すべてのおすすめ
 
 
おでんの中を艦船が航行する
デッキから若い水兵が
手を振ってくれる

大根とはんぺんが好き
牛スジは入れる習慣がない
ガンモは好んで食べないが
無ければ無いで淋しい

こ ....
 
 
売店で夕刊を買った
読むこともなく畳んで
テーブルの上に置いた
翌日から連泊の出張だった
帰ると夕刊はまだ同じ場所で
同じ格好をしていた
古新聞の上に積んだ
年を重ねるごとに ....
掌に観覧車
小さなゴンドラを覗くと
四人の家族が納まっている
父も母もまだ若かった
兄も私もまだ幼かった
それがまるで
ずっと続くかのように
ポケットに観覧車をしまう
思い ....
 
 
一番星、と空を指差したきみ
その方向を見て
ほんとうだ、と言ったぼく

でもね、あれは嘘だったんだ
見つけられなかったんだよ
だって眼鏡の度が進んでいて
きみの指先を探すだけ ....
 
 
石化する
柔らかな石
心電図の
波形の谷間が
わたしたちの眠るところ
わたしたちの見聞きするところ
わたしたちの対話するところ

/年の瀬も差し迫ったふとしたある日
 一 ....
 
 
青い空でした
どこまでも澄んでいました
こちらの方が戸惑うくらいに
名前がありませんでした
形がありませんでした
ありがとう、も
言うことができませんでした
ごめんなさい、と ....
 
 
光る小さな玉が
ふわふわと三つ
それぞれに適度な引力を持ち
時にはふわふわと引き合い
ふわふわと離れ
角もないのに接触した拍子に
傷をつけ、傷をつけ合い
そうかと思えば
 ....
逆立ちをしているゾウの足に
流れ星が刺さった
昼間の明るさで
誰にも見えなかった
ゾウは少し足が痛い気がしたけれど
逆立ちをやめてしまうと
子どもたちががっかりするので
我慢してその姿勢 ....
 
 
見たことのない言葉で
あなたと話す
関係のある足音と
関係のない足音の狭間で
 
時々、古い橋の匂いがする
目を凝らすと橋の形はあるのに
渡る人々のため息が聞こえてこない
 ....
 
 
帰りのバスの中で
母と娘と思しき二人が
楽しそうに童謡を歌っている
曲名も忘れてしまったし
所々歌詞も覚えていないけれど
一緒に声を出さずに歌ってみる
 
他に何もない停留所 ....
 
 
鉱石の中で音符が溺れる
横のようにただ長いだけの真昼
旋律とは名ばかりの
みすぼらしい数々の記載

私たちの身体は何も語れない
具体的な生活を持たない
単なる肉の塊にすぎない ....
 
 
バッタの匂い、そして夕暮れ
船籍を持たない貨物船が
狭小な港に停泊している
たくさんの名前を積んで

名前に奪われた名前がある
名前を奪った名前がある
誰も知らないところでひ ....
 
 
昨晩、言葉をひとつ忘れ
人との会話がおぼつかない
壊れてしまった
ジュークボックスのように
 
直射日光に溶けていく日傘や
くもの巣にかかった小さなプロペラ機
そんな類の話を ....
 
 
パンを一口かじる
柔らかくて美味しいので
生きた心地がしない

少年が救急車の真似をして
変電所の方へと走っていく
その距離と速度の先に
助けなければならない人がいるのだ
 ....
つきがこうばん たべました
けいかん ギャングをついせきちゅう
あとの あきちはタンポポの
しゅうかいじょうに なりました

+

かたちのない としょかんで
かたちのない ほんを ....
 
 
水底にオルガンが沈む
鍵盤で遊ぶコオロギは
青い魚に捕食されてしまった
戻ってきました
ポソポソと語り始める
あなたの口元から
いくつもの砂がこぼれ落ちる
あなたの内に広がる ....
 
 
壊れたメトロノームの
壊れたリズムで
第一楽章は始まる
歪んだ旋律が
琥珀色のホールを満たし
それでもヒトたちは
祈るように席に座り続けた
やがて楽団員が一人また一人と
舞 ....
 
 
汽笛が鳴って観覧車が発車する
ゆっくりとした速度で空を進む
向かいの席に座った初老の女性が
リンゴを剥いている
いかがですか、と勧められ
親戚でも無いのに半分をいただいた
リン ....
 
 
階段の気配がする海岸通りを
古めかしい山高帽の
大男が歩く
ふいに倉庫の角を曲がると
夏は男を見失ってしまう


+


本の敷地に生えた
時計草の実を半分に切る
 ....
 
豆腐がテーブルの下に入ったまま
出てこようとしない
いくら呼んでも
何の反応もしないでじっとしている
仕方なく椅子をどけて
自分がテーブルの下に入る
特に豆腐に恨みがあるわけでも ....
 
 
水で出来た線路の上を
指列車がやってくる
わたしは道路の言葉で話しかける
指列車は親指を振って応えてくれる

空から墜落しそうになっている空を
真夏の工場群が
かろうじて支え ....
 
 
梅雨の湿った風に吹かれいると
いつの間にかぼくと妻は
古ぼけた感じがする列車の
最後尾の座席に並んで腰掛けている
列車はカタンカタンと
紙のイメージの中を
ゆっくりとしたリズム ....
 
 
試験管の中で農場が溶けた
後に残った僕らは、帰り道
アブラ菜の咲く側で
何かの小さな骨を三つ拾った

お互いにひとつずつ持ち
残りのひとつは
骨が欲しくて困っている人に
あ ....
 
 
手からファイルが滑り落ちる
その先に空がある
とめ具が外れて
出鱈目な順序で書類がばらばらに舞う
書類から
印刷された文字も手書きのメモも
剥がれていってしまう
牧場の真ん中 ....
 
 
砂でできた掌が
記憶の水に
崩れていく
そしてそれを受け止めようとする別の
掌がある
赤茶けた鉄路は
臨海の工業地帯へと続き
大きくカーブする
その付近で
群生する草の穂 ....
 
 
ワイシャツにアイロンをかけているうちに
見知らぬところまで来てしまった
さっきまでいっしょにいた妻や娘の姿も見えない
どこか淋しい感じのするグラウンドで
赤勝て
白勝て
子ども ....
 
 
ページをめくる
本の中にたくさんの
文字が落ちている
こんなにたくさんの文字を
いったいどこの海から拾ってきたのだろう
時刻表を見ると
海行きの最終列車はもう三分ほど前に
近 ....
 
 
虫かごと網を持って
虫をとりに行った
どんなに網を振り回しても
虫以外の生物や
生物ではないものしかとれなかった
とったものは逃がしたり
あったところに置いたりした
元の姿に ....
 
 
ぼくのタクシーが壊れてしまった
だからもう、ぼくはタクシーに乗れない
朝食の後、歯を磨いていると
血のような味がして
吐き出すとやはり血だったので
歯槽膿漏か何かかと思い
壊れ ....
 
 
卵に言葉を教えた
教えた言葉を
卵はすべて覚えたけれど
口がなかったので
話をすることはなかった
雲が形を変えながら
夏の空に消えていく
わたしが生まれてから
何度も見たそ ....
kauzakさんのたもつさんおすすめリスト(125)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
帰還- たもつ自由詩711-2-11
ラブソング- たもつ自由詩411-2-1
掌観覧車- たもつ自由詩6+11-1-9
指先- たもつ自由詩411-1-3
引越し- たもつ自由詩710-12-31
童話(空)- たもつ自由詩710-12-23
ふわふわと光る玉の話- たもつ自由詩810-11-16
ゾウの話- たもつ自由詩1610-11-10
別れの言葉- たもつ自由詩510-10-28
喫煙- たもつ自由詩810-10-18
理由- たもつ自由詩710-10-5
名前- たもつ自由詩610-9-28
部品- たもつ自由詩710-9-25
歯形- たもつ自由詩1010-9-23
ファザー・グース(6)- たもつ自由詩8*10-9-12
水底- たもつ自由詩7+10-9-8
ホール- たもつ自由詩610-9-1
汽笛- たもつ自由詩4+10-8-21
時代- たもつ自由詩710-8-18
冷奴- たもつ自由詩910-7-19
夏休み- たもつ自由詩910-7-16
嘘つき- たもつ自由詩810-7-12
クイズ- たもつ自由詩610-7-8
ファイル- たもつ自由詩210-6-26
穂先- たもつ自由詩610-6-2
温度- たもつ自由詩1010-5-23
会釈- たもつ自由詩710-5-20
記憶- たもつ自由詩810-5-18
行灯- たもつ自由詩810-5-16
夏の雲- たもつ自由詩22+*10-5-12

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