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網戸越しに世界を見つめている
そうしたときのコテツ様は
ひどく冷静で、明晰で
私は
そのしずかな横顔に憧れる

うつ伏せて
同じ目線で目を凝らすが
すぐに飽きてしまう
私は
無防備 ....
みんなで
海、行こう
今すぐ行こう
水中メガネなんて
海で買えばいいよ

母さんの
あの向日葵のボレロな
裾をめくって
叱られる前に
駆けぬけようぜ

追いかけて
波を追いか ....
明るい空から
さわさわと緑の雨が降るから
おまえの誕生日は
いつも濡れている

水色の
ローラーブレード
畳の上で
肘あてや膝あての
具合を確かめている
それは
おまえを守るため ....
連続するシグナルが流れ込み
激しく流れ込み
とりとめのない水圧に
胸を押される

匂いのない夕暮れが満ち
眼球の裏側に満ち
屹立する剥製のように
赤光を反射させる

{引用=
僕 ....
言葉はひかりより
遅れてやってくるから
たぶんまだ
君は粒子で
かすかな時間差の中に
小さく膨らんだり
縮んだりしているんだろう

空は淡く
まだ少し痛いから
僕は水辺にいて
円 ....
空はどこまで
ってきく君の
求めている答えは
わかっていた
あのとき
君の肩は細くて

花びらを
青い水に散らして
一文字ずつ撹拌する
結実してしまうものが
何もないように

 ....
僕たちは行進する
雨と雨と雨の合間を
かなしみの残る青空に
バシュポン
圧縮した空気は開放され
白い弾丸は
砲の初速を逃れた彼方で
小さな羽を広げる

あの
遥か積乱雲と日輪草の
 ....
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という

撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
 ....
朽ちた木屑のかさなりを
踏みふみ
つづら登る春の里山

行く先々を導くように
萌える山吹
ふとした足元に
大人しくうつむく
鈴蘭の白、きみどり
ひとつひとつの
光りの具合を確かめる ....
氾濫する
春の本流を立ち泳ぐ
辺りには甘い毒素が満ちていて
脳から先に侵されてゆく

あらゆる感情の結び目は解けて
それがいいことなのか
悪いことなのか
判断さえおぼつかないまま
い ....
堅い梢から
白い気泡がぷつぷつと生まれて
二月の空に立ちのぼる

それは
君の唇からもれる
小さな温度に似ていて
僕の尾ひれを
とくん、と春へかたむける

ふらりと現れて
はな先 ....
夕暮れの水位は
さざなみ
浅い胸に、さざなみ
空白で埋めたはずの
小さな画布が
素朴に満ちてゆく

海面に浮かぶ
危うい杭に
うずくまる鳥の
膨らませた羽から
零れる文字のやさし ....
乾いた空を見あげて泣いていると
(おとうさん
(あんまりやさしい気持ちになると
(涙がでたくなるんだよ
という

疲れたときは
ふうせんかずらの種をあげる
それから
ビールを買ってあ ....
「急に泣きたくなる」
という設問を読んで
泣きそうになる

つきつめると
あふれてしまうので
空みみのふりをして
「いいえ」に丸をつける

+

淡い花のきもちになって
窓の外 ....
この船は
すばらしく安全だから
お金持ちの人も
貧乏な人も
みんな乗るといいよ

僕らが
永いことかかって造った船だけど
黒い人も
白い人も
乗るといいよ
でも、たくさん乗ると
 ....
ねぇ、その懐かしい谷は
いまも風に吹かれているの
そうさ
陽のあたる白いテラスで
あるいは
小さな木の橋に腰かけて
風に吹かれてる
何も変わらない

(かば?
(かばじゃないよ、妖 ....
娘とふたり
バスに揺られている

おまえが置き去りにした
ウサギの手さげ袋は
そのままバスに乗って
湖近くの営業所まで
運ばれたらしい

忘れ物はぜんぶ
そこへ運ばれてしまうのだ
 ....
真新しいクレパスの
いっぽん、いっぽんに
なまえを書いてゆく
きみのなまえだ

先端恐怖症の妻は
体育着の胸に
名札を縫いつけてゆく
今日は調子がいいの、と言って

慈しみの雨が屋 ....
水は柔らかく伸びて
青いさかなとなり
耳にふれてとけてゆく

鳥は低く弾けて
白いはねとなり
肌にぬれてしみこむ

きみの産卵する文字たちは
見たこともないのに
なつかしい、ゆらぎ ....
たまゆらぐ
あきのひとみで
草のなかにかくれた
君をきいている

何かにすがりつきたいふうな君は
細い、ほそい線になって
なまみの月を仰ぎ
永いときを抱え
ふるえる

{引用=
 ....
病院で診てもらったら
うどんこ病にかかっていました
お医者さんは
専門じゃないので、と言って
生花店の名刺をくれました



お店のひとは
ぬれた脱脂綿で
手のひらを優しくぬぐって ....
硝子に押しつけた
こめかみをたどって
冷たい雨がしたたる
降車ボタンは
どれもかなしく灯りそうで
斜めに落下する、指先

目的地なんて
最初から
あるようでなかった

オクターブ ....
ラムネのビー玉を
半分あげるの、と鳥かごに入れて
じっと様子をうかがっている
握り締めたもうひとつには
何が映っているの

+

冷蔵庫の隅に
食べちゃだめ
と念を押されたりんご飴 ....
それは
細く透明な糸に操られた
いっぺんの羽である
淡いひかりに温められた石のうえに
ふわり、着地しそうにみえて
寸前で自由に浮上する

どこかへ帰着しようなどという
よこしまな結び目 ....
国道を南下すると
海がひらける
それは
わかっているつもりだった
潮の香りがしている
目を細めて見つめている

+

波打ち際で
砂をかく
砂をかくと
掘り起こされてしまう
 ....
あなたはいつも
わたしの
開かれた窓でした
そこにはいつも
新鮮な空気が流れていて
清潔な水色の空とつながっている

たとえばそれは
岬の草はらの淡いスケッチで
たとえばそれは
ガ ....
学生たちが
そこここに円くあつまって
華やいでいる
どうしたら
あんなふうに笑えただろう
そういえば、もう
何年も卒業していない

花壇のすみで
孤立無援だった球根さえ
新しい黄緑 ....
ああ
いくつもの候補があったよ
さくらとか、みかんとか、まりんとか
植物や風景が多かったかな

もう生まれてくる季節なんか
どうでもよくってね
まろんとか、こなつとか、みさきとか
次々 ....
素数ばかりの現実を逃れて
羊水に包まれたような充足と安心を
浅い眠りに{ルビ貪=むさぼ}る、朝
休日の

{ルビ繭=まゆ}の内に垂れる
一本の危うい糸に吊るされた体躯を
淡白い光りの方角 ....
おなかが痛くて
おやすみしたという娘が
しょぼくれた眠い目を
こすりながらくれた
カカオ

バレンレーの日と
君が言ったから
誰がなんと言おうと
今日は
バレンレーの日

あた ....
夏野雨さんの佐野権太さんおすすめリスト(37)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
コテツ様- 佐野権太自由詩8*11-12-9
海ロード- 佐野権太自由詩9*10-7-8
水色の車輪- 佐野権太自由詩21*10-7-2
夕暮れ、ときどきペンギン- 佐野権太自由詩11*10-1-20
鳥の石- 佐野権太自由詩14*10-1-6
水色スケッチ- 佐野権太自由詩14*09-9-28
鳩砲- 佐野権太自由詩27*09-7-2
六月の水球- 佐野権太自由詩40*09-6-1
花霞- 佐野権太自由詩19+*09-4-8
春乱- 佐野権太自由詩25*09-3-20
置き文- 佐野権太自由詩26*09-2-6
素描- 佐野権太自由詩19+*09-1-29
おとうさんの空- 佐野権太自由詩17*08-12-11
選択肢- 佐野権太自由詩30*08-12-2
ボートピープル- 佐野権太自由詩8*08-11-27
むーみん- 佐野権太自由詩13*08-11-21
湖ゆきのバス- 佐野権太自由詩30*08-10-29
アヴェ・マリア- 佐野権太自由詩24+*08-10-7
亡命少女- 佐野権太自由詩22+*08-9-19
交感する秋の声紋- 佐野権太自由詩27*08-9-10
うどんこ病- 佐野権太自由詩32*08-8-27
九月のシャツはグレープの匂い- 佐野権太自由詩12*08-8-26
夏の残り火- 佐野権太自由詩18*08-8-19
朝のイマージュ- 佐野権太自由詩8*08-8-15
海のアルバム- 佐野権太自由詩17*08-8-13
あなたという風景- 佐野権太自由詩22*08-5-22
春の準備体操- 佐野権太自由詩10*08-3-28
いのちのなまえ- 佐野権太自由詩46*08-3-1
君と空へ- 佐野権太自由詩19*08-2-22
バレンレーの日- 佐野権太携帯写真+ ...28*08-2-14

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