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お香の煙が立ち昇る
傾き揺れる炎の指さき
すうっとのびて
天をさす
*
{ルビ蝋燭=ろうそく}は
人と似ている
明かりを灯し
身を溶かし
や ....
人込みに紛れ
駅構内の階段を下りていると
背後に
「 だいじょぶですか 」
という声が聞こえ
思わず振り返る
車輪の付いた
買い物かごの取っ手を
細腕で握り
「 ....
なぜあなたは
病の親の世話をして
毎朝歯を喰いしばり
家の門を出て来る部下が
体調崩し仕事を休む
辛いこころが見えぬのだ
わたしは今日も ふんふん と
あなたの腐った愚 ....
テレビをつけると
瓦礫の山から掘り出され
額に血を流した中年の女が
担架から扉を開けた救急車へ
運び込まれていた
その夜
テレビの消えた部屋で
歯を磨き終えたぼくは
....
今日は盆の入りなので
夜家に帰り門を開くと
家族は敷石の一つに迎え火を焚き
両手を合わせ
揺れる炎を囲んでいた
初老の母ちゃんが
「 お爺ちゃんがいらっしゃるわよ 」
と ....
二十一世紀の
ある青年は日々
( 姿の無い誰か )が
自分を呼んでいる気がした
*
二千年前の遠い異国で
ある村の漁師は湖の畔に立っていると
背後を誰かが通りすぎ
....