中国人の女。
そいつに今、いいところを舐められている。
ねばっこい感触が先端から根元までを包み込むように、もしくは吸い上げるように、長い間続いている。
高原は遥か遠く、中腹だけが果て ....
清掃のアルバイトをしながら
陽射しに当たりすぎると疲れるのはなぜだろうとふと思ったとき
太陽は
すべての生命から養分を吸い取って存在しているのかも知れないと閃いた
光のような触手を俺た ....
子供達が非常に嬉しそうなクリスマス
恋人たちが非常に楽しそうなクリスマス
彼らの喜ぶ顔が見たいから
私は今日も七面鳥を殺して返り血を浴びる
拭っても拭っても血の匂いが取れないんです
奥さん ....
不安な気持ちでたまらない、と
夜、入院している父から電話があったので
病院まで行く
今日はリハビリ頑張りすぎて疲れちゃったんだね
そう言って落ち着くまで父の頭を撫でる
その帰 ....
電話回線の中をひとり歩く
途中、水溜りのような海がある
工事のためしばらく混線する恐れがあります、と
電話会社から通知書が届いたばかりだった
仕方なく簡単な水遊びをする
ふやけた体 ....
今日も現場で草むしりをした
なぜ草むしりをするのかを上司に聞いたところ
みっともないからだそうだ
お客さんが来たときにみっともないからだそうだ
アメリカやフランス発で
雑草の効果的な生か ....
バルコニーで乱交がしたい人はこの指とまれ
そうして人差し指を差し出したわたしは間もなく
重量に耐えきれなくなったバルコニーの崩壊に巻き込まれ
バルコニーで乱交をしようという夢を果たせぬまま
瓦 ....
水槽を抱えて
列車を待ってる
水槽の中には
やはり駅とホームがあって
幼いわたしがひとり
帽子を被って立っている
ある長い夏の休みの間
ずっと被っていた帽子だった
水の中もやは ....
男の腰に食らいついていたとき
わたしは自分がひとさじの情けを持ち合わせているのだと思い知る
穴
に成り上がれ
私が私であるなんて
脳と性器とをひとすじの光で繋げるようなものだから
ただ名づ ....
・
夕飯のあと
残した刺身を生姜醤油に漬けて冷蔵庫へしまう
こうしておいて翌日に
焼いて食べると美味しいというのは
母に教わったことだ
そういえば結婚して引っ越す当日に
母がお餞別と言っ ....
言葉はなく、光
それは
すべての
不能、わたしの夜よりもきみの
夜が、より存在する
ように、もうそこでは
何も見ることが
できないように、何もすることが
できないように、言葉は ....
朝起きて、俺
ヘビと戦った
その日はとにかくひどい洪水で
俺の大事にしていたポシェットも流され
銀行などの床も水浸しになり
家の冷蔵庫は野菜室まで水が入り込み
それでも、俺
....
ひらがなを読みはじめたころだ
ぼくは母と一緒に千住の街を歩いていた
街角の壁に貼ってある
映画のポスターには男の人と
女の人の顔が描かれていた
そこに読めない漢字
「あのじはなんとよむの」 ....
うまくうたえないのよ
いとでくちをつられたきぶん
にぶいじゅうせい
にぶるかんせい
もっともっとつめたくなりたいのに
とがっていたいのに
あつさでゆるくなっていく
ちゃいろのあぶ ....
7マスたりないので
きみのあましたマス
目をぼくにください
___
ここはきゅうくつね
そう言って彼女は原稿用紙を一行ぶん きりとって
じゃばら状に折りたたんで差しだした
....
01
図書館にパンが落ちていたので男は拾って食べたのだが、それはパンではなくムカデの足だった。
02
図書館の大砂漠で遭難した司書は一週間後に救助され、その翌年には大統領になった ....
鉢植えは
水をやり過ぎて
いつもだめにしてしまう
気持ちが強すぎるのだろう
あなたのようにはいかない
虹のような光沢を紡いだ糸車が
カラカラと終わりを告げても
流れる水のなかで
目 ....
5歳の僕は風の中にいた。
底の町から吹く風は暖かかったが、
上の町から吹く風は冷たかった。
底の町から吹く風を顔面に受け止めて
膨らんでゆくと
僕は虫になって舞い上がった。
谷の反 ....
父のベッドのところまで
凪いだ海がきている
今日は蒸し暑い、と言って
父はむくんだ足を
海に浸して涼んでいる
僕は波打ち際で遊ぶ
水をばしゃばしゃとやって
必死になって遊 ....
雨がまっすぐ降っている
女がじぶんのために着飾っている
お金はひとをすこし幸福にしてくれる
お花が時空の先端で揺れている
あなたの風邪が治りかけている
生物も無生物も
....
この世の全てに
いくつかのちからがあります
弱いちからと強いちからと
まだ見つかっていない重力と
あとは、
みなさんが考えてみてね
と去ってしまった先生、
僕らはうなずいたままです ....
きみが運ばれて
いった、きみが
愛したものも、きみが
愛さなかったものも、ともに
運ばれて、断絶した
彼方とは
断絶そのもので、きみは
そこで
跳躍する
....
光が生じた、刻々
きみが
跳躍するのが、見える
のは
ここで、死と同じ速度で
きみが走っている
ごぜんにじ
よだれをたらしてよろこんでる
どたばたあしぶみして
きせいをあげて
きんじょめいわくだってかまわない
おとうさんとあそびたくて
おきてたんだね
ねむるふり ....
花が咲いている
花の中に海が広がっている
散歩途中の
人と犬とが溺れている
救助艇がかけつける
降り注ぐ夏の陽射し
最後の打者の打った白球が
外野を転々とする
ボールを追っ ....
少年だから
膝に母性をはばたく
せっかくの行進なんだから
兄ちゃん
どうして内側にしか
壁はうまれないだろう
か って
なにで
できているか解からない
からだ
折れてしまっ ....
六畳に敷かれた万年床に横たわって
彼女は幸せだと呟いた
彼女の彼氏が会社に向かうのを
俺と二人で見送った後に
彼女は六畳に敷かれた万年床で
幸せだと呟いた
その日はセックスはしなかった ....
死んでいくことだけが
残された
夜、最後に何を
わたしはしたの
か、分からない
まま、いつの
まにか
閾を越え出ていった、夜が明ける
はるかまえ
きみは目ざめる、きっと
....
新しいドライヤーだけれど
白くてやわらかい
両輪がふたつに割れる
夢に見たんだよ
耳の後ろの痛さを
口ばしる
側に
置いておいてくれる人の大切さで
判ろうとするのは
恥ずかし ....
掌で階段を育てた
せっかく育てているのだから上ろうとすると
いつもそれは下り階段になってしまって
悲しい人のように下の方を見ていた
その隣を弟は快活に上っていって
一番上まで行く ....
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