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足は
深い草の中だった
踏んでいるつもりで踏む足音は
深く柔らかな草の中からだった


うらぶれたいだなんて、高架下
うらぶれたいだなんて、アスファルト
いつからか ....
冷たい砂浜に、誰か
体で泣いている


空生まれの灰が沈んできて
波へ死んできて
折り畳まれてゆく、その灰の
海はノイズだ


今は、眼を閉じて
耳だけの ....
秋に
葉と葉が
まだ生き合っている
その音が、して
その影と影が、あって
その匂いまでが、生じていて


生じては離れてしまうそれらが
見つめ合っていると ....

の奥
の枝葉
の枯れ屑へ
足音の一人分を 
沈め続け


祈り
の指を 
耳たぶ一人分に
勘を頼り当てやるも
冬に備える温度の一人分も
何処にも少しも ....
何処かの 夕暮れの垣根の
蔓の終わる姿の 夏が
無残に 口をきけなくなっても
目を逸らすだけでは どうせ足りない為
わたし 見つめたのです


西向きの 軽トラックの ....
葉擦れの赤錆は
はじめは
軽い混入だった


冷たい赤い陰影を増してゆくのは
葉擦れの色として微かに現れた感情の
冷たいことを、赤いことを
葉が何度も抱擁するからだ


それでも ....
雲の
静かな暴走
高い青へ青へ
ゆけない、わたしの上に
上空があって


午後、
稲穂というよりも、風だった
肌が痛いほどの
午後だった、秋だった
その風 ....
羽虫の身震いが
きらきらしている、音
夜の
羽虫への
局地的な雨上がり、のあと
雨上がりの羽虫の
きらきらの
身震い


わたしが
裸の少女のようであるときは決まって ....
どうしても肌寒い蟋蟀質の摩擦によって
むしろ冷却されるわたしたちは概ね
低温のまま一生を終える腹部だ


脆い部分からアルコール消毒されてゆき
ついには殺虫されてしいんとす ....
四肢を垂らし立ち尽くせば
卵は割られず何も加熱されず
窓硝子の北向け北に閉じ込められ
朝は有耶無耶のまま凝固した
無臭のお皿だけが、仄白い円形の
仄白い、せめても ....
空の瓶が
割れない、音
そして
割れる、音
そして
割れた、音


さ、ゆう、


往復の波で揺れるのは
左右の、
暗い曲線の、
たったふたつの、耳
 ....
しっとり、これは
濡れるために、素足


群れる草の土に冷たく踏み入り
行き場を失くしたことのない、
何処にも行かない、素足でした、濡れるために


こっそり、あれは ....
窓の
繊細な網目を透過し
すらすらと寝室の私の乳房へ浸透するのは
透明すぎるから、透明すぎるからです
空気中の夜
に含まれる鈴の
リ…
その中には、鈴、それは
リリ…
 ....
雨は降っていなかったけれど
カラカラ
空き缶を蹴った音はした。
爪先が乾いた咳をしたようだったけれど
本当は内臓みたいに湿っていた。
缶の暗い口から
暗い液体がアスファルトに垂 ....
 生まれてはじめてお付き合いをした男性が結婚したことを知った。当時は男性というよりも男の子だった。愛読書だと言い、『風の歌を聴け』を私にくれた。そうして自分の為に新しい本を買っていた。今も愛聴 .... 第三公園にて
子供たちの遊びがバタリと終わり
夕刻が全く遊びではなくなったころ
通称・動物公園、を
理解できずに正しく第三公園と呼んでいたら
わたしの待ち合わせだけが上手くゆかないまま
わ ....
残暑が、高らかな色彩吐露を
自ら慎みはじめている
少しでもぶり返せばそれは
奇声、とひとことで片付けられる


薬を拒んでも、夏は引いてゆき
もう夏風邪とは呼べない何かと ....
未だ硬い、既に確かな
夏でもない、秋でもない、果実で
深緑は
瀕死であることを理解している


見上げれば、ひとつの一秒が
高速で遠のいてゆく
わたしは、何に対しても連 ....
夏祭りの夜へと
手を引かれた私の
耳たぶ、薄く
汗の艶、熱く
提灯のように
風に赤らむことを
しっとり許された
夏祭りの夜に


石段の高みへ
鼓動と鼓動の、 ....
頭の中
遠い野原
夏の粒子がさらさらと
光の加減でモザイクを並べる
都合の良い再生
無意識の補修が優しく波打つ


振り向いた少女のワンピースは
夏じ ....
しっとりと伏せられ、そのまま
こと切れたあとの、薄青い、薄暗い
目蓋のような擦り硝子を前に
決して、そこから
目蓋なんぞ連想しないと思い直す、おんなの
見下ろす、白百合の ....
細胞の輪郭は
発熱に適した形なの ね
あなたの音源との距離感は
可笑しくて悲しいけれど
あなたの感覚器の滑稽な分離も
可笑しくて悲しいけれど
さらに 伝導にも適した形なの 
 ....
扉が 開いたらば
扉が 閉じた
そうして
扉が 閉じたらば
扉は 開かない


誰かのシャツの白の残像は 
どうして これほどに
光に還元されがちなのだろう
な ....
夏物の花柄が薫ったのは
パタパタと羽ばたくような助走の後
遊具を飛び越える、わたしの脚の発熱を
自由のきく緩さで包んで縛って守っていたから。
少女が、少女であれば少女あるほ ....
だって
どの午後にも
煩い色彩がありました
静けさは無く
とりわけ静かな白は無く


ぬるい絵の具にわたし
どうしたってなってゆくみたい、と
教わらなくても、 ....
光の
光りはじめと共に
鳥が始まる
朝の


あと、少しなんだ
四角い窓枠がなければ、人間を忘れられる
身体がなければ、わたしを忘れられる


朝の
鳥が始 ....
わけもなく
海に行かない


青ざめた
この肌の下の水脈に海の素質があるとしても


夏において
情熱的な、情熱的な
世界中の観察眼と観察眼が合い続けているとし ....
苦しげな雷鳴に飲み込まれ
灰色に溶けてゆく午後の中
向日葵の黄色の彩度が
浮いてしまっていて
それでも、向日葵は
いつまでたっても泣いたりせず
ああ、どうしてなの
滲んで ....
灯りを付けない夕刻の
人のいない部屋の沢山の影が
角からふやけて
海になってゆく、深い、暗い
海になってゆく


肺に溜まる海って
苦しいよね、でも
呼吸と引き換えだ ....
蹴った石の音が
朽ちながら
からから、石を乾かしてゆく
腕に抱くものが欠けている
そっと、歩行の動作に紛れて探れば探るほど
空間は何処か冷静だ


石は乾き果て
気が付けば音も、 ....
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