誰一人見向きもせず
枯れた井戸のように忘れ去られ
声を上げることすら忘れたのなら
私が静かに側にいよう
背と背を合わせて
手を握り
あなたがここにいるこ ....
途中だった思案を開いてみる
また白紙になっていて
今日という日があるのはそのせいだ
記憶なんて信用できないもので
記録のほうがあてになるかもしれないと
毎日、一頁ずつ
日々を書き留めていて ....
わたしは夜を求める
濃紺の空と赤い星を求める
きみは夜を求める
藍の雲としろい月色を求める
ふたりが求めた夜の中で
風見鶏は廻ってゆく
流れ着く先を知らず
また
愛情、の何かも ....
目が悪い子供が生まれました。
その子供は目が見えないわけではありません。
成長するにつれ目がわるくなるようです。
あまりにもまわりが見えないものだから、
ついには詩など書くよう ....
昼の月をみました
飛行機がすぐそばを飛んでいました
あんまりにもくっきり見えておもちゃのようでした
街では秋が暮れていました
お月見をしたことはありますか
私は幼稚園のときに
兄とすす ....
さよならさよなら
聞いて、聞いて
まだ笑ってるね
まだ泣いてはだめ
だめだよ、えがおで
いっしょに おどって
忘れるまでくやしいなら叩け
わたしは大丈夫だから
腕も足も折っていい ....
伝えるためには
伝えるための
言葉が必要で
それにぼくたちは
とても不器用で
ちいさな雲を
いちまい、いちまい、風が縫って
空に真っ白な衣を着せている
あそこへ往くの?
問いかけても
もう動かない唇は冷たく
ひかれた紅の赤さだけが
今のあなたとわたしの今を
....
鳩を眺めていました
高さもまちまちの
ビル達が
空と雲を
メルカトル図法で切り取る
街の公園で
鳩を眺めていました
臙脂色の
....
ここに来させていただいて、
1年が過ぎました。
多くの方々の詩を読ませていただけたこと、
そして、多くの方々に私などの詩を読んでいただけたこと、
こころより感謝しています。
....
花を抱いて
あのひとに
会いに行こう
哀しみも
噴りも
喜びも
なにもかも
ぜんぶ
あのひとに
手渡そう
七色の夢を
虹色の想いを
少し震えながら
だから ....
自分から目を離すことができない
離した瞬間
時間が粉砕されバラバラの破片となり
その今という破片がなんの脈絡もなく断続的に出現するのです
破片を渡し石として今を飛び越えていく時
その下に ....
野ばらが咲いてる歌の中に
彼の命が咲いています
楽譜が詠まれ盤に刻まれ
蓄積された音の種は
心象の故郷に開花します
花の種子は光子になり
銀の花壇で輪を重ねる
幼子が周りを回 ....
まだ幼かったころ、危ないところへ行ったら駄目と怒られた。
あの丘も、あの川も。
分別もついたころ、僕は丘へも川へも行った。
こっそりと。
母さんは、 もう 気にしないから好きにしなさい ....
ほんとうの事が知りたいけど
正しいかどうかはどうでもいい
つまり、とりあえずは磁北を信じて
夜どおし動かない星を探し出す
北極星、と呼ぶのは僕たちだけで
イトスギ達にはきっと別の呼び名がある ....
僕らは秩序の形而上に生を受け
混沌の形而下にその雫を埋めていく
ねぇ
いったい
何度生まれ変わったら
猫にしてくれるの
日だまりの神様
おしえて
財布とケータイ ....
柔らかく重なる
雲の色彩は
思う
あなたの
帆走する
今を、未来を
かすかに拓かれる
澄んだみずいろは
呼吸
わたしの
アクアリウム
泡よ、せつなよ
いつのまにか、ふた ....
図書館の本は
公務員みたいに黙って
読まれる、という役目を
少し怠そうに待っている
田舎の図書館は
どうも品揃えが悪くて
本にも覇気が無い
手に取ってみても
抵抗はしないけれど ....
?.
星を
呼べるんだね
あのロバ
ほら
また流れたよ
願い事三回は
いじわるだね
静かにしていよう
叶わないよ なにも
どうせこれ以上
たどり着こうとして
....
?.
眠っているとき
おまえは
ほんとうだから
なあ
なんで
眠っているときだけ
おまえは
本当なのかな
?.
....
小学生くらいの
子供の
こころが透けてみえたら
大人はいうだろう、
ばかだな、
そんなどうでもよいことで、なにを、悩んでいるんだ、と。
ふりかかるひとつひとつを
わざわざ両手をひろげ ....
実りの乏しい果実は
熟しを迎える前に摘まれ
肌の感覚を忘れていく
湖面に映る白雲を
理想で描いては
草原と遊ぶ風に
木々と語り合う鳥に
旅の情緒を詠わせた
そんな他愛もない無邪気さは
手から土へ ....
・
初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
....
例えばAという人物がいて、
他人である誰かがAに対して抱くイメージは、
果たして実像に等しいだろうか。
人間は、往々にして自分の望むとおりに
他人を歪めて見つめている。
あらゆる事物の、その ....
父の古くからの友人Kさんが亡くなった
現場仕事で足を滑らせて
屋根から落ちてしまったのだという
一人で作業をしていたので発見が遅れたのだとか
うちからは遠く離れた岡山県の端の方での出来事
....
街燈の光から
裸にされた
月世界のモノローグ
夜の哀しみの
ねぐらを見据え
月光に混じりあう
葬列を往けば
緩和されゆく
視界のほつれ
伏した肩肱は
硝子の時計を踏 ....
変わっていく
そこにあったはずのものがなくて
なかったはずのものがあって
そんな世界に 眩暈を覚える
日に照らされた静かな森
街の外れにぽつんと一軒だけあった喫茶店
....
私は元来
無口な男でありまして
うっかり、思慮深く思われがちですが
それは、本心を秘めている
というより、むしろ
現すタイミングを計れない
どうにも不器用な人間なのです
何か言わ ....
アルルの丘でゴッホとゴーギャンが相撲を取り
圧勝したゴーギャンが呵々大笑する
電車を待つ間、そんな詩を手帖に書いていた老詩人は
だんだんとゴッホが可哀想になってきたので
それまで書いてきた十四 ....
読みかけの本に栞を挟んで
見上げた夜空に満点の星
光を忘れた時代の末路に
神が残した最後の希望
いつの時代も迷える人々は
暗闇に飲み込まれそうな時は
月明かりの導きを頼りに ....
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