すべてのおすすめ
長雨の晴れておちこち競ふごと干し物
ひらめく冬空の下
おしどりが小さき雨の波紋消し
みどりに染みし池をめぐれる
(苔寺にて)
花冷えの椿の寺はひっそりと五色の ....
めまぐるしく排ガスの数字変わるなか
河原町の信号渡る
老い母の如何にと受話器に声を聞く
会いたくなりて声とぎれつつ
赤ちゃんの取り替へ事件見ておりし
背丈伸びし子が眞違を問いぬ
....
今朝ほどの言ひすぎし事悔い乍ら
帰りくる子のおそしとぞ待つ
帰り来し子の淡淡と語りかく
明るき声に救われしなり
屑かごのプラスチックは音たてて
生きもののさまに動きを見する
も ....
手の上にカプセルの薬あそばせて
次ぎ編む服の配色と決む
夢に見しことくり返し夫語る子等は
留守にて話題ひとこま
硝子戸に写る雪影大きくて二人の夜が
童話めきくる
首すじ ....
石なげて しばししてより音のする
ダムの高さに心おののく
静かなる師走のダムに労務者の
網引ける声 四方にこだます
つぶらなる茨の赤き実の陰に
するどきトゲが短陽に透く
....
井戸掘の職人たちは泥つけし
顔そのままにしばし仮眠す
階下にて九州土産の風鈴が
台風予報の風に音たつ
名月に逢ふひとときを足らひゐて
たゆたいがちに春間近かなり
【昭和四十八年 ....
里芋の葉に露玉を宿らせて
風も光りて土用に入る日
身体ごとゆるるが如き北山の
杉のみどりが視野に広がる
微熱ある夜を目覚むれば
枕辺に誰がつけくれしか蚊取香匂ふ
熱湯の ....
夫婦喧嘩仲裁は娘が引受けて
吹き出すはめとなる雛の前
初出勤明日に控へて幼児期の
日記を見せて娘と語り継ぐ
大雨のあとの賀茂川に流れ込む
廃液は濃き染め物の色
気まぐれ ....
ストーブの上に煮つまる匂いして
今宵は独り本に寄りゐる
支えゐる心重しと思ふ午後
陽ざしがいつか雪となりゐし
いやされし言葉を胸にあたためて
ショールに頬を埋めて帰る
....
驟雨きて あわてて上る物干に
後より夫も手助けにくる
クレーンにて運び込まれし銀杏の木
菰に巻かれて道に横たふ
北山は時雨るるらしく雲たれて
行く手に燕低く飛び交う
梅雨空の比叡の山に雲低く
梔子匂ふ川風吹きて
何やらむいぶかりて見し窓の外
夜に入りて降る雨しぶきなり
もの忘れひどき此の頃 娘が笑い
用多き故と言いわけをする
散歩より帰りし犬の足を拭く
吾が顔のぞき されるがままに
くちなしの{ルビ香=かおり}ただよう くりやべに
千日紅の赤が寄り添う
卓上の玉葱の芽は日日伸びて
七本の青き葱となりゆく
無花果が口あけ雨を受く姿勢
姑独り居の狭庭の隅に
家の建つ工事現場の土もらい
それぞれの鉢に土満たしてゆく
人よりもおくれて登る鞍馬寺
熊に注意と立札のあり
足弱き友に ....
バス降りて 草むら行けば足もとに
稲穂ゆるがし イナゴ飛び立つ
秋雨のやうやく上りし宵の月
ジャンケンをして大人賑やか
耳もとに娘がつぶやきぬ生え際の
薄くなりしと夫のことをば
....
花選び散散迷いて りんどうと
決めて俄かに秋をさみしむ
帰り来し子にぞ言はれて屋上に
上りて見れば満月清し
木犀の匂へる塀に沿ひ行きて
訪ぬる家を過ぎしも知らず
野生美の紫 ....
冷房のつよきビルより出でてきて
鋪道の照りは肌にほどよし
寝袋を肩に出て行く子等のあと
逝く夏の風追いかけてゆく
留守宅の犬に餌やる三日目を
信頼しきる犬の目と合ふ
矢 ....
無言にて薔薇一枚を差出され
祈りの如きさまに受け取る
抱え持つ洗濯物の子のズボン
ポケットに鳴るは はだか銭らし
かきつばた あやめか しょうぶと論じつつ
床几に寄りて賑はふ ....
前髪の白きに毛染吹きつけて
女身愛しと笑われもする
蓑虫を二つぶらさげ鉢植の
さつきは強き夕立を受く
草の実を体に着けし犬と吾れは
川辺歩めり秋風の中
雑踏の中のマキシ ....
扁桃腺腫らして臥せる吾が側に
苺食みつつ子等は饒舌
もの煮ゆる音も親しき独り居の
夜は気ままに猫の相手す
鄙びたる里を吹く風 豌豆の
からめる蔓をゆさぶりて過ぐ
くせのある ....
子等の留守 語る事なく夫と居て
硝子戸たたく雪を見てゐる
入試終え帰りきし子は降る雪の
中にレコード買ふと出で行く
ミニを着て鏡の前に立ちみれば
膝にかくせぬ年と知らさる
....
忘れ物思い出し歩を返し言う
独りごと人に聞かれし居しかも
凍る朝素足に草鞋の修行僧
声あげ行くに襟正したり
断絶と言わるる代に独り居の姑に
電話をすれば風邪ひき
家の建つ前 ....
猫の毛並誉めて帰りの客の背に
急に舞いきし小雪がかかる
じみな服着る吾れに娘が口紅を
つけよと はたに寄りきてぞ言ふ
すっきりとせざる胸うち雪となる
気配の空に雲低くたる
....
走りきて吾が手をとりて飛行機雲
指さす孫は 1才と半
{引用=
(孫=まだものが言えなかった頃)
}
単純に奇声を上げて喜こべる
子等に渇きし心ほぐるる
ねぎらいの言葉を明日はかけるべく
目覚時計の ねじを巻きつつ
奴凧吹かるるさまに幼子が
犬を追い行く 梅雨の晴れ間を
苔庭に ....
木の芽煮る 香を家中に満たしめて
仄な気息に浸る一時
柚の香のたつ厨辺に春の雪
硝子戸越しに舞い上がりゆく
咎むること胸にある日は釘までも
せんなきことに吾が服を裂く
雨の音聞 ....
台湾坊主荒れ狂ふニュース報ぜらる
吾家の前に鳩は遊ぶに
しきたりに鰯匂はせ豆まきて
平和を祈り節分祝ふ
待望の雨はほこりの匂いまで
室に運びて心和めり
みがきゆく茶碗の白さに ....
ためらはず さしかけられて傘に入り
片身ぬらせし君が気になる
足悪き子雀来たり 今朝もまた
待つ身となりて エサをまきたり
枯葉踏む犬の{ルビ足音=あおと}はリズミカル
夕づく公園を ....
隣屋の塀にはびこる つたの青
さみだれに色 尚つやめきし
散歩にと さいそくにくる愛犬の
うったえる瞳に 重き腰あぐ
単純もよきときあると自らと
慰むるとき 時雨の音する
ふれ合いし手の冷たさは言はずして
春雪消ゆる早きを語る
尋ねきし人は留守にて山茶花の
散り敷く庭に一人ごちする
我が裡 ....
1 2 3