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猫のように見上げる
空のまだらを
鳥に擬態した
ひとつの叫びが
紙のように顔もなく
虚空をかきむしる

骨の海から引き揚げた
もつれた糸のかたまりを
自分の鼓膜にしか響かない声を持つ ....
娼婦の臍の下に咲く薔薇のタトゥー
聖書を一枚ずつ破って巻紙にする
燐寸に踊る白い蛾のささやき
さ迷うオーブ雨の匂いどこまでも
――おやすみなさい


――追伸
あなたには太陽を
終わ ....
線香花火の玉落ちて
地平の向こうは火事のよう
昼のけだるい残り香に
なにかを始める気も起きず
夏の膝の上あやされて
七月生まれの幼子は
熟れた西瓜の寝息させ
冷たさと静けさの
内なる潮 ....
夏は白濁した光と喧噪をまとい
人は肌もあらわ日焼け止めをぬる
傾くのはグラスだけ海は静かに燃え
彼女は囁きのなか人魚になる



            《テキーラ:2018年7月25日 ....
紙に描いた仮定の人物の横顔
その輪郭線は自分の顔だと主張して
パズルのようにピッタリ向かい合う
二つの概念
対義ゆえに二人ひとりの正面画のよう
口付けを交わし続ける恋人たちのよう
その愛は ....
ナナカマドのひび割れた樹皮に触れる
シロツメクサやセイヨウタンポポを撫ぜる
ダンゴムシを摘まみ上げ掌で転がしてみる

変わらないものたちの
質感の 希薄さに
抗う という ささやかな自慰
 ....
君が君とはまるで違う小さな花に水をやる時
じょうろの中に沈んでいる冷たい一個の星が僕だ
ビー玉越しの景色を一通り楽しんだなら
必ずベランダから放ること すべて朝食前に
僕の口笛が余韻を引いても ....
水たまりに映った樹々の緑を
雀の水浴びが千路に乱すように
残された幻を爪繰れば
言葉は石のラジオ

ハリエンジュに掛けられた巣
御し難い別個の生き物として
わたしから乖離したわたしの
 ....
亀裂が走る
磨き抜かれた造形の妙
天のエルサレムのために神が育んだ
光届かない海の深みの豊満な真珠と
人知れぬ絶海に咲きやがては
嫉妬深い女の胸を鮮血のように飾る珊瑚
その両方から彫られた ....
命がけで海の深みに潜り
古の眠れる宝を手に入れた男の話
錆びついた鍵を抉じ開けた
宝箱の中には
見覚えのある割れた手鏡ひとつ

結果より過程
得るよりも追求
流離うなら古代ギリシア
 ....
今朝は青っ{ルビ白=ちろ}いぬっぺらぼうすっきりしない暑くなりそう
砂ぼこりに跳ねる光キラリ目の端っこで鰯の稚魚みたいに
きっとありゃガラスの欠片だれが割ったか知らないけれど
小学生の道徳を中学 ....
鐘を失くした鐘楼の
倒れ伏した影が黄昏に届くころ
わたしは来てそっと影を重ねる
深まりも薄れもせずに影は
その姿を変えなかった
わたしは鐘
貝のように固く閉じ
自らの響きに戦慄いている
 ....
木片の内には像も形もない
{ルビ自=おの}ずと示す雛型も
なぞるべく引かれた線も
一つの像が彫り出された後で
木片はその内部に
一つの像となりうる可能性を秘めていたと
言えるだろうか
限 ....
澄み切った空 静かに
月の横顔の
化粧を落とした白さだけ
深々と冷気は立ち込めて

木々と木々の間を渡る
鶫や連雀の羽音は
はたはたと 重ねられ
地にふれず かき消され

今朝わた ....
杯から酒が溢れている
容量以上に入りはしない
さあおこぼれにあずかろう
わが同胞よアル中諸君

財布から札が溢れている
使える額など知れたもの
恵んでもらえだめなら盗め
親愛なるストリ ....
おり紙を折った
なにを折ってもうまくは行かず
折り目と皺は増えるばかり
可燃ごみへ向かう手前
あと 一度だけ
翼はあっても翔べない鶴か
スーッと墜ちる飛行機か

色褪せて邑になった濃紺 ....
太陽が枯れ果てる時間

花が燃え尽きる時間

人の電池が切れる時間

はてしない 悠久の
儚く 束の間の

どこまでも希釈され
濃密に結晶する

必死に掬う指の隙間から零れ落ち ....
しようとして したのではない
しようとしないからできること

いたるところに仕掛けた笑いの影で

逃げたのではなく逃がしたのだ
あなたはあなたを 作品の中へ

なに不自由なく澱んでいた ....
穏やかに白く
少しだけ痩せた面持ちで
たなびく蒼い雲よりはるか
高くに在って潤むもの
この想い捉えて放さず
冬枯れた枝のすがる指先逃れ
軌跡すら残さずに
やわらかな光秘め沈黙の
あらゆ ....
冬の遅い日の出に染められた雲
青白い夢間の悲しみに落ちた火種
見上げても見上げてもただ冷たく
網膜に暗い紫の影を落としては
眼孔から骨の隅々まで音叉のように
十二月の痺れを伝えるだけ

 ....
太陽の繭玉を紡ぐ朝

 風景も 音楽も
 ひとつ心に溶けて
 対流する
 かたちのないものたちは
 かたちのなかでふるえ
 ただ惹かれていた
 扉の向こう
 音と意の翅を得ることに
 ....
公園の小山
こどもたちがスキーの練習をする
抉り裂かれても純白の
やわらかくつめたい乳房は
午後には固いデコボコに変わり果て
――されど まだ十二月
なんどだって楽しめるさ
雪のお化粧  ....
釧路空港霧のため
鳥のようには飛び立てず
蛇のように這って帰る
特急ス―パーおおぞらの腹の中
ゆらりゆられて眠りに溶けて
ボールペン型ミサイルが
ピンポイントで飛んでくる
今ならいい 今 ....
小学生のころ
大きな紙いっぱいに
緻密な迷路を書いた
細いところで二ミリくらい
太いところで五~六ミリくらいの
血管のような道が幾つにもわかれ
そのひとつがまた幾つにもわかれ
それらがま ....
ある人には 最後まで欠けたままのパズルの一ピース 

ある人には 心に生まれ持つ鐘ことある毎に鳴り響く 

現に映す夢の面差し追いかけて魂の迷酔 わたしには




         ....
口紅をつけた
自分のか誰のかわからない血の赤
すると足元が浮ついて
堕ちた天使のよう爪先で滑るから
慎ましく知的 胸元に
悶えに悶えた腹を割いて取り出した
真珠ひとつ
それでも世界は殺風 ....
愛の包み紙を剥がして食べた
味なんかしない けれど
美味いとか甘いとかなんとか言っちゃって

以来 愛は無色透明 気配を殺し
居るような 居ないような

――気になるのは 破れた包み紙
 ....
雪を被ってすっかり閉ざされた
 枝の間 
小鳥は空を 
  ひと跳ね 
 ふた跳ね
すっ と吸われるように消える
とりあえず
生あるものは辺りから姿を消した訳だ
空を埋め尽くしていたあ ....
伝えようとした
なんども 白い指先が

――風のすべり台
    すばやくくぐって

  冷やかさ 
    保てず

      触れるや否や
   潤みほどけ

数えきれな ....
意識はふくらみ 肉体から浮き上る
こどもの手に握られた風船みたいに
実体のない 軽すぎるガスで ぱんぱんになった
自我――今にも破裂しそう(でなかなか破裂しない)
が 明後日の風に弄られる
 ....
間村長さんのただのみきやさんおすすめリスト(71)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
安息日に詩を書くことは許されるか- ただのみ ...自由詩10*21-5-22
最後の絵葉書- ただのみ ...自由詩11*18-8-4
枝垂れる文字も夏の蔓草- ただのみ ...自由詩14*18-8-1
テキーラ- ただのみ ...自由詩9*18-7-25
アントニムな気持ち- ただのみ ...自由詩5*18-7-21
質感- ただのみ ...自由詩4*18-7-7
題名を付けられたくない二人- ただのみ ...自由詩13*18-6-30
桶のない井戸- ただのみ ...自由詩5*18-6-16
亀裂- ただのみ ...自由詩5*18-6-9
名無しの快楽- ただのみ ...自由詩12*18-5-16
きっと君はスカラベみたいな瞳で- ただのみ ...自由詩4*18-5-12
鐘楼- ただのみ ...自由詩13+*18-4-7
空を彫る者- ただのみ ...自由詩15*18-3-7
ひらきかけの箱- ただのみ ...自由詩12*18-2-7
こぼれ話- ただのみ ...自由詩12*18-1-27
ある不器用者のソネット- ただのみ ...自由詩14*18-1-24
こころの時間- ただのみ ...自由詩5*18-1-20
「――№3」に寄せて- ただのみ ...自由詩9*18-1-17
大晦日の空に- ただのみ ...自由詩17*17-12-31
時間外- ただのみ ...自由詩6*17-12-24
溶媒- ただのみ ...自由詩12*17-12-16
白い乳房のソネット- ただのみ ...自由詩6*17-12-9
釧路空港霧のため- ただのみ ...自由詩3*17-12-9
迷路- ただのみ ...自由詩13*17-12-2
しあわせ- ただのみ ...自由詩3*17-12-2
太陽は病んでいる- ただのみ ...自由詩5*17-12-2
ある愛のソネット- ただのみ ...自由詩7*17-11-29
- ただのみ ...自由詩8*17-11-23
嘘の種- ただのみ ...自由詩14*17-11-15
極めて人間的- ただのみ ...自由詩15*17-11-8

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