けれどいつか
その気儘な速度の肢体にある肉球で地面を圧することをやめ
肉球を翻し、力無く、空に ....
夕立でもぎ取れた蝉が
丁度今乾き切りました
私はアスファルトに足を揃えました
腹をかえし対の肢を合わせたその亡骸は
無音の言祝ぎでした
夕立のあと再び燃えていた日は、結局 ....
朝の花瓶から落ちたばかりの
新しい百合の花の傍らに
朝の床にて閉じたばかりの
新しい蝶々を添えたらば
一滴も流れず
ふたつ
満ちた
何も願わない夏の朝
百合の花と蝶 ....
最後の人が飛び降りたまま
裏返ったブランコの鎖が歪に静止している
翌日になれば元に戻される、それだけのこと
わたしは、もうずっと公園にいない
だから知らない
ブランコ ....
下方を流れる
動けないアスファルトを
凝視している
夏の衣服の軽率な体で、出来うる限り
常に重力のことを忘れず
下方を流れる、動けないアスファルトを
凝視している
歩く私 ....
声帯で
黙殺された孤独は
肺に
積もったようでした
声帯で黙殺された孤独は肺に積もったようでした
そして、やがては
床板に屈した体を
どうしても規則的に置いてゆく呼気に乗 ....
窓枠から遠く、鴉の発音から
鴉の翼が発生して
西の方角、地平線に降ってゆく
黒い花火があったとしたら
こんな風に
ゆっくり悲しいのだろう
この手の中の窓枠を忘れず
この手 ....
身体を懸け
窓硝子が投じくる色彩鈍角と
眼球につきものの悲痛鋭角との
区別が付かず
ずきん、瞑りました
それでなおさら
難解な幾何学を閉じ込めてしまった眼を
白く、拭き取 ....
梳き櫛の息の根をわたし止めて
泣く姿、の、無音部分
を拭った指、の
薄命部分、月に透かせば
血潮は青ざめるばかりで
発光もせず
黒髪、の
窒息密度で、黙ったままの ....
風を
包んだ
雨の羽の
横たわりゆく地にて
しめやかになった夏を
やわらかになったアスファルトを
踏む
その
私の
リズムの
ひとつひとつに含まれた 私の
しめや ....
角膜の表面にて
夏の日は湿った瞬きだらけになり
結局はわたし目蓋でその色彩を瞑り流します
そう、悲しい映写幕として
角膜は常時日陰です
鼓膜の表面にて
夏の波動は痒みに酷似 ....
濃度を増した緑 の根元
アスファルトには 日陰がある
かつて人だった空間には
かつて花束だったものが 積もっている
湿度に黒ずんだ日陰 の隣
アスファルトには 日向がある ....
屋根の下で行われていた 歪な行為の為
一旦泣き出した子供の泣き声は
とうとう消え続けるのだった
すべての 眼に マタニティ・ブルーが
満ちればいい 満ちればいい
そして 溢れ ....