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新雪を犯して歩む足跡が黒く
続きて物語めく
人走る足音ひびく小夜床に
大寒と言う静けさかとも
蓑虫が瓦に下り風花に
吹かるるが見ゆ窓に寄るとき
胸のすく音させて割る うす氷
....
峡の宿に熱き甘酒すすりつつ
硝子戸ゆすり風移りゆく
屈託のなき表情に寄りてくる
見知らぬ土地に犬の親しもよ
海過ぎて つづらの道にバスは入る
枯れし芒も見る度の味
枯れ落葉 ....
洗剤より生れしシャボン玉の遊泳を
掬えば窓に にげる虹色
シャボン玉掬はむ姿勢 すかされて
運動神経 鈍る年かと
俄か雨に荷物ぬらして声もなく
ちり紙交換 信号に止まる
....
驟雨きて あわてて上る物干に
後より夫も手助けにくる
クレーンにて運び込まれし銀杏の木
菰に巻かれて道に横たふ
北山は時雨るるらしく雲たれて
行く手に燕低く飛び交う
散歩より帰りし犬の足を拭く
吾が顔のぞき されるがままに
くちなしの{ルビ香=かおり}ただよう くりやべに
千日紅の赤が寄り添う