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最近入店した笑顔の素敵な男のひと
洗い方は丁寧なんだけど
細長い指先からほのかにただようタバコのにおい

最初は気のせいかと思ったんだけど
どうやらそうでもないようで
せっかくのシャンプー ....
〈好き〉ってなんだろうね




わたしってさ
誰かを〈好き〉なったことってあるのかな

〈好き〉ってね
愛しているとは違うし

意外と精神的なものだったりして

Like ....
本当のかなしみを知るひとは
かなしみのあり様をあれこれと邪推せず
涙で濡れた手のひらにあたたかな眼差しを重ねてくれる



本当のかなしみを知るひとは
ひとの過ちをあれこれと論ったりせず ....
勤め先近くに珍しい衣装を扱う洋服屋さんがある
どんなのかっていうとお笑いの人とかが舞台で着るようなやつ
スパンコールちりばめられた真っ赤なベストが店頭に飾られていて

開店直後らしい午前中の早 ....
私って口下手過ぎるよね

神田東松下町にある小さな問屋さんで面接受けたあと
どこをどう歩いてきたのか
気がつけば聖橋の上から鈍く光る中央線の鉄路を眺めていた

ここから飛び降りたとしてもね ....
前職を辞めた理由はって面接で問われてもねえ
誰もが正直に答えられるのだろうか

いやらしい上司にセクハラされたからとか
お局様に村八分されましたとか
かくかくしかじかで辞めましたなんて言える ....
私のおなかの上で赤鬼みたいな怖い顔をして
額の汗を拭おうともせず
力強さこそが総てと容赦ない恥骨の痛みに涙を流す




さきほどまでの赤鬼が嘘のような寝顔
横になって見つめれば不思 ....
お嬢さん、ハンカチ落としませんでしたか

なんか懐かしいよね

それから腕時計しているくせに
いま何時?とちゃっかり左手首隠しつつ尋ねてみれば

そうねだいだいね♪

あの頃のあなた ....
自分自身を型にはめようとしているのかな
知らず知らずのうちに
「ねばらない」
そんな思いに捉われてしまう

誰かにそそのかされている訳でも
強いられている訳でもないんだけどね

つまる ....
お母さんのこと嫌いなの?

携帯電話でのやり取りを気にされたのか
調布駅の改札抜けたところで、由紀さんが心配そうに尋ねてきた

母のことかぁ、どうなんだろうねぇ
好きとか嫌いとかそんな物差 ....
あかぎれた手の甲は膝のうえに重ねたままで
ふぅっと深くため息をついてみる

シャッターを下ろした売店脇の柱に掲げられた時計は11時55分過ぎを指していて

どうやら今夜もフェリーは出航しない ....
ジュリアーノ・ジェンマって俳優が好きだった
目深にカウボーイハット被り腰のコルトに手をやる刹那
呼ばれてもないくせしてサボテンの根元に転がる根無し蓬がわたしだった

ベッドのなかでもブーツ脱が ....
あのね

とりあえず声に出してみた
答えなんかでた訳じゃ無いし
そんなものはなから無かったりする

えっとさぁ

次のことば続かなくて
それでも携帯の画面へ逃げ込むのだけはぐっと堪え ....
あなたによく似たひとだった

人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた

これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した

その ....
そそくさと去り行く夏の記憶を確かめようと
深緑色に澱むお堀ばたを訪れてみた

色とりどりのウエアでストレッチに余念の無い肢体は眩しく
人恋しさを見透かされてしまうようで
遠慮がちにちょっと離 ....
飼い猫と捨て猫の違いぐらい
こんな私だってわきまえているよ

あなたに甘えられなくて
ミカン箱の中で過ごした一夜

大輪の花火きれいだとあなたは言った
そんな花火になりたくて
この街へ ....
なにやら窓の外がやかましくなった
「今こそ」とか
「ともに」とか誰もが叫んでいるような

ここにしゃがみ込んで久しいし
一見自由そうで実は窮屈な姿勢にも慣れっこ

目を瞑っていれば何が起 ....
大きめなバッグにぶら下げた薄桃色のバッジが揺れている
ちょっと誇らしそうで
それでいてたわいもない気恥ずかしさも感じられ

膨らみかげんにチェックをいれてしまう

どれくらいのひとが知って ....
どうやら苦手なものに好かれてしまうらしい

人前で話すのはいつまでたっても苦手なままなのに
旧友の結婚式でスピーチを頼まれてみたり
不得手解消と中途半端な意気込みで卒業した英文科の呪いなのか
 ....
父が亡くなっても泣かなかったくせして
MJの死にはわんわんと泣いた

そんなものだよね

近くて遠い悲しみと
遠くても近くに感じられる悲しみ

人生のアルバムから今まで生きてきた記録が ....
傘はどうしたの?
由紀さんに言われはじめて気づいた

昨日買ったばかりの雨傘
ガーリーとは思いつつも華やかなレースに一目惚れしたんだよね

教室に置き忘れたのじゃ無いだけは確かなんだけど
 ....
口喧嘩したとしても
仲直りの機会とか窺うでも無く
当たり前のように手を貸してくれる

たとえばそれは
洗濯物でふさがった両手のかわりになってくれたり
ちんちん鳴り出したやかんをコンロから下 ....
私とはひとつ違いだった
先生の評判を聞きつけて遠方から通ってくる
いわばミーハーな生徒さん同士

どちらからともなく話しかけると
すぐに古くからの友だちみたいに親しくなって
いわゆる「気の ....
パン作りに悪戦苦闘する教室の扉をそぉっと開くと
可愛らしい眼でこちらの様子を窺いだす

仲間外れされているとかの感情より好奇心が勝っているようで
親指を口に含みながらきょろきょろしてる
手足 ....
糊の効いた藍染めをくぐり抜けると
石鹸の香りがいらっしゃいませと迎えてくれる

散歩の途中でみつけたお風呂屋さん
モクレンの香りに誘われて迷い込んだ小路
朝夕通っている駅前通りとはさほど離れ ....
このところちょっと体調悪くて
なんにしても
弱気がちな自分に気付いてみたりする

元気なときなら
生になんて執着しなくて
潔い
そんなことばの良く似合う心模様だったはずなのに

具合 ....
宅配便の到着を知らせる呼び鈴に立ち上がると
私の下半身を跨ぐように放屁ひとつ
あけすけな音と不摂生な臭さにパタパタと手にした雑誌で扇ぎながらも
これが夫婦ってことなのかと改めて考え直すまでも無く ....
よっこらしょ

そんなことばが口癖となった
ひとしきり身の回りの片づけを終えると
臨月の大きなお腹を抱え物干し台兼用のテラスへ這い登る

白いペンキを塗り重ねた木製のデッキチェアに身を委ね ....
ひとの気配に気付き上体を起こしてみると
逆光に髪の長いおんなの姿を認めた
それがあのひとの妻美佐子さんとの最初の出逢いだった

彼女について何かとあのひとから聞かされていたのと
私に用事があ ....
あの上り電車で何本見送ったことになるのだろう
別に数えている訳では無いし
有り余った時間を費やせればとストールの毛玉など毟りながら
外界と隔絶された待合室の硬いベンチに腰掛け
あの夜の顛末でも ....
月下美人さんの恋月 ぴのさんおすすめリスト(62)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
かおるひと- 恋月 ぴ ...自由詩27*11-5-9
託すひと- 恋月 ぴ ...自由詩24+*11-5-2
本当のかなしみを知るひと- 恋月 ぴ ...自由詩42+*10-7-26
待ち続けるひと- 恋月 ぴ ...自由詩24+*10-4-26
聖橋のひと- 恋月 ぴ ...自由詩21*10-3-15
理由(わけ)ありなひと- 恋月 ぴ ...自由詩24*10-3-8
さくら坂のひと- 恋月 ぴ ...自由詩33*10-2-8
尋ねるひと- 恋月 ぴ ...自由詩19*10-1-25
縛るひと- 恋月 ぴ ...自由詩24*10-1-12
知りすぎたひと- 恋月 ぴ ...自由詩15*09-12-22
フェリー乗り場のひと- 恋月 ぴ ...自由詩18*09-11-17
ジェンマなひと- 恋月 ぴ ...自由詩31*09-10-13
気付かされたひと- 恋月 ぴ ...自由詩22*09-9-22
流れるひと- 恋月 ぴ ...自由詩27*09-9-15
円環のひと- 恋月 ぴ ...自由詩20*09-8-25
見つめるひと- 恋月 ぴ ...自由詩23*09-8-3
線上のひと- 恋月 ぴ ...自由詩20*09-7-28
さするひと- 恋月 ぴ ...自由詩16*09-7-13
好かれるひと- 恋月 ぴ ...自由詩30*09-7-7
問えぬひと- 恋月 ぴ ...自由詩15*09-6-30
はねるひと- 恋月 ぴ ...自由詩15+*09-6-23
憎めぬひと- 恋月 ぴ ...自由詩23*09-6-16
夢しゃしん- 恋月 ぴ ...自由詩20*09-6-1
夢あそび- 恋月 ぴ ...自由詩23*09-5-19
ぷかり- 恋月 ぴ ...自由詩33*09-4-20
ららら- 恋月 ぴ ...自由詩28*09-4-13
ふだんのひと- 恋月 ぴ ...自由詩21*09-3-23
潮騒のひと- 恋月 ぴ ...自由詩30*09-3-17
修羅のひと- 恋月 ぴ ...自由詩25*09-3-8
臙脂色のひと- 恋月 ぴ ...自由詩26*09-3-1

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