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地下鉄の風に背中を押されて
階段を下れば
ホームの端を
黄色い凸凸道が
何処までもまっすぐに伸びていた
いたずらな風が
吹けば
すぐによろつく私だから
凸凸道の内 ....
「 いってきます 」
顔を覆う白い布を手に取り
もう瞳を開くことのない
祖母のきれいな顔に
一言を告げてから
玄関のドアを開き
七里ヶ浜へと続く
散歩日和の道を歩く
....
少し前まで{ルビ賑=にぎ}わっていた
デイサービスのお年寄りが帰り
部屋ががらんと広くなった
{ルビ掃除=そうじ}の時間
いつも掃除機をかけるおばちゃんが休みなので
「じゃ、俺 ....
ひとしずくの涙を
顕微鏡で覗けば
そこは内包された
ひとつの宇宙であり
やがて夜も更ける空に
ひとつ、ふたつ・・・
星々は灯り始める
あれはきっと ....
PC画面の暗闇で
林檎が独り
浮かんでいる
紅い皮の傷口から
白い肌を晒しながら
( 昔々、楽園にいた
( アダムとイヴを誘惑した
( 私は紅い林檎です
....
渋谷駅前広場に置かれた
緑のレトロ電車に入り腰を下ろせば
クッションみたいな長椅子は
日頃の腰の疲れを
吸い取るように暖かい
走ることの無いこの車両に
集まる老若男女は
....
どうやら僕は
今迄の思い出を
大事にしすぎたようだ
部屋の中は
まだ終えてない宿題みたいな
山積みの本
ポケットの中は
札は無くともささやかな記念日の ....