すべてのおすすめ
どれだけもっともらしい言葉を吐いても
お前らは何も語っちゃいない
目に映るものすべてが腐って見える
狂ったように照り付ける日差しも
鉄板になったアスファルトも
粉塵を巻き上げて走る乗用車 ....
幼い娘が川沿いを歩きます
腰に下げた袋からぽとり
ぽとりと肝油ドロップが落ちます
絵に描いたような緑色の蛇が
蛇行しながら地面をなみ縫いし
ポップな模様を描き出します
幼子が歩くたびに ....
拝啓
今はいつ頃だったか、暦を見なくなって久しく、曜日感覚も失くしてしまいました。俗世から切り離された場所に身を置いていると、今が何の時期なのかよくわからなくなってしまいます。身の回りの変化には ....
君は歌う
恋をしたと歌う
恋は罠そして穴
青春の瓦斯が立ち込める部屋で
起こる小さな火花
乱雑な部屋に引火して
ちいさな私は燃え上がる
なにもかもが恋に焦がれていく
恋の炎がい ....
勘違いしている人が多いのだが、「嘘つき」というのは本人の性格の悪さによるものではない。先天的なものもあれば、後天的なものもあるのだが、「嘘」に憑かれた人間が「嘘つき」になる。そもそも「嘘」というものは ....
何度も君の名を呼んだ
声が出たことは一度もなかった
臍の奥底深くにある樹海
窒息しそうな木々の狭間
羊歯の葉の上に声溜めが転がっている
叫び出しそうになった声はきれいに縁取りされて
そ ....
しあわせな手のつなぎ方をして
やさしいセックスをしていましたら、
ベイビーが生まれてきました
生まれる前から、この子はかなりの幸せものです
ベイビーを楽園に残してわたしは旅に出ました
そ ....
裏庭に透明の象がいる
ばあちゃんはそれを知っている
他は誰も信じてくれない
夜、布団に身体を任せて
僕は透明になる
(つまり僕は僕を抜け出すんだ)
そして象に会いに行く
暗闇の中 ....
切れ切れの落ち葉は切ない
道の脇に沈みこんで
自分がどこから来てどこに行くのか
道行く人にかさかさと問いかける
けれど誰もその葉が何の葉であるかを知らない
女は三輪車に乗る子どもを道で遊 ....
甲子園に行くためには名投手が必要である
バッテリーの才能がずば抜けていれば
守備や打撃にさして強みが無くても勝ち残っていける
二人の青年が呉琉紺駄高校に入学し、万年予選敗退だった野球部で
その ....
動物がほとんどいなくて、すきっ歯な林だけがあるような
そんな植物だけが林立する場所にも、空き缶は捨てられていた
その缶を水が徹底的に錆び付かせ、風が土に埋葬した
泥に溺れそうな缶詰の、淵が顔を覗 ....
彼女の手の平が押し出す白濁が
指の隙間から流れていく
少し力を込めた腕の強張りに
持ち上がる頬が顔立ちを整えていく
束ねてもらえなかった前髪が
目の鋭さを扇情的に遮っては見せ付ける
も ....