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哀れに焼け落ちた
オートバイ
きっと
恋も
焼け落ちたら
芯だけが
残るんだろうな
どうしても
残ってしまう
残骸が
夜明け前の
蒼い蒼い
ひととき
こんな眼をしたひとに
遠い昔
会ったことが
あるような記憶
蒼いそらを仰ぐ
還らないときを思って
戻れないときを憂いて
あ、が悪意で
い、が意地悪で
う、が疑い深くて
え、が怨恨で
お、が汚染で
そんな世界じゃなくて
あ、がひろいひろい「アイ」で
い、が色鮮やかで
う、歌声で
え、が笑顔で
....
その男は
音もなく戸口に立っていた。
帽子を深く被って
顔はよく見えない。
ーあんたの夢を買うよ。
ー・・・
ーあんたの夢を買うよ。
やっと答えた。
ーどんな夢 ....
鼻腔に遺された
親友のお骨の匂い
身体に染付いた
病院の匂い
金木犀でもなんでもいいから
どうか消して
いい香りで
わたしをいっぱいにして
夜のまんなかで
佇んでいるあのひとを
みつけた
何ヶ月ぶりなのかな
なにも考えられなくて
考えるなんてとても無理で
でもこれは
必然でも運命でも偶然でもなく
ただそこに ....
仰向けになって
ずっと天井を見てると
なにか
いろんなものに見える
小さい頃の
熱を出した時のように
あの点とこの点を
くまにしたり
小鳥にしたり
だけど
点と ....
夕暮れに浮かぶ
大きなお月さま
きっと
あのお月さまは
夜中になれば
やさしい灯で
この街を
包んでくれる
やさしい灯が
病室にも
射し込むだろう
たぶん
私の眠りを
見守るように