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息が白めば
祖母の指が夕日色の果実を突く
真ん丸い夕日はたちまち裸にされて
柑橘の香りを撒き散らす
白い皿もあるだろうに
漆の椀もあるだろうに
祖母は果実を皮にのせ ....
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春一番がやってきても
私は寒さで震えてる
桜の花が咲いたけど
やっぱり吹雪が吹き荒れる
土筆が顔を出したけど
蕗の薹すら眠ってる
つばめが海を越えたけど
未だ雁が ....
いちたすいちは
にじゃないと答えたら
みんなに笑われた
でも
美術の先生だけは頷いてくれて
スケッチに出かけた
あの丘の上から
故郷の青空をいつまでも眺めていた
ずっと憧れていたこ ....
祈っても祈っても遠ざかる
あなたはいつも朗らかでいたいと
人を怒りもせずに
にこやかに笑う
あたしには人類がはじまってから
あなたはいると思う
ただし過 ....
空と僕らには距離がなかった
窓は開かれていた
白いテーブルの上に
幾千の微細動
まるでナイロンの弦を束ねた
世界のつけ根はたなびき
差し入れる指は風に同調する
触れた先からほろほろと物語 ....
すすきヶ原が風の形に擬態して、
空気は
しゅわしゅわと微かなあぶくを吐いている。
どこかの家から、
ほくほくと夕餉の匂い。
紫紺の空は、
星がまたたく一瞬前の緊張を孕んで、悠々 ....
打ち上げられた
貝の中に
真珠ではなく
小宇宙が
波の形を
ひびかせて
おもしろげに
反芻している
波打ち際に
アメフラシが
空の青を受けても
ちっとも色を変えずに
お ....
ゴミはゴミ箱に捨ててくださいと彼は言う
イメージと詳細にしか興味がない彼は
ある日からゴミ箱の中に住むようになった
今日もゴミ箱の中はイメージと詳細でいっぱい
そのことに彼はとても満足している ....
哀しみの菌をシャーレで培養すると
透明に近い白い薄膜になります
涙の塩分をスポイトで垂らすと
薄膜は完全な透明になりますが
哀しみ自体の本質は変わりません
哀しみは
時に死の毒をも含む ....
大好きな果物の
味でもしたのだろうか
モノレールの銀色の車体に
君の歯型がついてる
先ほどまでは
玄関の無い所
スリッパと同じ格好をして
スリッパを並べていた
今は肩を丸出しにしな ....
夏から秋の前触れは
記憶の鈴が鳴り響き
秋から冬の前触れは
朱い風が吹き抜ける
冬から春の前触れは
氷の命が顔をあげ
春から夏の前触れは
銀色鱗がまぶたを覆う
また一年 ....
反転された文字列から入口を探す
隠された仮想領域のことばを拾いに
ほの白い闇に明滅する極小級数の記号は
ところどころ渦を巻いてわたしを惑わせる
黒色星雲の配置にならい なぞるカーソル ....
兎や、うさぎ
月ウサギ
飛べや、跳ねよと
浮輪雲
散りて
落ちぬは
朱色の夢
白夜の影から
しげしげと
黙々捧げる
紗羅双樹
掲げて
私は献杯か
庭の桜に
青々と
土間で ....
詩を殺すのはいつも詩人で
詩を愛するのはいつも他人で
涙を流すのはいつも美人で
笑顔を殺すのはいつも愚人で
君はいつのまにか大きくなって
僕の目の前を通り過ぎていった
大人になる怖さからナ ....
寝っころがって草の味
息を吸って風の味
目を見開いて空の味
手を伸ばして
雲を摘んで
食らう味
あぁほら観てよ
追い風がしたと思ったら
あいつも来てるぜ
入道雲
....
Ser immortal es baladi;
menos el hombre, todas las criaturas lo son, pues ignoran la muerte;
lo ....
うす闇の中に漕ぎ出す小船で
香りの良い酒を口に含む
舌の奥でひらめく遠い国の人々の夢
長く私を苦しめている怒りが、闇と香になだめられていく
夜はゆったりと流れ出す死にかけた巨大な生 ....
赤いクレヨンを食べたあの娘は
頭から爪の先まで
真っ赤になった
私は彼女の似顔絵を描いていたので
真っ赤になった彼女を
真っ赤に塗らなければならなかった
ちょうど赤色が ....
夜が季節の名前ならば
今夜は惜春
雷雨が迫る黒雲
まだらに明るい空を映して
海が水銀のように揺れる
指先の温度が融点の
あなたという液体
わたしという液体
いつまでも
満たさ ....
冷えた石段に腰かけ
振り返ると
木々の茂みの向こうに
{ルビ巨=おお}きなH型の下を{ルビ潜=くぐ}り
無数の小さい車が行き交う
横浜ベイブリッジ
( H型の四隅
....
わたしたちのうつくしい夏は過ぎ去り
ただ ぎらぎらとした陽炎ばかりが
道すじに燃え残っているけれど
二度とあうことのない確信は
耳元で鳴る音叉のように
気だるい波紋をいくえにも広 ....
街灯に蛾が群れている
明滅する明かり
雲がさあっと横に分かれて
月が顔を出した
誰もいない
蛾がひっそり群れている
角からぽーんと勢いよく
何かが飛び出した
赤いビニー ....
鏡を覗いたら
頭に白い糸がくっついてた
頭だけじゃなくて
手首にも足首にもくっついてた
どうやら上からさがってるみたい
それで上を見てみたら
大きな私がいた
....
人が二人
話す後ろ
椅子に座って
空を塗った
人が二人
話す前で
椅子に座って
空を塗った
すっかり
白くなった顔を
下に向けたら
蝉のように鳴った
なめらかに幼子の
桃に染まった柔肌の
質感と光沢は珊瑚
或いは
とろり新鮮な濁りなき
真に最初の一雫
甘い乳白は象牙
真似て
何れ程焦こがれて
唯身を染めて桃に白に
....
若草色のスカートの金具が
押さえられた背中に擦れて
小さな傷をつくる
心地良く冷たい 磨かれた床は
父だったのに
眠ったふりをして
扉に向けた工作鋏を
両手できつく握り直した
桜色 ....
つかめないから
つかもうとする
するりとぬける
透明くらげ
ゆらめくあいだに
消えてしまう
とどまらないから 不安になるよ
こっけいなふり
無理なく笑う ....
取り違えられた
緑
色の壁
名前を聞かれて
「青」
と答えてしまう
投げた
配水管の中に
あいまいな
猫が
右目がつぶれてしまって
横たわっている
弧を描いたらしい
血が ....
{引用=
? 風
何の拘りの
色調もなく
届けられた
薔薇の蕾
花言葉を探してみるが
ほのかに匂ふのは
五月の風
旅の君の便りからは
いつも金色が
....
確かめるように差し出した
金魚引換券は
手のひらの熱で
もう、よれよれだ
(ううん
(いちばん小さいのがいいの
(だって
(いちばん大きくなるでしょう?
わがま ....
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