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遠く
離れたままで
聴こえない
聴くことのできない
あまりにも
薄くのばされた夜
わたしたちは
南回りでまたたいている
天球儀は
魚眼レンズに切り取られ
森の陰影に
ふりがな ....
爪先で弾く夏
くちびるに影法師
背中のロンド
ラムネ壜に閉じ込めて
水の匂いのする靴音
いいえ あなたの声色
雲間に擬態する日だまり
いいえ あなたの胸元
飛び跳ねた水の中 ....
そうだ アフリカへ行こう!!
そう言って父が
長年勤めていた会社を依願退職したのは
定年への秒読みが開始された
梅雨の明けきれない
じめじめした蒸し暑い日だった
それ以来
キッチンに ....
「夕凪」
遠い昔
粉々になった水平線が
白い海鳥に姿をかえました
白い海鳥の
さいごの羽ばたきで
のばされた夕凪で
ひきよせられる
白い骨
「内緒」
わたし ....
「水の中の六月」
錆びた鉄の味のする手摺を伝って
空っぽの水槽を満たそうとする早朝
浸水された浴槽の縁を滑らないよう歩く
生まれた時から水に溢れていた
「駆け落ち」
....
水の匂いのする
あなたの
指先の和音で
おどりだす
初夏の背表紙は
水溶性の文字たちの
ぽつぽつと吐き出す気泡で綴じられてゆく
垂直に
落ちてくる六月の
浸透してゆく
素直 ....