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ニッキー・クヮイェット
ひとこともしゃべらず
命綱
金槌で固定
僕たちの前世を占って
僕たちの明日を葬った
君が見つけた隠れ家に
僕をかくまおう
正義の定義
僕たちは
....
女の子は春に生まれました
桃色の小さな小さな靴が贈られました
風が若葉や清楚な花の匂いを運んできました
女の子の母親は六月がいっとう好きでした
雨が降ると木々や庭の草たちが
歌を歌うから ....
新しい人が来たので
かじかんだ指を暖めていた子は
背中をまるめてそっと
席を立った
それは
あまりにも静かに行われたので
だれかが席を立ち
新しい人が座ったことに
だれも気づかなか ....
弟は人に触られるのが怖かった。触られると電気のようなものが走るし、よくないものがうつる気がしていた。ただ、兄だけは平気だった。
弟が足をくじいて一人では不自由した時、兄は黙って弟の支えとなってやった ....
秋晴れの空に向かって窓が開いている。本棚ばかり大きい部屋には姉と妹。
妹は死んだ小説家の本を取り出しては「これは手」「これは肺」「これはくるぶし」と姉に教える。小説家は自らの身体と臓器をそっくり文字 ....
もう
ここは冬
になってしまった
日は短くなり
昼からすでに夜の気配がする
けれど迷い人よ
冬のせいではなく
この森はずっと昔から
喪服の切れ端のように暗い
鳥は言う
「さ ....
カシッ
くるみの殻
秋の日差しのなか
乾いた破裂音
くるみの林
赤や橙に色づいて
かさかさ揺れているかな
ひと吹きでぱらぱらと
涙のようではなく
思い出のようでもなく
....
嘘がとりでから出てきたよ
えんぴつで○を描いたよ
じゅっことはんぶん
もうちびて描けない
嘘はじゅういっこ出てきたよ
みんなおんなのひとで
みどりやあかのドレス
あおやきいろのくつ
....
友達と二人で
山でキャンプをした
山といっても中腹まで車で登って
キャンプ場にテントを張っただけ
晩飯はカレー
キャンプといえばカレーで
これを食べるためにキャンプするようなもの
か ....
本屋へ行った帰り道
公園に入った
ぐるっと公園を囲んだ木が
濃い影を作っていて
意外に温度が低い
真夏の午後二時で
誰もいない
セミがやかましい
水飲み場のあたりは水びたしで
....
朝起きてしばらくしたら驚愕しました。というのも両腕と首にびっしりと変な赤いぽつぽつができているのです。夢ではたまに、足にびっちり黒いミミズ腫れができたり手が蟹になったり背中がうろこむしたりするのですが ....
海の匂いって何にも似ていなくて特別
波の音って何にも似ていなくて特別
そんな特別な海に
会いに行くだけで
何か一仕事終えたなって気がする
海に行くって
コンサート会場に行くようなも ....
湖にボートで乗っかり
ゆっくり漕いでいく
メロンゼリーを思い出す
地球の穴にメロンゼリー
ボートのスプンですくう
目の前にかわいい女の子が
座っていたらいいなあ
僕が冗談を言って ....
昨日喧嘩した彼女と小川へ
蒸し暑い中で何時間
喧嘩したっけ
汗をかきながら
小川は澄んでいて
透明な絹が川底の小石をなでているみたい
彼女の足の指はまるで
ボタンに見える
きれいに ....
たった今大きな丘を越えてきた足を
くるぶしまで持ち上げてみせた
割れんばかりの音とともに地面はほんとうに割れてしまった
にょっきり生えるこころもち汗ばんで
スカートのすそをつまんでは離し
つ ....
ごがつのかぜ、ごがつのかぜ、
さあ目を閉じて
さあ目を、
開いて
すー
はー
空から、山から、やってきて
ほほを撫でて
河童が顔を出して
また ....
母が心を病んでいると医師に言われてからはや5年が過ぎようとしています。
その1年ほど前から軽うつと診断されて、薬を飲んでいたのですが、どうもこれは「アダルトチルドレン」とか「中年危機」の症状が強いと ....
井戸水を拾って
足音をしのばせて
どうか誰にも
誰にも気づかれませんように 想いを、想いを、想いを
つるべを握って しのばせて
雨よ、雨 降るのは花 ....
ゆうろさん料理をしましたか
ええ、しましたよ
左手 お野菜洗ったので冷えてあかい
右手 あついお鍋を見ていたのでももいろ
今日はどこで
小鳥の巣箱よ
小さなやかんに小さなお鍋
風邪ひいた ....
海がそっとまぶたをとじる
青い響きの中
かもめは
追撃機のようにまっすぐ堕ちた
手のひらにすくう砂
ランプの芯のようにあたたかい
ぼくは見上げ
あたたかいのは君の手だと知る
浮 ....
全てを飲み込んで許し
傷つけ吐き出す
砂
片足がほろんでいる男の
肘にぶら下がる女
際限なくせばまり風にうずまく砂は
常に何かを形作ろうとし瞬間
走るように崩れ去り
うめきすら ....
駅へ向かう道すがら
はいいろをした四本足の生き物が
とぼとぼと歩いていた
( )駅では
列車が遅れていることをみんな知っていて
でも
みんな口をつぐんでいた
恋人たちは
別 ....
て、手を伸ばして
やわらかくてをのばして
その、影
ぼくらに届いて
君は
ぬりこめられて
たいよう
やさしくしずみこみ
耳のあな
つぼみのように閉じ
ふとんを頭からかぶ ....
酔っ払って
海岸に
遠くの音
ひずみの向こう
波は立ったまま
立っている
寒いのは
恋人を連れていないから
あたたかい手を差し伸べる人を
遅くまで起きていても
誰も叱らない ....
幸運の女神は前髪しかないって
どんな髪型だ
女性として
いかがなものか
というのも今
詩のしっぽつかみ損ねた
また
行っちゃった
詩って
あの、その、あれなあれ、だから
タ ....
もちろん分かっていたの
もう、さようならなんだっていうことは
あんなに熱くはしゃいでいたのに
最近はすごくよそよそしいし
ねっとりしていた風も
そよそよ
蝉も鳴かなくなって
ほんとう ....
明け闇に稲妻
白い栞のように
風は慌ててページをめくる
朝を探している
朝
井戸につるべは落とされて
鏡が割れるように
宝石が生まれるように
しぶきは上がる
あたたかい頬 ....
いつか、
絶対に来ない
来ることのないいつかへ向けて
わたしはリンゴを収穫する
重たい実をぷっつとハサミで
ずっしりとしたひんやりが手に
枝はお辞儀をして
チャオ
それ ....
白いプラスチックの大きな箱の中で
さっきから火事
もうもうとグレーの煙
激しい咳き込み
箱の下からは
ちょろりちょろりと流れ
とても清そう
ひとくち飲んでみたい
箱の上空では
....
どうして
約束を
結ぶと言うのだろう
つないだ手は
結び目のよう
雨に濡れると
もっとかたくなる
強くひっぱって走った
雨の檻つづく
強くひっぱられて走った
かたく
....
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