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春か冬かと疑う
まだぬくもりが指先にかからない
冷たさのはざまの或る一夜に
目覚めの雨は降る
膨張した外気温は子が急に大人になったよう
草花は気づきの艶をほんの少し
枯れ葉のうちか ....
きのう
電線の張替工事があって
声が途絶えた
それからというものの
すずめの親鳥が
トランスのあたりをちょろちょろしている
巣は
除去されていたよ
それから
ふだんはこの街にいないは ....
最後の日に神がのたまわり文字を走らせる
全ての血と肉や
まだ見ぬ命はあらゆる予言を生むだろう
すべては若者となり
すべては具現化し
すべては老いぼれとなり
やがてふやけた夢を見るだろう
....
はたしてこれは幸せなのか
休みの日には朝にどか食いをしておなかをこわし
追い打ちをかけるようにビールをあおり
家のことはそこそこに
気がつけば一日中NHKを見ている
いつもなら国会中継の日に ....
甘える
それは奮い立たせる刺激がない、もしくは、そんなもの、要らないから
私は、何かになろうという気持ちがないし、あなたは
病気を治し、社会へ戻ろうという気持ちがない
似たようなふたりが
....
昨晩のメキシコ映画を熱く反芻して屋台の列に並んだものの
ずいぶんと待たされた でも手作りだから仕方ない
5月は近い
風は雲を掃いて頂には太陽
匂いに高揚
じり り
り
り ....
逢瀬を待つ
隙間には
悲しみを選んだ欠片の屑
触れたら
傷を負うよ
見えない姿で
聞こえない言葉は
左隅の
冷えた空気を
支配する
逢瀬を待つ
時には
母のない子の ....
知らせてね
草臥れた肉厚の花びら
caeruleum
吐瀉物を食む鳩を食んで
仲間になりましょう
世界は素晴らしいと小学校で学びましたね
ほら もう弛緩してる
三日月型の不良視界 ....
さよなら
東口にて
ひかりの複線は尾を散らし
僕を底知れぬやみへとおいてゆく
風つよく
背筋から心臓へ
夜更けにはきっと雪になるだろう
新月の雪だよ
青白いはかなさだ
照ら ....
ふるさとは好きだけど
ふるさとにはないものがここにはあるの
感じたくて触れたくてしょうがないものがたくさんありすぎて
そして消える時には
好きな人たち好きなものたち好きなすべてに囲まれていたい ....
電線のすき間に光る欠け月
本当の私は いつも煙草を手に思いを口にしてた
風のあたたかさや
寒さ
楽しさ切なさを
今朝の風はあの日に似ていたよ 悲しみの模倣のように
冷たく
日差しゆるく
....
夕やみ歩く猫
のし
のし
人ごみと並んで歩いては
立ち止まり
都会が鼻歌まじりに風を歌うのを じっ と聞いている
夏はまだ長い
今日もずいぶんと蒸していて
建物からこぼれる冷気とごちゃ ....
夏の日差し
夏の青
真っ白な街真っ白なふるさと
だれもいない街
あれから悲しみは痛みに変わりましたか?
痛みを知りましたか?
雪の記憶の声
いえ
ひとりぼっちでただひたすら歩く ....
私の母は奇跡を起こした
汚染された体でふたりも子供を残しどちらも大人になった
母は最大の炭坑の町で生まれ育ち
彼女の父は炭坑夫で体中を癌に冒された
彼女のきょうだいもみんな癌に冒された
きょ ....
床
いっぱい 散らかしたビー玉
転がしてはじいて
赤いのひとつ なくしちゃった
甘い甘いハート形のチョコレートは真白なお皿に安置済み
で
また 転がして はじいて
青いのが そこに
....
庭に舞うチンダルブルーの鱗粉が日に灼かれて
ちりちり して
なんだか今日は風がうるさいなあ
小さい頃の家の庭にも
同じのが飛んでいて
つかまえようとしてもひらひら
ひらひらと
あ ....