あるはずのその「本当」に目を向けるのがこわかった、ちいさなわたし
あんなにも愛おしかったものたちが、並んでゴミ箱に落ちていく
言葉にしたとたんに消えた想いも、言葉にできないままの不格好なおもいも、 ....
限りなくなっていくのだ
地平っていう足場はもうなくなった
息できるけれどここは水中です、溺れます、泳げます
イメージは身体をさいていく


神様ー
なんて叫んでもだめ
一握りの空を降り ....
お風呂場でうたう
大好きな歌を
思い出に聞かせてあげる



きらいだったひとの顔
負けたくなかったひとの顔
いつも屈服せざるをえない
幸運なひとの顔

なにも
なにひとつ
 ....
光が運ばれている。

進行方向の反対側から、ふつふつと泡のように
ほどけて流れてくるものがあった。あれが街灯。
ひとびとは円く集い、なくした星のかたちを思
い出そうとしている。(それはあくま ....
キスして踊ったら彼が迎えにこないかしら
宇宙のはじっこで震えてたあのこは今じゃ華麗なダンサーなのに
だれかが教えてくれなきゃ気づけないような小さな星で眠ってるあのこだって
夢を捨てずに頑張ってる ....
海に沈んでいた。深くて、暗くてただただまっすぐに、とうめいな海だった。彼女はいく年も海の中で生活をしていた。貝殻と人魚のシズクでできたふしぎな家に住み着いて、自分のすきなものだけを集めて暮らしていた。 .... みずうみにすんでいる女の子は
キスがへたくそで色白で
酸素のいろや木漏れ日の匂い
澄んだ朝の空の温度なんかにくわしいけれど
マニキュアの冷たさや
つま先の孤独なんかは知らなかった
毎日すこ ....
甘い香り なめらかな肩の 赤く熟れたキスマーク 白いマネキンの金色の髪の毛が 蜂蜜のようにとろとろ 光に触れたり 離れたりしている / 指先であそぶ 涙は真珠のようにうつくしい あなたは傷ついても悲し .... となりに
いてくれないとふあんです
たくさんのひとといるときのこと


すべてわかっているのでしょうか


わたしをだれかにあずけると
あなたはそっと、おとをころして
わたしがしせ ....
六月の陽が射して
雲を払い
風は流れて
雨が上がる

濡れたままの
あなたとわたしは
ひとりと
ひとりで
ふたりだった


ふたつ並んだ足跡を
ひとつひとつ消しながら
終わ ....
 
 
傘のない世界で
きみに傘の話をしている
小さなバス停に並ぶ他の人たちも
そぼ降る雨に濡れて
皆寒そうにしている

ぼくは傘の話をする
その機能を
その形状を
その色や柄の ....
宝石を口に含んで遊ぶ
あの娘が笑うたび
きれいな犬歯は怪しく光る
宇宙船の軌道のように正確な
ピンクの唇が生意気に
愛の歌なんぞうたっている
蝶々が飛んでいった
あの娘は鼻先で笑った
 ....
 頬の痩せこけた男は、目を見開いて、波に揺れる闇の向こう側を凝視している。
 乱れた波長が羅針盤をおちょくる。
 男は夜の海で虚空を仰ぐ。
 すると、雨に揺らめいて光が瞬く。
 灯台の明りが傾 ....
呼吸を実感したくて
息を止めると
きみはどうしたのと笑った
どうもしてないよ
ただ
死んでみたくなっただけ
そう言って僕も笑った

昨日僕が鍵を閉めた
空調の整った部屋
まるい天井 ....
ワールズエンド
ミニチュアみたいなおうちで
かくばった窓
ふぞろいの靴
あつぬりの白でしあわせの膜をはって


めざめたばかりの女の子は
チェックのスカートに
ちりばめられた星屑 ....
私は目を閉じる
下瞼のほうへ意識を集中させる
まるで世界を下へ押しやりたいみたいに
あえいでも泳ぎきれない波のように
なんやかやが迫って息もできない
やっと
口をひらいたときに出てきたもの ....
濡れたくちびるのその色は
さながら銀座のマネキンのよう
くちづけた指先に
マニキュアの甘いしびれ
ぼくのくちびるに
幼い毒をのこして


薔薇をかじって
少女を売る少女と遊ぶ ....
あなたの
瞳が
おくゆき
をもって着陸しようとしている

まっすぐ平行していた、している
黒線
左右のバランスがおかしい彼女は
しっかりとした楔を
そなえつけられていて
と ....
安っぽいネックレスに
ラズベリーの色がしみついて
ドライブの途中
夜明けを待たずに
海へ着いてしまうよ
ハイウェイの甘いライトは
ちょっと刹那的だよね
レコードの針が折れちゃった ....
純情と憂鬱の皮を剥いて
果実のような素肌に傷をつけていく
痛くないよ
海では前髪を濡らした人魚が泣いていて
不透明な青の瞳が
もうひとつの宇宙のようだ


静かな夜の粒が少しずつ降 ....
パーティーは終わらない、軋んだ花で飾られた戦車に、飛び乗るなら、凍るような白い朝にしよう、クラッカーを買ってこよう、庭を壊そう、一緒に歌ってみようよ、晴れ渡った北半球の芝生に、横たわろう、星型 .... 群青がおりてくると
土は冷たくなる
それにふれると
からだじゅうが嘘のように固くなった
すると、ひとりの子が
私はおんなのこです
と言って
すこし笑った
私にはよくわからなかったけど
 ....
銀色の糸で夜空の端を結んで
葉緑素だけつめたはこのなかに
すこしずつ流し込んでいく
そしたら女の子がおどろいた顔で
真珠のような瞳をみひらいて
でもそのあとすぐ微笑った
無機物の甘 ....
となりの人が一歩踏み出す。


チュッパチャップスを舐めながら自転車並列で猥談するジャージ姿の男子中学生は信号を見ないし当然のように歩道に転がる真っ赤な苺にも気付かない。
明日が月曜日であるこ ....
しめやかな午前 /

温まらないエンジン
背負い込んで
缶コーヒー中毒者の
重い足取り

煮え切らないナビ
ぶら下げて
揮発しそうな生活者の
白い排気ガス

走れ
せめて ....
もう手放さないといけない
ばらのようなほほえみが懐かしい
手のひらの上の海で
神様を泳がせていたころもあった
僕らの瞳はシベリアの氷みたいに
青くつめたくとがっていたね


黒 ....
君のセーラー服のスカートの
いわばちいさな海のようなプリーツと
さっきからずっと飛び回っている
黒いちょうちょの羽についている窓に
使い終わった水彩絵の具のパレット
みたいな夕暮れの ....
すこし伸びすぎた爪の
深海の青い色に
星をつくる機械の部品が
ひとかけらまじっていた
それはしたたる夜空の色で
弱々しく点滅し
君のグリーンの瞳に
合図を送ったようだった


 ....
非常階段で待ち合わせ
そんな滑稽さでもって
世界から逃げている
きみとわたし

日中の駐車場で
眩しいくらいに飛ばされた
二人の立体感が
遠い

ふれている間だけ
呼吸するのを諦 ....
きみはひどく咳き込み
すぐに踞った
今日は風がつよいね
手をつないで
髪を
なでた





すきだよ


あまく
湿った声は遠く
いつも
おびえているみたいだった
 ....
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