揺れる、
ということを
幾度も揺れながら
風景は、
まったくとおい
わたしで
あった
と
えがかれてゆく、海
まっ白なのに
それはもう
古いかげ
波 ....
あの時
「ごめんなさい」と言えなくて
けれどもその後
勇気を出して言いにいったけど
君はもう帰ってしまった
あの時
「ありがとう」と言えなくて
けれどもその後
がんばって言おうとし ....
閉めっぱなしじゃなくて
たまには窓を開けて
空気の入れ換えをしようよ
そうすればなにか違う発想が生まれてくるよ
だから窓を全開にして
外の空気を吸ってみようよ
あなたと 命を分かち合う 夏だ
二人で出そうとした 文芸誌
この夏の熱気に溶けてしまった
文化祭のため夏休みを燃焼させた 八ミリ映画
これが あなたの遺影
あなたのスナップ写真
こ ....
な ぐ り...
名栗村 そして 澤
やみ夜を 求めずとも えられる
その 名まえを 記す ことは
もはや うたの なかの 出来事
うたに 遊ぶとき それは ....
埃をかぶった辞典を開いて
君に伝えたい言葉を探してみる
学のない頭から出てくる言葉は
ありふれた簡単な単語ばかり
君を勇気づける言葉を知らなくて
根拠も言えず「大丈夫」を繰り返す ....
自由な蝶が 僕を超えて行く
ああ また夏が来るんだ
羽ばたく速度を上げて 僕を超えて行く
ああ 切ない日々に 刹那の記憶を 忘れられない
いまがいつかわかっているのか
6月といえば、日本は全国的に雨季だ
雨というだけで憂鬱で、湿度は高く、足元は危ない
どうしてこんな時期に、しかも、わざわざ選んでまで
― ....
子沢山の家に
末っ子の鼻垂れ
多分食べていると思う
かんでもかんでも出てくる
腹をすかせ
食べ物に飛びついてくる
生存競争
お姉ちゃんがおしめ替える
朝のトイレも大変
とにか ....
一輪の花が咲いている。
この子は私、頑張る私。
風に吹かれても人に踏まれても、
それでもめぜずに咲き続けようとする。
この子は私、
頑張っている・・・私。
とむらいの儀式には
いろいろあるらしい
風に流したり
星に浮かべたり
鳥についばまれる
それも自然だ
骨を
石に混ぜて焼く
というのもあるらしい
鈴にして欲し ....
本当は分っている
だけど分らないふりをして
変人を装っている方が
特別な人間だと勘違いしていられる
本当に分ってない
だけど分ったふりをして
周りに合わせている方が
寂しさを紛らわせ ....
ウチの近所のセクシーじいちゃん
あの年齢で囲碁、将棋、ゲートボールから
手芸、短歌、パソコンまで
ありとあらゆることをこなす芸達者なのです
この ....
動きが止まりそうで 怖い
僕はまだまだ動いているうちにやらなければならない、
そんなものしか抱えていないのに
止まったら駄目だ
止まっては駄目だ
初夏の日々
夜に溺れそうな ....
・
女子高生のルーズソックスの中には
何が入っているのだろう
はるか昔
恐竜が生きていて
まだわたしが女子高生だったころ
何度もルーズソックスを履こうと試みたが
あの絶妙なふくら ....
まばらなようで
まったく同じ
涙は
ひとから流れゆく
雨のぬくもりを
手探りつづける日々と
かぜの横顔について
語りあぐねてみる日々と
だれか
上 ....
みんなが川で遊んでいた
川の回りに落ちている
材木とか箱とかを拾ってきては
川に流して競争していた
次の日も
みんなは昨日と同じように
草むらの中で下を向いて歩いては
水に浮かぶもの ....
何を植えるかなんて
考えもなしに
掘りおこした
庭のすみ
やわらかい土の頂きに
雀が降りて
ころころと、まろび遊ぶから
つい、嬉しく振り返って
あの人の面影を探してしまう
幸 ....
「いつまでやっているつもりですか?」
ただのアドリブ
ボクの気持ちなんて
その成分に
含まれていない
「どこから来たんですか?」
ただの寝言
全く意識なんてない
そ ....
青白い紫煙の行方を目で追う
あなたは煙草をくゆらせながら
目をとじて流れる音楽に聴き入っている
ゆっくりとした甘めのバラード
暗黙の了解の時間・・・
わたしはあなたとの距 ....
それから百年後心は平和になり
あなたはまた洗濯物を畳みだした
だからもういいと思っておきたい
探し物をしていたら
押入れの奥から出てきた
学生時代のルーズリーフ
こんなものがこんなところに
物理のノートだろうか
数式やらグラフやら
長々とした漢字による専門用語やら
今では何が書か ....
小さな埠頭に飾られた
裸婦像のデッサンは
優しい夜を映していて
僕はそれを見るのが好きだった
そのデッサンには
味のしない名前がついていて
僕が生まれてから死ぬまでの間に
たった三人 ....
一人ぼっちだ
花々の中で
麦畑を風が渡って
そこに点在するポピーは
そのひとつひとつが
恋で
黄色と赤の美しい翼を持った小鳥が
巡礼道の真ん中で風に吹 ....
古い日記の頁を{ルビ捲=めく}ると
遠い昨日へ
葬られた{ルビ女=ひと}の名前
( 霞の向こうに立つ、その人影 )
左手首に巻いていた
あの日の腕時計は
いつのまに、{ ....
飛び立つ鳥のかたちの木と
降り立つ鳥のかたちの木とが
風のなかでとなりあい
はばたきと狩りを語りあう
常にどこかにいる冬と
めぐりつづけるものらとの
軋轢の色とかけらが ....
今夜半過ぎ
関東から東海地方にかけて
優しいものが降り積もるでしょう
と、予報士は言った
翌朝
優しいものは降った様子だったけれど
予報どおりに積もってはいなかった
私たちは ....
その海で 泳いだ人
軽やかな 知識人よ
その海を 滑る戦士
重厚なる 軍団長よ
その海に 身を投げ
体が硬直し 潜在意識で
次もこうなるなんて 思わないで
その海も 選択違い
でも魚は ....
半ば くらい世界を 見たよ... と
おもい あがった 少年
トマは 12歳
素もぐりで もぐっては
金の さかなや 銀の 貝を すなどった
伸び あがった ....
シオリちゃんは わたしを見つけるといつも
はじめまして、と言う
わたしも はじめまして、と言う
たくさんいっしょに遊んでも
次の日には わたしのことを覚えていない
でもシオリち ....
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