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痛みを知ることがなかったら
この愛おしさに気付くこともなかった。
ありがとう
私を好きになってくれて
土のにおい
湿る地を掘りかえし
葉桜の下に約束を
ぬかるみに足を入れ
虫の這う手を雨が流す
汚れても 汚れても
流される季節に
約束すら消えてしまうのかと
深く掘り虫を潰し
緑の ....
きれいな箱のクッキーは
触れると
ぽろぽろ崩れる
シフオンケーキは
握り潰すと
小さくなる
薄荷のキャンディーは食べる気もしない。
お腹の中に収まった
お菓子は
もうお菓子じゃな ....
ひたひたと波
わたしの側を通りぬける雪
布一枚の盾で身を守り
声ひとつの剣を構え
この足はあなたの紡ぐ文字を踏み、
手は己の言葉を振り払う
籠の月は美しいのですか、
声はもろい剣のよ ....
紫陽花色のこんぺいとう
ゆびさきに光る珊瑚の欠片
ひとつ、ふたつ
舌にのせ、届く甘さ
がりがりと噛み砕き
喉を通る苦さ
この身の重さは唯一の持ち物なのか
引き摺る体は傷に塗れ
手には見知らぬ荷が積まれ
この身の重さは捨てても消せぬ
ならば足を切れ腕を千切れ身を抉れ
血は絞れ管を絶て
....
おもいおもいおもい重い、
髪の毛を切って体重をへらして食べたものは全部吐いて
爪は限界まで切れ涙は流し尽くせ
服は脱いで心の中身は叫んで喚いて追い出して
それでもまだ重い
軽くな ....
わたしは握りつぶしたあなたの手を
離れていかないうちにキスをして
目だけで愛しているのだと云うけれど
あなたの中で生きているのは耳だけ
本当は全身でわかろうとしていることを
知っているけれど ....
しんどいのはこれからです。
何度でも落ち込んで、またあたらしい話を聞いて、
立ち上がることができます。
ハッピーエンドで正しい道を選んだ主人公が
これからもずっと、話の終わったあとも
....
美しい双子を前にしてわたしは歌う
二人ともそれぞれ美しいのだが
左の少女の手はとくに美しい
わたしは右の少女の手を取り
左の少女の手を美しいと思うのだが
左の少女の手を取ると ....
青白い手のひらに紅色の月を透かし
斜めにそびえる塔への梯子を探せば
遠くに捨てた金の鍵が森の中できらりとひかる
朽ちた木のように横たわる老婆と少年の
永い恋は幕を閉じ
後に残るは少年 ....
月よ灯を
雪や雫を
白い夜に犬よ這い回れ
長き夢よりの無形の使者
跪けと唸る永劫の王
雪に埋まる娘は白銀の一滴
雨に声を
雲に土を
欠けた月を眼にうつし
一斉に呟く絶 ....
ポケットのなかで指先がふれるのは
少しだけあたたかい きのう
首をかしげながら あしたを凝視して
この距離がどうか
これ以上離れませんように
毛布の中でお祈りをする
....
いちばん最初の傷は眼だった
永遠に塞ぐことの許されないこの傷は
時々誰かを傷つける
瞬きを繰り返して
いつまでも乾くことのない
透明な血を絞り出し
傷は余計に広がった
目蓋の ....
うな垂れたまま空にカメラを向けた
屋上から見えるのはいつも
真っ赤な夕日
今日が晴れだったならそのまま家に帰れた
でも、今日は雪
車のエンジンをかけると流れるのは
いつもおなじ ....
このうすい皮をやぶって たどりつく骨を
ひとつひとつ ばらばらにして
きれいな水で濯いで
そうして
あなたの手でもういちど組み立てて
ぐちゃくちゃと ぬかるみにあしを入れながら歩いてきた
どろどろになりながら けれど汚れるのは靴ばかり
ふりかえると つづく足跡がある
ふかい森からの軌跡
うつくしくない 引きずるよ ....
人形は こころが氷できているから
やさしくなると なにもなくなってしまう
笑ってしまうとこころはゆるんで水になってしまうから
空洞のカラダは さあたいへん
こころをなくさないように
....
大事にしていたものが
じつは壊す理由のできるのを待っているだけだとしても
壊れても消せないことを知っているから
いつまでもそれを前にどうしていいかわからず
目をそらして隠す
あのとき ....
さよならさよならさよなら
本当はごめんなさいが言いたかったんじゃないさよならが言いたかったんじゃない
私が言いたかったのはありったけの罵声と悪口と皮肉
それでボロボロにしてやりたかった
できな ....
化石になりたいのです
焼かれるよりも美しい布でくるまれるよりも私は化石になりたい
何百年、何千年という気が遠くなるような時間を
暗く冷たい土の中で眠りつづけます
そしていつか、
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