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それは
空洞と
いう名前の
留保に過ぎないのだと
口に出していた
或る夜
人はすべて
寝静まり
ベッドの上で時間が
ぐんにゃりとする
....
土色に枯れた千の蛾が部屋を覆い尽くす
それに 白粉の殺虫剤を 噴きかける
ぽそぽそと 大小の蛾が 落葉になって
床に重なると 兄さんが 粉で真白の瞼を擦って
真赤な涙を垂らしながら言う
「一 ....
その街は静かになりました
もう、人間しかいませんでしたから
精霊も、神様もいませんでしたから
なのに彼らは恐れていました
もう、人間しかいませんでしたから
精霊も、神様もいませんでしたから
....
海のこどう
陽のゆらめき
浮かんでは帰っていく泡
ゆりかごのリズム
火山のオルガスム
海がめはひとり見知らぬ故郷にもぐる
海のこどう
胎内と殻を結ぶ絆
優しさの渦が孤独を呼びこんで閉じられた世界をつく ....
彼の円錐の
漆黒の並木には
ただならぬ放蕩者の書物が
いっぱい成っている
純粋な今
の主題を的確にもぎとるべき
細密な枝の先にどれも
破壊や破滅の真の送り仮名が
世界の焼かれた鉄板では ....
東から西へ
クリークのような商店街の上を
滑空する
コンビニの角を南に曲って
コソコソとパチンコ屋へ向かう
八百屋の若旦那を左目で見ながら
西から北へ
生易しい北風を切り裂く ....
意 味
人の影が路上に焼きついている
今も猶、夏は
幾百万の鐘をならす
それは
べつの希望の道をひらく
祈りへの
合槌 ....
砂を
体中の空いてる
穴に詰めていく
埋め立てた人工の砂浜の
ほつれたぬいぐるみが
さみしそうに息をしている
「あなたのコドモを産むよ」
と笑い
雨上がりの
草いきれで肺一杯にして
....
なにごともない虚ろな午後
ふと空をよぎる
鳥が
その日の栞になった
行くでもなく帰るでもない
ふたしかな彷徨い
花が
その道の栞になった
こころもとない眠りの果て
闇 ....
テーブルの向こうには
崖しかないので
わたしは落とさないように
食事をとった
下に海があるということは
波の音でわかるけれど
海鳥の鳴き声ひとつしない
暗く寂しい海だった
....
すべての数が
奇数であればいい
あるいは
すべての多角形が
三角形であればいい
それもできれば正三角形で
そんなことを思ってしまう朝はおそらく
何かをあるいは誰かを
探す夢を見てか ....
こどもたちが
口を真っ赤にしながら
園庭であそんでいる
誰かをつかまえ
気に食わなければ噛みつくために
こどもたちは
細い睫毛にひとつずつ
金銀の王冠をつけており
その毛並みは ....
フィチカ、雨の国。
春には雨の花が咲き
夏にはきらめく雨がふる
秋には雨も紅葉し
冬には白い雨がふる
(誰か)が「冷たかろう」と言い
(誰か)が「寂しかろう」と言う
....
わたしの
I love you
には
こころがこもってないよ
だから
コーヒーを
トーストにもしちゃう
りんごのパンが焼きたいとか
イーストフードから金属を抜いて
銀のスプンを接 ....
指は
君の小さな生き物だった
どこか
遠い異国の調べみたいに
時おり
弾むように歌ってた
君が僕の指を食む
君が
少し子供にかえる
遠いね、
とだ ....
簡単な語彙、
まるで水の中の魚みたい
な、こと。
喉に、つかえた繭を探して、
見つけて
瑞々しい言の葉、を
邪な ....
ひと夏のあいだ
あおぎ続けていた団扇
骨だけになって
白いプラスティック
手に馴染んできた
縦じまの持つところ
右手を呼んでいる
いつから皮が剥がれ落ちたのか
水かきの無い手のひら ....
庭に雑踏が茂っていた
耳をそばだてれば
信号機の変わる音や
人の間違える声も聞こえた
ふと夏の朝
熱いものが
僕の体を貫いていった
雑踏は燃え尽きた
かもしれないが
庭 ....
内に外に転がる音の
離れてもなお近しい音の
ふさふさとした
柔毛の音の
遠さは鼻先のまま香り
同じ色の大きさに降り
布をくぐる
まぶしい輪唱
ある日どこかで ....
水底に
動物園はあった
かつての
檻や
岩山を
そのままにして
いくつかの動物の名は
まだ読めたけれど
散り散りの記憶のように
意味を残してなかった
あなたは月に一度の ....
幻想をリアルにするために
リアル以上にリアルを表現すると
それは異常なのかもしれない
恐怖は見れないところにあり
見えるのは醜さだけなのかもしれない
チューシャは少女のようにはしゃいでいた。午後の陽射しが強いスジャータ村の大きな木の陰で、普段はサドゥなんかがルンギーとして愛用するオレンヂの布を大地に広 ....
くろに燻ったぼくのいかりと、きのうのゆめが
ちらかったなつのよる、小さなさんぶんをぬりつぶします。
くれよんとかえんぴつをなめて、蛍のうみをえがこう。
あじさいのはなびらが、 ....
露西亜の冬は寒い 飛んでる鳥も凍って落ちる
プーチンの朝ごはんは 赤いスープ ボルシチ
きっとアメリカ人の血 きっとアメリカ人の血
赤いスープ ボルシチ きっとアメリカ人 ....
ひくく香りは 風の帆を駆け上がり
瞑っているもやの巣の中
はやく運ばないと
息を つのらせてしまうから
どこかに隠れていた
泡の綿帽子が
ささやきを運んでいく
散弾で撃ち抜かれた無数を胸に見るや
目を瞑り落天してくる鳥々のこれ
演じる躯
燦とぶつけて
それが同じ軌跡を描けない
きみは風切りを整えられた渡り鳥
飛べない指が指に重なりまだの空を辿る
....
「アリュール」
{ルビ汚=けが}れならば五月雨川に流せりと誘ふその手は{ルビ梔子=くちなし}に似て
「ブラック」
黒髪に触れし指先奏づるは重なる肌のあつき旋律
....
やりきれない憂鬱に
身体ごと飲み込まれそうなときは
とにかくバナナを食べる
何も考えずに食べる
午後のダイニングテーブルの上に
少し茶色く変色したバナナの皮が
脱ぎ捨てられた下着みたい ....
プロフィール読んだら
すごく嫌いなタイプだけれど
言葉の使い方が上手いんで
ポイントあげます
いままで
まったく
こっちの作品には
ポイントを入れてくれてないけれど
描かれてる情景 ....
暗闇に
散りばめられた
光のかけら
伸ばした
指先に
静かにとまる
蛍のように
繰り返す
永遠の明滅
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